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第三章 過ぎ去りし思い出(過去編)

第三十二話 探す者

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 私はずっと探し求め続けていた。
 今までずっと何万も何百万もの人間を捕らえ、お前の新たな「器」となれる肉体を求めていた。
 だがそれらはいずれもすぐに朽ち果ててしまい、私の期待に応えられるものはほぼ皆無だった。
 
 私はお前を永遠に喪ってしまうのか。
 二度と会える日は来ないのか。
 私はまだ生き続けているというのに。
 いつ終わるとも知れない長い長いこの生を。
 
 何百年何十年もの間、ずっと絶望と向き合い続ける日々。
 諦念に支配されそうになったその時、漸く希望の光が満ちてきた。
 やっと見つけ出した「器」。
 それは生前のお前と面差しは随分と異なるが、目鼻立ちが整った大層美しい少年だった。
 夕暮れ時の空を映し出したような青紫色に輝く瞳。
その奥深くに見た紅玉を秘めた輝き。
 得も言われぬ美しさ。
 その「器」は思った通り、“種”の馴染みも良かった。
 お前の完全復活の日も近いだろう。
 
 
 だが……。
 
 聞くところによると、もう少しで会える筈のお前は随分と変わったようだな。
 吸血鬼が吸血を拒むなど、前代未聞だ。
 我々は何の為に発達した犬歯を持っている。
 
 あの頃のお前は実に生き生きとしていた。
 お前は覚えているだろうか?
 狩りで何人の人間を喰らったか、私といつも競い合っていたではないか。
 色々な場所へと共に出掛けたりもした。
 私は覚えている。
 忘れられない、お前との大切な記憶。
 
 ルフス……。
 この数百年もの間眠り続けていた間、お前に一体何があったのだ?
 
 お前は今生で一体何がしたいのだ?
 何を望んでいる?
 私はそれを知りたいし、叶えてやりたい。
 お前の為に。
 
 
 あのことがなかったら、お前は今も変わらず私の傍にいてくれたのだろうか?
「共に屍者の王になろう」と言ってくれたその笑顔。
 常に緊迫状況に追い込まれていた私がそれを聞いてどんなに心強かったことか。
 お前は知らないだろうな。
 
 何故あの時私を庇った?
 何故私を助けた?
 何故一人で死んでしまった……?
 私を置き去りにして。
 
 
 ああ、帰れるものなら帰りたい
 何もなく、悩むこともなく、
 何も知らなかったあの頃に……。
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