蜃気楼の向こう側

貴林

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1 新たな出会い

大志が残した物

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二階の奥の部屋まで行くと 大志専用 と書かれた札が下がっている。
真希乃も入るのは初めであった。
普段は、各自宅からネットで会話をしてる為、家に上がることがなかったのだ。

入ると、机の上にベッドがある一体型の家具と小さな本棚に教科書、参考書が置かれた細長い部屋だった。
壁の一面は、アコーディオンカーテンになっている。
俊は、アコーディオンカーテンの取っ手を持つと、三人を得意げな顔で見る。
「ジャジャーン」
バタバタバタバタと、開けた。

大型のモニターが、三面鏡のように置かれて、最新のデスクトップ型パソコンが、ズラリ並んでいた。
使われていないであろうパソコンも、無造作に置かれている。

真希乃もこれには
「マジか、これ」
「全部これ、お兄ちゃんの自作なんだよ」
と、スイッチを入れる。
迷いのない動きをしていた。
ヒューンと、ディスク音が響く。
ビコーン 
〈おなまえをどうぞ〉
「俊だよ」
パソコンに呼びかけた
〈すぐるさま、おかえりなさい〉
「デン、音楽流して」
〈こちらなど、いかがでしょう〉
激しいドラム音から始まった。ハードロックだ。
ノリノリの俊、さきほどの優美な姿は影を潜めている。

「ちょっと待ってね」
チャカチャカと手慣れた手つきでキーボードを叩く。
真希乃は不思議に思った
「俊ちゃん?さっきみたいに呼びかけた方が早くない?」
「音楽が途切れるから、嫌なんだ」
納得しました
「それから、デンって、何?」
うふっと、笑う俊。
「このパソコンの名前、叶という字を、田にして、デンて呼んでるの」
〈なにか、ごようですか〉
反応するデン。
「お母さんから、メールあったかな?」
ついでとばかりに尋ねる俊。
〈とうちゃくは、みょうごにち〉
「ありがとう」
この時、真希乃は、かたつむりの歌を無性に歌いたくて仕方がなかった。
       ・
「えと、どこだったかな?」
チャカチャカとキーボードを打つのが、実に素早い。
「あった!デン、音楽とめて」
〈みゅーじっくすとっぷ〉
「これを見て?」
三人は乗り出して、モニターに見入る。
「どこかの公園みたいだな」
「そろそろ・・ここ。デン、ストップ」
画像が一時停止をする。
「んー、ベンチの男の人の前、変に歪んでるな」
「デン、拡大、スロー」
ぐっと、アップになりゆっくり動き出した。
「ちょっと、見にくいな」
「デン、画像をクリアに」
画像がクリア処理されていく。
「デン、ストップ」
ぼんやりだが、歪みの中に、人影が見えていた。

「女の子か?」
真希乃が目を凝らす
「確かに」
彩花も納得
髪の長い、色白のスラリとした姿に見えた。
「この子、髪型違うけど、どことなく蓮華っぽくない?」
ちょっと、嬉しそうな真希乃
「やめてください。そういうの」
ぷくっと、ふくれる蓮華
「馬鹿じゃないの」
ゴンと、真希乃の頭を小突く。
「いて!てか、これさあ、手に金属っぽいの持ってない?」
頭を摩りながら真希乃が気づいた。
「やっはり、そう見えますか?」
俊が真希乃の顔を見る。
「長い棒、金属。日本刀みたいなものかな。ん?靄の中の少女、日本刀?」
真希乃の言葉に彩花も納得
「言われてみれば・・俊ちゃん、この映像って?まさか・・・」

真顔の俊が、ゆっくりと口を開く

「斬首事件の現場映像です」

三人とも、絶句した。

真希乃は、椅子にもたれ掛かる。
「マジか。大志のやつ。ここまで」
フードの男の言葉の意味がわかった気がした。

「事件直後に、探し回ったみたいです。どこかの監視カメラに残ってないかって」
「警察は、これ知ってるの?」
「知らないと思います。かなり、遠くからのカメラで撮られた物らしいです。高解像度で撮られた物なら映ってるかもって、相当時間かけて画像処理とかしてました」

「彩花、師匠に・・おじさんに相談出来ないかな?」
「どうかな」
蓮華が遠慮がちに
「あ、あの、もう少し、調べてみませんか?私たちで」
彩花も真希乃も俊も、ニンマリとした。
真希乃が思い立って
「俊ちゃん、この女の人のとこだけ、プリント出来る?」
「出来ますよ。えと、こんな感じかな」
プリンターが動き始める。
真希乃をさえぎるように彩花
「俊ちゃん、それ私が預かっておく」
「了解」
「なっ」
下心丸見えな、真希乃。

「あ」
何かを思い出して、俊がチャカチャカ始める。
「どうしたの?」
「あと、もう一つ、大事なことが」
メールを開き始めた。
「これです」
メールの本文
映像、確認しました。察するに、この蜃気楼のようなものは、一種の移動手段、多空間への、異次元と言ってもいいかもしれませんが、そういったものの、蜃気楼の門ミラージュゲートでは、ないかと、私は考えます。
私なりに、失踪事件を調査するうち、ある人物に出会いました。この方こそ、ミラージュゲートの存在を知り、また、活用できる人物です。今度、その方と会えるよう手配いたします。

「ミラージュゲート」
にわかには信じがたいことだった。
「これが、事実なら大志の居場所がわかるかもしれない」
いつにない表情の真希乃。凛々りりしかった。ドキリとする彩花。
「俊ちゃん、この人の居場所とかわかるかい?」
「もう、スマホに転送済みです」
「早いな。でも、急に行って会ってもらえるかな?」
「メールで会えるか送信したんだけど、返信が来て、いつでも来てくれって」
俊の対応の早さには、驚かされる。
真希乃は、立ち上がり
「ありがとう、俊ちゃん。何かあったら連絡するね」

俊を見ると、リュックを背負いヘッドホンを頭に装着するところだ。
「どこか、行くの?」
よく聞こえないのか
「ん?」
俊は首を傾げる。真希乃の手を握ると引っ張っていった。
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