文字の大きさ
大
中
小
27 / 78
第二章 襲い掛かる魔の手
第二十七話 悩み
七月のある日。
昼休みの時間体に、構内掲示板の前で喜びの雄叫びが上がった。
「よっしゃあ! 関門突破!!」
茉莉は左右の腕を曲げて自分の身に引き寄せ、ガッツポーズを決めている。
構内の壁にある緑の掲示板に真っ白な紙が貼り出されていた。
それは期末試験の再試験決定者の通知だった。
各学年の該当した生徒全員分の名前が記載されている。
そこに茉莉の名前がなかった。
最初は信じられなくて何度も見返したのだが、それが真実だと分かり、上機嫌で小躍りしているのである。
「茉莉にしてはやったじゃ~ん! 明日大嵐になるかもね!」
「何よう。私だって頑張ったんだから!」
親友のさり気ない嫌味に茉莉は頬を膨らませてむくれた。
勉強の苦手な茉莉は今までずっと再試験の常連だったのだ。親友から揶揄られても仕方のない話である。
「はいはい。まああんたの場合は時間外講師の先生が良かったんでしょ?」
「……」
優美の例えを耳にした途端、タンザナイトブルーの瞳が脳裏をよぎった。
しかし、瞬時にそれが燃える薔薇色の瞳へとすり替わる。
――君は、自分自身が彼の“目的そのもの”である可能性を考えたことはあるか? ――
――君を守るように見せかけて、その実、君を誰にも渡す気はない――
自らを“死神”と名乗った男の言葉が脳裏に木魂する。
それは不協和音となって、茉莉の心にさざ波をたててゆく。
蒸し暑い季節の筈なのに、寒い風に首筋を舐められたような気がして、彼女は一瞬身をぴくりと震わせた。
ルフスの人格は静藍の肉体に宿っているだけだ。
自分に直接関わっている肉体は静藍ので、ルフスの肉体ではない。
静藍がそんなことをしているわけではない。
仮にしているとしても、それは彼ではなく、きっと吸血鬼の彼の方だと。
静藍は“器”として利用されているだけ。
彼に非があるわけではない筈。
ない筈……なのに……。
頭では分かっている筈なのに……。
何故か自信を持ってそう思えないのだ。
(何故……? )
上手く言葉に出来ないどす黒いもやもやとしたものが、茉莉の胸中を支配していた。
ふと気が付くと目の前に、親友の顔があった。
彼女は眉を顰めている。
「……ねぇ。一体どうしたの? 最近のあんた、ちょっと変だよ。静藍君と妙に距離置いてそうだし。二人の間で何かあったの?」
言われてみれば、七月に入って以来静藍と全く連絡をとっていなかったことに初めて気が付いた。
期末試験期間中であることを言い訳にしてLINE一つしてなかったのだ。
静藍は自分から連絡をすることが殆どない為、茉莉から連絡をしない限りぷっつりと途絶えてしまう。
夢で聞いたことを真に受けていると言われればそれまでなのだが。
「実はね……」
茉莉は期末試験前に見た夢の内容を手短に話すと、親友はくりっと丸い瞳を更に大きく見開いた。
「え~~っっ!? 何それ!? つまりあんたイケメンに迫られたってこと!? しかも壁ドン付き!! あんたいつの間にモテ期に入ったのよ!?」
ずれた反応に茉莉は大いにずっこける。
右手で重たい頭を支えた。
「……ごめん。私話す相手間違えたっぽい……」
「ごめんごめん! 何か最近のあんた妙に元気ないから笑わせようと思っただけ。悪気はないから……」
優美は暗い顔をした親友の肩を勢いよくバンバンと叩く。
「確かに五月のあの事件以来起き続けていることと静藍君、偶然にしては出来過ぎだと思うよ。共通点もありそうだし。でもあんた考えすぎだよ。疑っては静藍君が可愛そう」
(……そうだよね。)
「彼が言うにはルフスと意識の共有まではしてないと言ってた筈。仮にあんたを狙って近付いたと言っても、それはルフスのことだけなんじゃないの?」
「……あんたもやっぱりそう思う?」
茉莉の表情に、影が指している。
どこかすっきりしないとでも言いそうな顔だ。
「そりゃあねぇ。あたしじゃなくても、みんな同じ意見だと思うよ。死神サンから言われた言葉そのまんまの意味だって」
廊下を行き交う生徒達のざわつきがある筈だが、意外と静かに感じる。
まだ昼休みだからもう少し賑やかな筈なのに、不思議だ。
「ただ……」
優美が茉莉と向き直る。
「あたしはあんたのことが一番心配だな。白木先輩の一件があって以来、ずっと吸血鬼があんたの周りに常にまとわりついているような、そんな気がする。一度死にかけてるし。ちょっとノイローゼ入ってるんじゃない?」
すると茉莉の頬を、優美の人差し指がつんつんつついてきた。
それは大福のように指をぷにぷにと押し返す。
「ところで話変わるけど、前に比べてあんたどんどん綺麗になってきている気がするんだ。肌艶が良くなってきているというか。やっぱり恋する女子は魅力が上がるというヤツ?」
「……え……!?」
突然の話題変更に茉莉は頬を薔薇の花のように赤らめた。
そんな彼女の両肩を優美はガシッと両手で支えた。
「色々悩むのも分かるけど、静藍君を信じてあげなきゃ駄目だよ。 どうしても気になるなら本人に聞けば良いし」
両肩に心地良い温もりと重みを感じていると、クラスメイトが声を掛けてきた。
「あ、いたいた! 二人共教室に急いで。もう一時四十分になるよ!」
「え、マジ? もうそんな時間か。分かった。今行く。ありがとう!」
親切なクラスメイトに明るい返事を返した優美は、茉莉の手をぐいと引いた。身体がつい前方によろけそうになるのを何とかこらえる。
「茉莉、帰りに寄り道しよ! お初の再試ナシ祝い!! まずはそれから。 勿論あたしのおごりだよ」
そう言えば、来週末は終業式である。
一学期も終わりだ。
時が過ぎるのは何て早いのだろう。
河西神社に新聞部部員全員で向かう日にちが近付いて来ている。
と言うことは、八月が近い証拠だ。
八月。
静藍の誕生日は八月二十日。
運命の日。
静藍が静藍として生きていけるのか。
それとも、
ルフスとして生き続かねばならなくなるのか。
つまり、その日までにどちらかが必ず「死ぬ」。
静藍とルフス
どちらかには二度と会うことがなくなるのだ。
刻々と近付く期限に、心臓は早鐘を打つばかり。
胸が締め付けられる。
息が出来ない位。
(私やっぱり変だよ。せっかく再試験ゼロだし、優美が気を遣ってくれてるのにあまり嬉しくない。何だか頭がおかしくなりそうだよ……)
二人の少女が手を繋いで教室へ急ぐ中、五時限目開始五分前の予鈴が構内に鳴り響いた。
昼休みの時間体に、構内掲示板の前で喜びの雄叫びが上がった。
「よっしゃあ! 関門突破!!」
茉莉は左右の腕を曲げて自分の身に引き寄せ、ガッツポーズを決めている。
構内の壁にある緑の掲示板に真っ白な紙が貼り出されていた。
それは期末試験の再試験決定者の通知だった。
各学年の該当した生徒全員分の名前が記載されている。
そこに茉莉の名前がなかった。
最初は信じられなくて何度も見返したのだが、それが真実だと分かり、上機嫌で小躍りしているのである。
「茉莉にしてはやったじゃ~ん! 明日大嵐になるかもね!」
「何よう。私だって頑張ったんだから!」
親友のさり気ない嫌味に茉莉は頬を膨らませてむくれた。
勉強の苦手な茉莉は今までずっと再試験の常連だったのだ。親友から揶揄られても仕方のない話である。
「はいはい。まああんたの場合は時間外講師の先生が良かったんでしょ?」
「……」
優美の例えを耳にした途端、タンザナイトブルーの瞳が脳裏をよぎった。
しかし、瞬時にそれが燃える薔薇色の瞳へとすり替わる。
――君は、自分自身が彼の“目的そのもの”である可能性を考えたことはあるか? ――
――君を守るように見せかけて、その実、君を誰にも渡す気はない――
自らを“死神”と名乗った男の言葉が脳裏に木魂する。
それは不協和音となって、茉莉の心にさざ波をたててゆく。
蒸し暑い季節の筈なのに、寒い風に首筋を舐められたような気がして、彼女は一瞬身をぴくりと震わせた。
ルフスの人格は静藍の肉体に宿っているだけだ。
自分に直接関わっている肉体は静藍ので、ルフスの肉体ではない。
静藍がそんなことをしているわけではない。
仮にしているとしても、それは彼ではなく、きっと吸血鬼の彼の方だと。
静藍は“器”として利用されているだけ。
彼に非があるわけではない筈。
ない筈……なのに……。
頭では分かっている筈なのに……。
何故か自信を持ってそう思えないのだ。
(何故……? )
上手く言葉に出来ないどす黒いもやもやとしたものが、茉莉の胸中を支配していた。
ふと気が付くと目の前に、親友の顔があった。
彼女は眉を顰めている。
「……ねぇ。一体どうしたの? 最近のあんた、ちょっと変だよ。静藍君と妙に距離置いてそうだし。二人の間で何かあったの?」
言われてみれば、七月に入って以来静藍と全く連絡をとっていなかったことに初めて気が付いた。
期末試験期間中であることを言い訳にしてLINE一つしてなかったのだ。
静藍は自分から連絡をすることが殆どない為、茉莉から連絡をしない限りぷっつりと途絶えてしまう。
夢で聞いたことを真に受けていると言われればそれまでなのだが。
「実はね……」
茉莉は期末試験前に見た夢の内容を手短に話すと、親友はくりっと丸い瞳を更に大きく見開いた。
「え~~っっ!? 何それ!? つまりあんたイケメンに迫られたってこと!? しかも壁ドン付き!! あんたいつの間にモテ期に入ったのよ!?」
ずれた反応に茉莉は大いにずっこける。
右手で重たい頭を支えた。
「……ごめん。私話す相手間違えたっぽい……」
「ごめんごめん! 何か最近のあんた妙に元気ないから笑わせようと思っただけ。悪気はないから……」
優美は暗い顔をした親友の肩を勢いよくバンバンと叩く。
「確かに五月のあの事件以来起き続けていることと静藍君、偶然にしては出来過ぎだと思うよ。共通点もありそうだし。でもあんた考えすぎだよ。疑っては静藍君が可愛そう」
(……そうだよね。)
「彼が言うにはルフスと意識の共有まではしてないと言ってた筈。仮にあんたを狙って近付いたと言っても、それはルフスのことだけなんじゃないの?」
「……あんたもやっぱりそう思う?」
茉莉の表情に、影が指している。
どこかすっきりしないとでも言いそうな顔だ。
「そりゃあねぇ。あたしじゃなくても、みんな同じ意見だと思うよ。死神サンから言われた言葉そのまんまの意味だって」
廊下を行き交う生徒達のざわつきがある筈だが、意外と静かに感じる。
まだ昼休みだからもう少し賑やかな筈なのに、不思議だ。
「ただ……」
優美が茉莉と向き直る。
「あたしはあんたのことが一番心配だな。白木先輩の一件があって以来、ずっと吸血鬼があんたの周りに常にまとわりついているような、そんな気がする。一度死にかけてるし。ちょっとノイローゼ入ってるんじゃない?」
すると茉莉の頬を、優美の人差し指がつんつんつついてきた。
それは大福のように指をぷにぷにと押し返す。
「ところで話変わるけど、前に比べてあんたどんどん綺麗になってきている気がするんだ。肌艶が良くなってきているというか。やっぱり恋する女子は魅力が上がるというヤツ?」
「……え……!?」
突然の話題変更に茉莉は頬を薔薇の花のように赤らめた。
そんな彼女の両肩を優美はガシッと両手で支えた。
「色々悩むのも分かるけど、静藍君を信じてあげなきゃ駄目だよ。 どうしても気になるなら本人に聞けば良いし」
両肩に心地良い温もりと重みを感じていると、クラスメイトが声を掛けてきた。
「あ、いたいた! 二人共教室に急いで。もう一時四十分になるよ!」
「え、マジ? もうそんな時間か。分かった。今行く。ありがとう!」
親切なクラスメイトに明るい返事を返した優美は、茉莉の手をぐいと引いた。身体がつい前方によろけそうになるのを何とかこらえる。
「茉莉、帰りに寄り道しよ! お初の再試ナシ祝い!! まずはそれから。 勿論あたしのおごりだよ」
そう言えば、来週末は終業式である。
一学期も終わりだ。
時が過ぎるのは何て早いのだろう。
河西神社に新聞部部員全員で向かう日にちが近付いて来ている。
と言うことは、八月が近い証拠だ。
八月。
静藍の誕生日は八月二十日。
運命の日。
静藍が静藍として生きていけるのか。
それとも、
ルフスとして生き続かねばならなくなるのか。
つまり、その日までにどちらかが必ず「死ぬ」。
静藍とルフス
どちらかには二度と会うことがなくなるのだ。
刻々と近付く期限に、心臓は早鐘を打つばかり。
胸が締め付けられる。
息が出来ない位。
(私やっぱり変だよ。せっかく再試験ゼロだし、優美が気を遣ってくれてるのにあまり嬉しくない。何だか頭がおかしくなりそうだよ……)
二人の少女が手を繋いで教室へ急ぐ中、五時限目開始五分前の予鈴が構内に鳴り響いた。
感想 2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisanバーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ジョブホッパーの魔導譚 〜幾多の職を越えて紡ぐ英雄譚~
フェアリーP過労死した元建設会社社員が異世界に転生。
手に入れた固有スキルは【ジョブホッパー】。
職業を変更するたびに新たな技術を習得できるチート能力だった。
鍛冶師になれば武器を作り、 薬師になればポーションを作り、 魔導技師になれば魔導具を開発する。
気付けば学園でも規格外。
魔狼の群れを吹き飛ばし、 存在しない魔導具を生み出し、 仲間たちを助けながら成長していく。
だが本人の夢はただ一つ。
「せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅してみたい」
これは転職を繰り返した男が、あらゆる職業を極めながら異世界を駆け上がる成長ファンタジー。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP高校二年生の高木華音(たかぎかのん)は、夏休み前のホームルーム中にクラスごと異世界へ召喚される。
神から与えられた使命は魔王討伐。
しかし帝国で行われた適性検査の結果、華音だけが存在しないはずのEランク判定を受けてしまう。
さらに召喚時に身体を女性へ作り替えられていたことでクラスメイト達から偽物扱いされ、危険地帯《死の森》へ追放されてしまった。
そこで待っていたのは絶対的な死。
――だが、死んだはずの華音は再び召喚前の時間へ戻っていた。
発動した固有スキルは、神すら紛失した超規格外のEXランクスキル【無限増殖】。
その能力は《残機無限》。
何度死んでもやり直せるという、常識外れの死に戻り能力だった。
さらに死ぬたびに知識とスキルは蓄積されていく。
鑑定。
魔術眼。
テイム。
神のミスによって本来なら他の勇者へ与えられるはずだった能力までも獲得していく華音。
一方、彼を偽物として切り捨てた帝国は知らない。
自分達が追放した存在こそ、世界最強の勇者候補だったことを――。
無限の命と無限の試行錯誤で最強へ至る、追放×死に戻り×成り上がりファンタジー開幕!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
冤罪追放された料理人、辺境孤児院で外れスキル【まかない】が神スキルだとバレる
やまご王宮料理人レオン・ハルバートは、二十年もの間、王族や貴族たちの食卓を支えてきた平民上がりの料理人だった。
だがある日、王太子への毒物混入という冤罪を着せられ、王都から永久追放されてしまう。
追放先は、辺境の村にある潰れかけの孤児院。
屋根は壊れ、食料は尽き、残されていたのは腹を空かせた子どもたちだけだった。
レオンに与えられたスキルは、外れ扱いされてきた【まかない】。
戦えない。
魔法も使えない。
できるのは、飯を作ることだけ。
しかし、あり合わせの麦と豆で作った一杯の粥が、子どもたちの傷を癒やし、眠っていた才能を目覚めさせる。
腹ぺこの聖女。
臆病な獣人っ娘。
呪われた元貴族令嬢。
魔力を失った天才少年。
レオンの料理を食べた孤児たちは、次々と本来の力を取り戻していく。
一方、レオンを追放した王都では、彼の料理によって保たれていた王族や騎士たちの体調が崩れ始め、貴族たちの陰謀も少しずつ綻びていく。
これは、冤罪で全てを失ったおっさん料理人が、辺境の孤児院で腹ぺこの子どもたちを養いながら、知らないうちに国を揺るがす奇跡を起こしていく物語。
追放された料理人の、あったかくて少しざまぁな辺境まかないファンタジー。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。