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ゲルマンとエルフ
しおりを挟むゲルマンへの道中にフリードとアカリは雑談していた。
異種族のエルフという物珍しさにフリードも興味が湧いている。
「そのゲルマンにはエルフが沢山いるのか?」
「ゲルマンにエルフは少ないと思います。近くにエルフの里があるので私はそこから通ってる感じ……ですかね?」
どうやらエルフと人間は共存関係にあるらしい。王都エデンで滅多に異種族を見る機会が無く、彼女等がどういう立場にあるのかフリードは知らない。
「フリードさんは何処からお越しに?」
レオンの前では警戒して難しい表情をしていたが何故かフリードには警戒心が薄い。馬車の中で二人っきりかつ無言という地獄の空間にならなくてフリードも安心していた。昔の話になるがフリードはメアリに『ぶっきら棒だから、もう少し努力しなさい』と言われた思い出が脳裏をよぎる。
レオンという男のパーティに入ったからにはフリードの人付き合い次第で評価も変わるかもしれないと考えた。
「俺は王都エデンで冒険者をやっていた。それであのレオンって男に誘われて旅に出ている。半ば無理やりパーティを組む事になったが、目的が一致しているので困ってはいない。それにしても君は人を見る目があるようだ……レオンと出会った時も泥酔していてな、アイツを介抱していたらこんな状況さ」
きっとあの人は女遊びも激しそうですとアカリも笑っていた。メアリのおっとりとした目とは違い、アカリはあの商人に近い眼力をフリードは感じる。笑っている今は可愛らしく接しやすいが怒った時はきりっとした目尻も相まって怖そうだ。
そんな事を考えながらフリードが笑う顔を見ているとアカリが気づく。
「あら、顔に何かついてますか?」
「いいや……エルフという種族を見るのが初めてで少々見惚れていた」
「そうなんですね。もっと西に行った所にあるジェネラルって国は様々な異種族と生活する国として有名ですよ。この辺りで生活しているエルフはひっそりとしています。外に出ても魔物に襲われたりしますし……戦えるエルフも居ますが魔物を倒してもあまり意味がありません。彼らは何処からか姿を現すので大変です」
フリードも考えた事はある、生活していた村を壊滅させられた時は魔物をこの世から消したいと願っていた。しかし、冒険者になって魔物を討伐していると奴らは何処からか現れる。多種多様な姿で現れる魔物が何処から生まれているのか分からない。
「エルフの里では長老様が守ってくれてますので魔物に襲われる事もありません。近くのゲルマンに現れた時は強力して追い返すこともありますけどね」
そんな話をしていると後続のレオンが手綱を握る馬車から笑い声が聞こえた。『兄貴! まだまだありますぜ』というヴァンの声から察するに食料袋の隣に置いてあった酒瓶だろうとフリードはあたりをつける『お、わりーな。お前らも飲め!』というレオンの声で確信に変わった。
何だかんだ打ち解けている……そんなリーダーで大丈夫かと考えていると隣のアカリも察した様子だ。
「みんな悪いことしないで平和に暮らせればいいのに。リーダーさんは誰とでも仲良くなれるんですね」
アカリを攫った悪党と仲良くなるパーティリーダー……その立場を考えるとフリードも気を遣う。
「悪いな、君に酷いことをした奴と仲良くなるリーダーで」
「い、いえ。別に私は気にしてないです。もしお二人が居なかったらどうなっていたのか分かりません」
妙な違和感をフリードは覚えた。アカリの話を聴いているだけだと、あのまま捕まっていたアカリがどうなっていたのか分かりませんと聞こえる。けれど、特に恐怖する訳でもなく悲観していない様子だった。
やろうと思えばいつでも逃げれる実力の持ち主で『もしお二人が居なかったら(盗賊が)どうなっていたのか分かりません』だとしたら?
「君は治癒するスキルを持っているみたいだが、エルフはみんなそういう力を持っているのか?」
盗賊を治す場面を直接見たフリードはアカリに尋ねる。
「違います……その、人間特有の力に『スキル』という物があります。ゲルマンで過ごす人達も何かしらスキルを持っていますね。エルフはそういう力とは違って『妖精』と過ごしています」
フリードはエルフという種族の特徴を知る事ができた。生まれた時から自分しか見えない妖精が側におり、魔力を元に力を発揮する。そして、エルフは『不器用』だそうだ。物作り等も苦手で道具をゲルマンの住人から譲って貰い生活をしている。
代わりにエルフは植物との親和性が高く、妖精と育てる作物は美味しく成長も早くて、それを人間に提供していると話してくれた。
「ジェネラルのドワーフさんが有名です。彼らは私達エルフと違って物作りがとってもお上手で素晴らしいです。見た目も人間の子供みたいな感じで可愛いですし」
「そうなのか。俺は異種族に関して詳しくないから、そういう話は新鮮だな。エルフの特徴などもあるのか?」
フリードの問にうーんとアカリは目を閉じて悩む。ゲルマンでの出来事を思い出す様に数秒の沈黙が続いて口を開く。
「見てください、人間とはちょっと耳の形が違います」
ミディアムボブの髪を掻き分けてフリードに見やすいようにしてくれた。確かに、細長く耳の先がとんがっているようにも見える。
「あと、人間と大きく違うのは老人が居ません。私の見た目も丁度このくらいで止まってしまいます」
「ほぉ、それは凄いな。人間はこのまま歳を取って足腰悪くなり衰えるばっかりだ。エルフに体を支える杖は売れないな」
衰える事のない肉体があればフリードなら年月を掛けて最強の冒険者を目指せたなと一人で考えていた。
「ふふふっでも、人間は魔力の成長や柔軟性が他よりも優れていると思います。この世界でも衰えて行くのは人間と魔族だけですからね」
魔族という種族の存在をフリードは初めて知った。そして、ゲルマンが見えてきた。
「着きましたよ。送って頂きありがとうございます。近くに馬車を止めますか? 中に入りますか?」
フリードはアカリを信用していない訳ではない。
けれど、レオンが何かトラブルを起こしてしまう可能性を考えて馬車は外に止める事にした。何かしでかしゲルマンの住人に追いかけられても直ぐ出れるように大木へくくりつけた。
「おやアカリちゃん。今日はお客さんがいるのね」
ゲルマンに入ると優しそうなお婆さんが笑顔でアカリに話しかけてきた。
「それにしても……個性的ね」
酔っ払ってヴァンと肩を組むレオン。そのヴァンの両手はロープで拘束されており、見るからに『個性的』だった。
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