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アルバード王立高等学院~這い寄る魔の手~
卒業試験2日目~代償~
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「蒼き海よ、どうかその優しき波で我らを包み、護り給え。
全ての刃を流し、穢れを遠ざけろ――蒼波の抱擁!」
杖先から蒼白い光がほとばしり、瞬く間に僕とアイリスを守るように巨大な波が生まれた。音も光も呑み込む静かな奔流。その波は、守るための力として広がっていく。
ゴーレムたちは波に逆らえず、その場から身動きがとれなくなっていた。
そのまま時間だけが過ぎていき、あともう少しというところまできた。
……やった。
そう思った瞬間、視界が揺らいだ。
ピロン 魔力枯渇耐性のレベルが2に上がりました
そんな無機質な声が脳内に響く。揺れる視界に吐き気がするが、それでも立っていようと抗ったが、そんな努力もむなしく僕は地面に膝をついた。
全身が震え嫌な汗が噴き出した。そして、息を吸うだけで心臓から鋭い痛みが生じるようになった。
気づけばアクアリスの先端は光を失っていた。
何かの気配を感じて咄嗟に前を向くと、そこにはゴーレムの腕があった。
反射的に身体強化をした腕を前にして防御の形をとった。枯渇状態の魔力をなんとか絞り出すことで全身に痛みが生じたが全て無視した。
気づけば吹き飛ばされており、背中が叩きつけられていた。
顔面は腕で防御したおかげでケガを免れたが、防げなかった腹への攻撃によってあばらが数本折れた音がした。
アイリスの方をちらりと見ると手の先からぼんやりと光が出ているのが見えた。
…あぁ、勝ったな。
「…#$%&、美しく、儚く、そして鋭く舞い踊りて形を変え、光を宿して咲き誇れ。氷晶咲刃!!」
ぼやける視界の中、三体のゴーレムがバラバラに崩れ落ちる様子が目に映った。
どうやら上手くいったようだ。
「カイくん!大丈夫ですか?」
アイリスは慌てたように駆け寄ってきて僕の状態を聞いた。
「何とかね。」
そう言って僕は痛みをこらえて立ち上がった。
「体力回復ポーションを持っててよかったよ。」
魔法鞄から取り出したポーションを患部にかけながら、左手で魔力回復ポーションをもって、それを一気に飲み干した。
「あーだいぶマシになってきた。……約束、守ったでしょ?君の髪の毛一本触らせなかった。」
僕がそう言うと、アイリスは目を潤ませて頷いた。
「…ええ、確かに。」
その様子に、僕は魔力枯渇に陥ったことを少しだけ後悔したのだった。
*****
10分ほど休憩をはさんだのち、僕らは奥の通路に進んでいった。
「にしてもこの通路、長いですね。」
「そうだよねって、あれ?行き止まりだ。どこかに隠し扉であったのかな?」
「隠し扉、ですか?幻影魔法で隠されているのでしょうか?」
「それなら魔力の揺らぎに僕らが気づくはず…うん?あれは…」
視線の先にあったのは、小さなネズミだった。僕らに気づき逃げ出したかと思えば、壁の向こう側へと消えていった。
「隠し扉はどうやらここらしいね。」
「そのようですね。カイくん、少し離れていてください。」
「いや、アイリスが魔法を使う必要はないよ。どうせ壁なんてないんだから。」
そう言って僕は壁に向かって歩いた。壁にぶつかることはなくそのまま別の通路に出た。
「なんです?ここ…」
「どうやらあたりみたいだね。」
そう言って僕は通路の先まで歩いて行った。
開けた場所につくと、そこには優雅にお茶をすすっている男がいた。
「……先生?」
僕がそう言うと男はこっちを向いて微笑んだ。彼ははそう、魔法陣学の教師――リベル先生だった。先生はいつも通りの柔らかな笑顔を向けながらコップを置いた。
「やあ、思ったより早かったね。まさかゴーレムを全て倒してここまで来るとは思わなかったよ。」
「ゴーレムを置いたのは先生ですよね?あれ、倒させる気あったんですか?僕らじゃないと無理でしたよ。」
「いやぁ、もう少し弱くしてもよかったんだけどね。ゴーレムはあれが最弱なんだ。でも、二人とも楽しめただろう?石像を守るだけの試験なんて退屈だと思ったんだ。」
悪びれもせず笑うその姿に、僕は思わず苦笑する。
「先生、ひとつ聞いてもいいですか。」
「なんだい?」
「先生って、戦えませんよね?」
一瞬、静寂が落ちた。アイリスが慌てて僕の袖を引く。
「カイくん……!」
だが、先生はむしろ楽しそうに目を細めた。
「ずいぶんな言いようだね。……でも、確かに私は剣も振れないし、腕力もない。そもそも、私の専門分野は魔法陣だよ。前線で戦うものじゃない。」
そう言って先生は指をパチンと鳴らした。その瞬間、僕らの足元に魔法陣が浮き上がる。魔法陣の範囲から逃れようとするが、圧力のようなものが加わって動けなかった。
「さあ、本当の試験を始めようか。」
そう言って先生は口元を歪ませた。
全ての刃を流し、穢れを遠ざけろ――蒼波の抱擁!」
杖先から蒼白い光がほとばしり、瞬く間に僕とアイリスを守るように巨大な波が生まれた。音も光も呑み込む静かな奔流。その波は、守るための力として広がっていく。
ゴーレムたちは波に逆らえず、その場から身動きがとれなくなっていた。
そのまま時間だけが過ぎていき、あともう少しというところまできた。
……やった。
そう思った瞬間、視界が揺らいだ。
ピロン 魔力枯渇耐性のレベルが2に上がりました
そんな無機質な声が脳内に響く。揺れる視界に吐き気がするが、それでも立っていようと抗ったが、そんな努力もむなしく僕は地面に膝をついた。
全身が震え嫌な汗が噴き出した。そして、息を吸うだけで心臓から鋭い痛みが生じるようになった。
気づけばアクアリスの先端は光を失っていた。
何かの気配を感じて咄嗟に前を向くと、そこにはゴーレムの腕があった。
反射的に身体強化をした腕を前にして防御の形をとった。枯渇状態の魔力をなんとか絞り出すことで全身に痛みが生じたが全て無視した。
気づけば吹き飛ばされており、背中が叩きつけられていた。
顔面は腕で防御したおかげでケガを免れたが、防げなかった腹への攻撃によってあばらが数本折れた音がした。
アイリスの方をちらりと見ると手の先からぼんやりと光が出ているのが見えた。
…あぁ、勝ったな。
「…#$%&、美しく、儚く、そして鋭く舞い踊りて形を変え、光を宿して咲き誇れ。氷晶咲刃!!」
ぼやける視界の中、三体のゴーレムがバラバラに崩れ落ちる様子が目に映った。
どうやら上手くいったようだ。
「カイくん!大丈夫ですか?」
アイリスは慌てたように駆け寄ってきて僕の状態を聞いた。
「何とかね。」
そう言って僕は痛みをこらえて立ち上がった。
「体力回復ポーションを持っててよかったよ。」
魔法鞄から取り出したポーションを患部にかけながら、左手で魔力回復ポーションをもって、それを一気に飲み干した。
「あーだいぶマシになってきた。……約束、守ったでしょ?君の髪の毛一本触らせなかった。」
僕がそう言うと、アイリスは目を潤ませて頷いた。
「…ええ、確かに。」
その様子に、僕は魔力枯渇に陥ったことを少しだけ後悔したのだった。
*****
10分ほど休憩をはさんだのち、僕らは奥の通路に進んでいった。
「にしてもこの通路、長いですね。」
「そうだよねって、あれ?行き止まりだ。どこかに隠し扉であったのかな?」
「隠し扉、ですか?幻影魔法で隠されているのでしょうか?」
「それなら魔力の揺らぎに僕らが気づくはず…うん?あれは…」
視線の先にあったのは、小さなネズミだった。僕らに気づき逃げ出したかと思えば、壁の向こう側へと消えていった。
「隠し扉はどうやらここらしいね。」
「そのようですね。カイくん、少し離れていてください。」
「いや、アイリスが魔法を使う必要はないよ。どうせ壁なんてないんだから。」
そう言って僕は壁に向かって歩いた。壁にぶつかることはなくそのまま別の通路に出た。
「なんです?ここ…」
「どうやらあたりみたいだね。」
そう言って僕は通路の先まで歩いて行った。
開けた場所につくと、そこには優雅にお茶をすすっている男がいた。
「……先生?」
僕がそう言うと男はこっちを向いて微笑んだ。彼ははそう、魔法陣学の教師――リベル先生だった。先生はいつも通りの柔らかな笑顔を向けながらコップを置いた。
「やあ、思ったより早かったね。まさかゴーレムを全て倒してここまで来るとは思わなかったよ。」
「ゴーレムを置いたのは先生ですよね?あれ、倒させる気あったんですか?僕らじゃないと無理でしたよ。」
「いやぁ、もう少し弱くしてもよかったんだけどね。ゴーレムはあれが最弱なんだ。でも、二人とも楽しめただろう?石像を守るだけの試験なんて退屈だと思ったんだ。」
悪びれもせず笑うその姿に、僕は思わず苦笑する。
「先生、ひとつ聞いてもいいですか。」
「なんだい?」
「先生って、戦えませんよね?」
一瞬、静寂が落ちた。アイリスが慌てて僕の袖を引く。
「カイくん……!」
だが、先生はむしろ楽しそうに目を細めた。
「ずいぶんな言いようだね。……でも、確かに私は剣も振れないし、腕力もない。そもそも、私の専門分野は魔法陣だよ。前線で戦うものじゃない。」
そう言って先生は指をパチンと鳴らした。その瞬間、僕らの足元に魔法陣が浮き上がる。魔法陣の範囲から逃れようとするが、圧力のようなものが加わって動けなかった。
「さあ、本当の試験を始めようか。」
そう言って先生は口元を歪ませた。
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