婚約破棄は此方から

mios

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言った側

公爵令嬢マリアベルは、待っていた馬車に乗り込むと、笑顔を浮かべた。

「お疲れ様。ちゃんと捨てられたか?」

ルキウスはマリアベルを抱きしめると、額にキスをする。大きな身体のルキウスが馬車に乗るとそれだけで中は満杯になってしまう。本当ははしたないけれど、ルキウスの膝の上にしかマリアベルが座る場所はない。

「綺麗さっぱりよ。私が捨てたゴミは一体誰が拾うのかしらね。」

ゴミが、元婚約者であることは暗黙の了解で、不敬になるからわざわざ名前を出す訳にいかないのだけれど。

マリアベルは元婚約者が、自分に婚約破棄を言い出す前に何とか一矢報いることができたと胸を撫で下ろした。婚約を円満に破棄するためには、王家に取って、価値があると思われる相手との縁組でなければならず、マリアベルは随分と骨を折った。あの男爵令嬢とは違いマリアベルにはあの婚約者以外にも釣り合う者はいる。国内ではアントニオが一番適任というだけで、国外にはいくらでもマリアベルが嫁げる相手はいるのである。

男爵令嬢もアントニオも随分と狭い世界で生きている。男爵令嬢はそれでも仕方ないけれど、アントニオは違う。何れ王になろうとするならば国内だけでなく国外に目を向けないことは致命的な欠陥になるだろう。

シャンテ皇国は大国で、これまでならば全く縁のなかった国。だったにも関わらず、我が国に第三皇子が留学してくることになったのだ。これは売り込むチャンスだとばかり。互いに分かり合える会話は楽しく、中断せずに話すことができて、無関係で頭の痛い横槍すら入らない。話していて楽しいと思える相手に、好意を持つのは当然だった。

ルキウスはマリアベルよりも先に陛下に話をつけた。陛下は大国と縁続きになることに喜び、あっさりと婚約破棄を了承した。


男爵令嬢を愛するあまり馬鹿になった殿下が仕掛けてくるなら卒業式だと思ったから、その申し出は本当に有り難かった。

婚約破棄を言い渡すには良いが、言われるのはあのプライドの高い殿下が許すかどうか。彼が何と言おうがもう決まったことなのだが、揉めるのも面倒だと、有無を言わさない為に集めた証拠を渡すとわかりやすく顔を青ざめさせた。慰謝料とはいいながら念を押す。

婚約破棄は此方から。だけど、私に落ち度はない。あるとしたら何の役にも立たなくなった愚かな第一王子だけ。

元婚約者の鳩が豆鉄砲をくらったような顔を思い出して嘲笑う。男爵家に婿入り?宜しいのではないかしら。

他に役にも立ちそうにないのだし。真実の愛、素晴らしいことですわ。

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