ＢＬダウト！

第十四話

すぐ隣だから良いと断ったのだが、巧は送るよ、と一緒に玄関を出た。ポケットから家の鍵を探る俺に、
「久しぶりだから緊張しちゃったかな」と優しく微笑む。
「いや・・・、あの」
まだ彼との距離感がいまいちつかめない。
「ごちそうさま、でした・・・」目をそらして絞り出すように声を出せば、彼はぷ、と吹き出し、
「遠慮しないでいいよ。‛たくちゃん’と前みたいに呼んでほしい」と笑った。

そうなのだ。小さい頃から遊んでもらっているらしい【お隣の巧くん】を俺はずっとたくちゃん呼びしていたらしい。先の食事の席で彼をどう呼んだら分からず、「たくみくん」と試しに言ってみたら、おばさんと巧に爆笑され、気を使うなと言われたのだ。

いきなり幼馴染みですと言われてもなあ、と困っている俺の頭を、巧は赤子にさわるかのようにそっと触れ、俺の耳に唇を寄せた。
「隣にいるから。頼ってきてほしい。いつでも」
つぶやくと静かに離れ、おやすみ、と隣の部屋へ戻っていく。

今の俺はちょっと顔が赤いかもしれない。