輝く草原を舞う葉の如く

貴林

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第二章 サザンソルト国

第二話 丸太作りの家

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サユミたちは丸太作りの家を目指す。
ハヤネが声をかける。
「ちょっといい?」
皆がハヤネを見る。
「ここでは、元素術は使わないように」
タクトが不思議がる。
「ん?どうしてだよ」
「忘れたの?元素術はイーストグラスランドだけに伝わる術なのよ」
タクトが思い出した。
「いけね、そうだったな。でも、使えないとなると不便だな」
マリカも残念そうに
「仕方ないよ。そんなの見られたら化け物扱いされるだけだしね」
ハヤネがうなずきながら
「丸切り使うなというのも、無理だろうから、出来るだけ控え目に。出来るだけ普通にね」
うんと皆もうなずく。


丸太作りの家の階段を上がり、ドアをノックするサユミ。
「ごめんください。どなたかいますか?」
静まり返る丸太作りの家。
マリカが、耳を澄ましながら
「誰もいないみたいね」
「どうする?」
タクトがマリカを覗き込む。
「私に聞かないでよ」
「じゃあ、誰に聞くのさ」
皆の視線が、ハヤネに向く。
「はっ?私?」
うんと皆がうなずく。
それに反論するようにハヤネ。
「こういう場合、サユミじゃない?」
皆がそこにいるはずのサユミを見る。
いたはずだった。
「あれ?どこ行った?」
何やら、家の裏側で声がする。
皆で行ってみると、犬と遊ぶサユミがいた。
おまけに、風を起こして犬のおもちゃ、木のボールを浮かせては投げている。それを嬉しそうに追いかける犬。
呆れながらハヤネが近づく。
「サユミ、言ったばかりでしょ。元素術は控えようって・・・」
あちゃあ、の顔をするサユミ。
その時である。ギイと軋む音がしたのだ。人の気配でそちらを向くと、年老いた男がロッキングチェアに腰掛けて、犬と遊ぶサユミを見ていたのだ。
「おやおや、お友達かな?」
パイプをプカプカしながら、お爺さんがニコニコして言う。
慌ててハヤネは、サユミの首元を掴むとグイッと引っ張った。
「キャン」
犬の真似をするサユミ。
「な、何するのよ。ハヤネ」
もうっと、むくれるサユミ。
ハヤネは、早くここを立ち去らなければとお爺さんにペコペコしながらサユミを引っ張って立ち去ろうとする。
「慌てて帰ることはなかろう。わざわざ、イーストグラスランドから、来たんじゃろう?」
えっと、皆がお爺さんを見る。
変わらずパイプをプカプカするお爺さんは、目を細めて笑みを浮かべた。。
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