40 / 78
第三章 過ぎ去りし思い出(過去編)
第四十話 暴かれた弱点
「……嘘……!!」
「おじ様……おば様……!!」
ウィリディスは手で口元を多い、それ以上言葉が出てこなかった。ウィオラは水晶のような涙をぽろぽろ溢している。
「事実でございます。私が不甲斐ないばかりに……! ヘンリー様は私を守る為に身を挺されて……全ては私の責任でございます……」
声を震わせながら話しをしていたマルロは、頭を下げたままだった。彼の姿がいつになく小さく見える。
「どうか顔を上げてくれマルロ。話してくれてありがとう。お前が無事に戻ってきてくれて良かった……!」
セフィロスはマルロの肩を抱き、静かに諭すように言葉をかけた。
「セフィロス様……」
マルロは目の前に立つ少年が必死に感情を噛み殺しているのが良く分かった。サファイアブルーの瞳の中にはどこか戸惑いがちの色が見え隠れしているのだ。気が動転しながらも冷静さを失わぬよう、己を鼓舞し続けているに違いない。
突然両親を奪われた。
だからといって悲しみに打ちひしがれている猶予はない。当主が死んだとあれば、彼が新たな当主として家を守る立場を背負い、色々采配していかねばならないのだ。
例え若輩者だろうが、屋敷に住まう者達を路頭に迷わせるわけにはいかない。
急に櫂を流され大波に弄ばれている小舟のような状態だ。どんなにか不安だろう。だが、代わってやれるものは誰一人いないのだ。
「身分問わず誰に対しても優しかった父上らしい。きっとお前を私の元に無事戻らせる為だったのだろう。誤っても自害とか馬鹿な真似をするなよ」
そこで、セフィロスの肩にぽんと手が置かれた。心地よい温もりと重みを感じてその方向に顔を向けると、紅玉の瞳が見つめてきている。その瞳には、彼をどこか気遣うような色が揺らめいていた。
「問題は、ヨーク家の奴等がこれを機にここを攻めてくる可能性が非常に高いということだ。彼奴等、性格悪い卑怯者だからな」
ロセウスが腕組をすると、袖を捲りあげてあらわとなっている前腕に血管がぷくりと浮かび上がった。
「そうだな。結構腕が立つという評判もあるようだから、心して掛からねば……」
ルチルクォーツの瞳を瞬かせた少年が首をこくりと傾げている。
「しかし、何故おじ上達は貴艶石を破壊されたのでしょう? あれは普通の剣で容易に壊れるほど脆いものとは思えませんが……」
フラウムの指摘に対して、その場にいた全員が無言となった。部屋の温度が一気に氷点下の世界へと突入する。
ランカスター家一族の最大の弱点は、体内のどこかに存在すると言われる貴艶石だ。それを破壊されただけで肉体は灰と化し、魂は砕け散るとも言われている。
ただ、剣や銃弾では容易に壊れない。
貴艶石が強固であれば強固であるほど、その者は長寿を全う出来るのだ。それが二大勢力として長く君臨出来ている所以だ。
その貴艶石が破壊されたとなると、その武器は何らかの力を持っているに違いない。何にせよ、ランバート・ヨークが持つ剣には容易に近付かない方が良いに越したことはないだろう。
(父上はどんなにか無念だっただろう……)
話し合いのつもりで出向いた先でまさか命を奪われるとは思わなかったに違いない。
単なる話し合いの時は公平に互いに攻撃しないと、両家の間で予め決めていた筈だ。それをいきなり反故にするとは何とも卑怯なやり方である。腹ただしいを通り超え、腸が煮えくり返る想いだ。
(母上……私は貴方に認めてもらいたかった……)
昔優しかったが、成長するにつれて厳しくあたるようになった母親に、セフィロスはいつも自分を認めて欲しいといつも願っていた。だが、今やそれはもう二度と叶わない望みだ。悲しみと怒りが複雑に絡み合い、彼を離してくれない。
拳をギュッと握りしめていると、背中をバンバンと大きな手によって叩かれる。
自分よりも大柄なロセウスがニヤリと口元を歪めていた。
「安心しろ。お前には俺達がいる」
「ボクも頑張りますよ! セフィロス」
「わたくし達も、あなたを守るわ。あんな奴等、八つ裂きにしてやりたい!!」
「徹底的にノシてやろうじゃないの……!」
先程まで滂沱の涙に濡れていた淑女達は、鼻息を荒くしている。
「お前等二人が本気を出したら、きっとヨーク家は一瞬で炭になるな。俺達出番なしかも……」
「「なぁんですってぇ……!? 失礼しちゃうわ。それがレディに対して言う台詞!?」」
ぎらりと睨んだ女子二人の前に、ロセウスは大蛇に睨まれた蛙の心地がした。発達した上腕二頭筋を交差させて我が身を抱く。
「怖ぇ……っっ!! お前等それだけ頼りにしているという例えが通じねぇのかよ!」
「まあまあ、ロセウス兄さん。ウィリディス姐さん。ウィオラ姐さん。そこまでそこまで……!」
ウィリディス達を宥めるフラウム。
彼等の喧騒を横に、ルフスはぽつりと言った。
「おじ上には随分世話になったからな。俺達が力を合わせてこの状況を何とか乗り切らねばな……」
「……」
ルフスは突然無言になったセフィロスの左肩に手を置き、ぐいと自分の方へと抱き寄せた。セフィロスは自然とルフスに身体を預ける姿勢となる。
「……ルフス……?」
ルフスの肩の上に顎を乗せたセフィロスはやや戸惑い気味だ。
「無理するな。今の間位、素のお前でいろ」
「……すまない……」
親友の意を介したセフィロスは、その身体にそっと腕を巻き付けた。彼の匂いと服越しに伝わってくる温もりが、強張っている心と身体を少しでも和らげようとしてくれる。
(父上……母上……!! )
暫くすると痛切な嗚咽が聞こえて来た。
「おじ様……おば様……!!」
ウィリディスは手で口元を多い、それ以上言葉が出てこなかった。ウィオラは水晶のような涙をぽろぽろ溢している。
「事実でございます。私が不甲斐ないばかりに……! ヘンリー様は私を守る為に身を挺されて……全ては私の責任でございます……」
声を震わせながら話しをしていたマルロは、頭を下げたままだった。彼の姿がいつになく小さく見える。
「どうか顔を上げてくれマルロ。話してくれてありがとう。お前が無事に戻ってきてくれて良かった……!」
セフィロスはマルロの肩を抱き、静かに諭すように言葉をかけた。
「セフィロス様……」
マルロは目の前に立つ少年が必死に感情を噛み殺しているのが良く分かった。サファイアブルーの瞳の中にはどこか戸惑いがちの色が見え隠れしているのだ。気が動転しながらも冷静さを失わぬよう、己を鼓舞し続けているに違いない。
突然両親を奪われた。
だからといって悲しみに打ちひしがれている猶予はない。当主が死んだとあれば、彼が新たな当主として家を守る立場を背負い、色々采配していかねばならないのだ。
例え若輩者だろうが、屋敷に住まう者達を路頭に迷わせるわけにはいかない。
急に櫂を流され大波に弄ばれている小舟のような状態だ。どんなにか不安だろう。だが、代わってやれるものは誰一人いないのだ。
「身分問わず誰に対しても優しかった父上らしい。きっとお前を私の元に無事戻らせる為だったのだろう。誤っても自害とか馬鹿な真似をするなよ」
そこで、セフィロスの肩にぽんと手が置かれた。心地よい温もりと重みを感じてその方向に顔を向けると、紅玉の瞳が見つめてきている。その瞳には、彼をどこか気遣うような色が揺らめいていた。
「問題は、ヨーク家の奴等がこれを機にここを攻めてくる可能性が非常に高いということだ。彼奴等、性格悪い卑怯者だからな」
ロセウスが腕組をすると、袖を捲りあげてあらわとなっている前腕に血管がぷくりと浮かび上がった。
「そうだな。結構腕が立つという評判もあるようだから、心して掛からねば……」
ルチルクォーツの瞳を瞬かせた少年が首をこくりと傾げている。
「しかし、何故おじ上達は貴艶石を破壊されたのでしょう? あれは普通の剣で容易に壊れるほど脆いものとは思えませんが……」
フラウムの指摘に対して、その場にいた全員が無言となった。部屋の温度が一気に氷点下の世界へと突入する。
ランカスター家一族の最大の弱点は、体内のどこかに存在すると言われる貴艶石だ。それを破壊されただけで肉体は灰と化し、魂は砕け散るとも言われている。
ただ、剣や銃弾では容易に壊れない。
貴艶石が強固であれば強固であるほど、その者は長寿を全う出来るのだ。それが二大勢力として長く君臨出来ている所以だ。
その貴艶石が破壊されたとなると、その武器は何らかの力を持っているに違いない。何にせよ、ランバート・ヨークが持つ剣には容易に近付かない方が良いに越したことはないだろう。
(父上はどんなにか無念だっただろう……)
話し合いのつもりで出向いた先でまさか命を奪われるとは思わなかったに違いない。
単なる話し合いの時は公平に互いに攻撃しないと、両家の間で予め決めていた筈だ。それをいきなり反故にするとは何とも卑怯なやり方である。腹ただしいを通り超え、腸が煮えくり返る想いだ。
(母上……私は貴方に認めてもらいたかった……)
昔優しかったが、成長するにつれて厳しくあたるようになった母親に、セフィロスはいつも自分を認めて欲しいといつも願っていた。だが、今やそれはもう二度と叶わない望みだ。悲しみと怒りが複雑に絡み合い、彼を離してくれない。
拳をギュッと握りしめていると、背中をバンバンと大きな手によって叩かれる。
自分よりも大柄なロセウスがニヤリと口元を歪めていた。
「安心しろ。お前には俺達がいる」
「ボクも頑張りますよ! セフィロス」
「わたくし達も、あなたを守るわ。あんな奴等、八つ裂きにしてやりたい!!」
「徹底的にノシてやろうじゃないの……!」
先程まで滂沱の涙に濡れていた淑女達は、鼻息を荒くしている。
「お前等二人が本気を出したら、きっとヨーク家は一瞬で炭になるな。俺達出番なしかも……」
「「なぁんですってぇ……!? 失礼しちゃうわ。それがレディに対して言う台詞!?」」
ぎらりと睨んだ女子二人の前に、ロセウスは大蛇に睨まれた蛙の心地がした。発達した上腕二頭筋を交差させて我が身を抱く。
「怖ぇ……っっ!! お前等それだけ頼りにしているという例えが通じねぇのかよ!」
「まあまあ、ロセウス兄さん。ウィリディス姐さん。ウィオラ姐さん。そこまでそこまで……!」
ウィリディス達を宥めるフラウム。
彼等の喧騒を横に、ルフスはぽつりと言った。
「おじ上には随分世話になったからな。俺達が力を合わせてこの状況を何とか乗り切らねばな……」
「……」
ルフスは突然無言になったセフィロスの左肩に手を置き、ぐいと自分の方へと抱き寄せた。セフィロスは自然とルフスに身体を預ける姿勢となる。
「……ルフス……?」
ルフスの肩の上に顎を乗せたセフィロスはやや戸惑い気味だ。
「無理するな。今の間位、素のお前でいろ」
「……すまない……」
親友の意を介したセフィロスは、その身体にそっと腕を巻き付けた。彼の匂いと服越しに伝わってくる温もりが、強張っている心と身体を少しでも和らげようとしてくれる。
(父上……母上……!! )
暫くすると痛切な嗚咽が聞こえて来た。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。