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書店員 武田虎太郎
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「トリックアートが設置されてから変わったこと? ないない、そんなの」
え、そうなんですか?
「いや、だってそらそうだろう。そもそもうちの近くには設置されてないんだよ。トリックアートがすぐ近くに設置されたテナントは多少影響があるだろうけど、トリックアートを見て本屋に行きたくなる人もいないしね」
設置される前と後じゃ何も変わりませんか?
「だから何も変わらないよ。トリックアート関連の芸術ジャンルの本の売れ行きも微動だにしてないしね。本当に何もないよ」
そうですか……でもたしかに、近くにないと影響力はないかもしれませんね。
「だろう? まあ、強いて言うならデメリットかな。関係者専用通路の出入り口付近にもトリックアートが設置されてるからさ、たまにそこに人だかりができて通りにくいんだよね」
じゃあ書店としてはマイナス要素しかないと?
「そうだね。まあ、そこまで邪魔でもないから、影響はほぼないってことでいいかな」
なるほど、そうなんですね。ところで、トリックアートは全部見られましたか?
「全部? そりゃ見たよ。ちょっとは気になったからね。あんまり興味はなかったけど、正面エントランスにあんなにでかでかと設置されたらやっぱり目はいくし、うちのスタッフや周りのテナントの人たちも話題にしてからさ」
トリックアート、見られてどうでしたか?
「いや、すごいと思うよ。エントランスのは大きい分それだけ迫力があるしさ。かなりお金がかかってるなーって」
お金ですか?
「そりゃかなり使ってるんじゃない? だってショッピングモールのメインエントランス、それからテナントの前や通路、それから壁紙にたくさん設置してるんだから。しかもどこかで見たことがあるような見飽きたデザインじゃなくて、通った人の目を引くようなデザイン。割とお金がかかってると思うよ」
なるほど、その視点はありませんでした。でも、言われてみればそうですね。かなり凝った作品が多いですもんね。
「そうなんだよ。なかなか落ちた財布やパスケースみたいな作品は描かないと思うんだよね。だから館の広報がさ、かなり話題作りに力を入れてるんだなあと思ったわけよ」
話題作りですか?
「まあ、もともといわくのあるエリアだからさ、集客に必死なんじゃないの?」
いわくですか? ショッピングモールがあるこの場所がですか?
「え、知らないの? 僕も別に詳しいわけじゃないけど、この辺りは色々あるって有名だけど」
あの、もしよかったら知っている範囲でいいのでいわくについて教えていただけませんか?
「いいけど、僕も人から聞いた話だから眉唾物だけどいいの?」
それで大丈夫ですよ。もちろん、聞いた内容を勝手に真実だって言いふらすようなこともしませんので安心してください。
「そう、ならよかった。僕が聞いたのは、この辺りって昔は今よりもかなり治安が悪くて、交通事故や事件が多かったみたいなんだよね。しかも、この場所って心霊スポットとしても有名で、そんな場所にショッピングモールを建てるなって反対もあったみたいなんだよね」
地元人からの反対ですか。じゃあ反対を押し切ってこのショッピングモールは建てられたんですね。
「どうだろう? このショッピングモールができる前もここに商業施設はあったみたいだから、反対を押し切ったのは前の時かな? 僕が知っているのはこれだけ」
そうなんですね。まったく知りませんでした。教えてくださりありがとうございます。
「いいよいいよ。そうだ、よかったらうちのスタッフでもっと詳しそうなやつを連れてこようか? 探せば知ってるやつがいる気がするけど」
いえいえ、大丈夫です。ちょっと自分でも調べてみます。お気遣いくださりありがとうございます。
「そう? ならいいけど。そうだ、話は変わるんだけどさ、このショッピングモール、迷子が多いと思わない?」
迷子ですか?
「そう、だってほら今も……」
『……という、三歳のぐらいの女の子をお母様が探しています。服装の特徴は青いワンピースに……』
迷子のアナウンスですね。
「そう、それがこのモールは多い気がするんだよね」
迷子の多い少ないはちょっと私にはわからないのでなんとも言えないんですが、ここは多いんですか?
「なんて言うかさ、迷子はどこでもある話だから、まあ仕方のないことなんだけど、でも、ここは他のモールと比べると多い気がするんだよね。ここでしか働いたことがない人ならこれが普通だと思うかもしれないけど、おれ、ここに来る前は他の店舗の担当だったからさ。あ、ほらまた……」
『迷子のご案内をさせていただきます。さとうだいきくんという、四歳ぐらいの……』
さっきと違う子のアナウンスでしたね。
「流石にこんなに間隔を開けずに迷子のアナウンスが続くことは滅多にないけどさ、なんだかここは多い気がするんだよね。まあ、最近は少し減ったけど、一時期は明らかに多かったね」
今も多いけど、一時期はもっと多かったということですか?
「そうそう、そうなんだよ。流石にその時はここでしか働いたことがない人たちも不思議がってたけどね」
それはなんだか不気味ですね。
「だろう? やっぱり何かあるのかもしれないな、このショッピングモールは」
お話を聞いていると私もそんな気がしてきました。因みになんですが、迷子が減ったのは何か対策がなされたからなんですかね?
「いや、そんな話は聞いたことないよ。特に何もしてないと思うね。だって減ったとはいえ一時期よりも減っただけだし、今も迷子は多いからね」
じゃあ、突然迷子の人数が増えて、しばらくして減ったってことでしょうか?
「そう、そんな気がするんだ」
なるほど。あの、迷子が減る前後で何か変わったことはありませんでしたか?
「変わったこと? 変わったことねえ……あ、変なことではないけど、このショッピングモール内に新たに設置されたものがあるよ」
設置……もしかしてそれって……
「そう、トリックアート。あれができてから迷子の人数が減った気がする。確証はないけどね」
え、そうなんですか?
「いや、だってそらそうだろう。そもそもうちの近くには設置されてないんだよ。トリックアートがすぐ近くに設置されたテナントは多少影響があるだろうけど、トリックアートを見て本屋に行きたくなる人もいないしね」
設置される前と後じゃ何も変わりませんか?
「だから何も変わらないよ。トリックアート関連の芸術ジャンルの本の売れ行きも微動だにしてないしね。本当に何もないよ」
そうですか……でもたしかに、近くにないと影響力はないかもしれませんね。
「だろう? まあ、強いて言うならデメリットかな。関係者専用通路の出入り口付近にもトリックアートが設置されてるからさ、たまにそこに人だかりができて通りにくいんだよね」
じゃあ書店としてはマイナス要素しかないと?
「そうだね。まあ、そこまで邪魔でもないから、影響はほぼないってことでいいかな」
なるほど、そうなんですね。ところで、トリックアートは全部見られましたか?
「全部? そりゃ見たよ。ちょっとは気になったからね。あんまり興味はなかったけど、正面エントランスにあんなにでかでかと設置されたらやっぱり目はいくし、うちのスタッフや周りのテナントの人たちも話題にしてからさ」
トリックアート、見られてどうでしたか?
「いや、すごいと思うよ。エントランスのは大きい分それだけ迫力があるしさ。かなりお金がかかってるなーって」
お金ですか?
「そりゃかなり使ってるんじゃない? だってショッピングモールのメインエントランス、それからテナントの前や通路、それから壁紙にたくさん設置してるんだから。しかもどこかで見たことがあるような見飽きたデザインじゃなくて、通った人の目を引くようなデザイン。割とお金がかかってると思うよ」
なるほど、その視点はありませんでした。でも、言われてみればそうですね。かなり凝った作品が多いですもんね。
「そうなんだよ。なかなか落ちた財布やパスケースみたいな作品は描かないと思うんだよね。だから館の広報がさ、かなり話題作りに力を入れてるんだなあと思ったわけよ」
話題作りですか?
「まあ、もともといわくのあるエリアだからさ、集客に必死なんじゃないの?」
いわくですか? ショッピングモールがあるこの場所がですか?
「え、知らないの? 僕も別に詳しいわけじゃないけど、この辺りは色々あるって有名だけど」
あの、もしよかったら知っている範囲でいいのでいわくについて教えていただけませんか?
「いいけど、僕も人から聞いた話だから眉唾物だけどいいの?」
それで大丈夫ですよ。もちろん、聞いた内容を勝手に真実だって言いふらすようなこともしませんので安心してください。
「そう、ならよかった。僕が聞いたのは、この辺りって昔は今よりもかなり治安が悪くて、交通事故や事件が多かったみたいなんだよね。しかも、この場所って心霊スポットとしても有名で、そんな場所にショッピングモールを建てるなって反対もあったみたいなんだよね」
地元人からの反対ですか。じゃあ反対を押し切ってこのショッピングモールは建てられたんですね。
「どうだろう? このショッピングモールができる前もここに商業施設はあったみたいだから、反対を押し切ったのは前の時かな? 僕が知っているのはこれだけ」
そうなんですね。まったく知りませんでした。教えてくださりありがとうございます。
「いいよいいよ。そうだ、よかったらうちのスタッフでもっと詳しそうなやつを連れてこようか? 探せば知ってるやつがいる気がするけど」
いえいえ、大丈夫です。ちょっと自分でも調べてみます。お気遣いくださりありがとうございます。
「そう? ならいいけど。そうだ、話は変わるんだけどさ、このショッピングモール、迷子が多いと思わない?」
迷子ですか?
「そう、だってほら今も……」
『……という、三歳のぐらいの女の子をお母様が探しています。服装の特徴は青いワンピースに……』
迷子のアナウンスですね。
「そう、それがこのモールは多い気がするんだよね」
迷子の多い少ないはちょっと私にはわからないのでなんとも言えないんですが、ここは多いんですか?
「なんて言うかさ、迷子はどこでもある話だから、まあ仕方のないことなんだけど、でも、ここは他のモールと比べると多い気がするんだよね。ここでしか働いたことがない人ならこれが普通だと思うかもしれないけど、おれ、ここに来る前は他の店舗の担当だったからさ。あ、ほらまた……」
『迷子のご案内をさせていただきます。さとうだいきくんという、四歳ぐらいの……』
さっきと違う子のアナウンスでしたね。
「流石にこんなに間隔を開けずに迷子のアナウンスが続くことは滅多にないけどさ、なんだかここは多い気がするんだよね。まあ、最近は少し減ったけど、一時期は明らかに多かったね」
今も多いけど、一時期はもっと多かったということですか?
「そうそう、そうなんだよ。流石にその時はここでしか働いたことがない人たちも不思議がってたけどね」
それはなんだか不気味ですね。
「だろう? やっぱり何かあるのかもしれないな、このショッピングモールは」
お話を聞いていると私もそんな気がしてきました。因みになんですが、迷子が減ったのは何か対策がなされたからなんですかね?
「いや、そんな話は聞いたことないよ。特に何もしてないと思うね。だって減ったとはいえ一時期よりも減っただけだし、今も迷子は多いからね」
じゃあ、突然迷子の人数が増えて、しばらくして減ったってことでしょうか?
「そう、そんな気がするんだ」
なるほど。あの、迷子が減る前後で何か変わったことはありませんでしたか?
「変わったこと? 変わったことねえ……あ、変なことではないけど、このショッピングモール内に新たに設置されたものがあるよ」
設置……もしかしてそれって……
「そう、トリックアート。あれができてから迷子の人数が減った気がする。確証はないけどね」
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