異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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新たな旅路~Cランク昇格試験編~

悲しみと憎しみの狭間

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城下に戻りレイの気配を辿りながら走る。

大通りから逸れてだんだん道は細くなり、ついには人っ子一人いない場所にたどり着いた。

突如、後ろに何かを感じた。

人の気配は感じないし、気のせいだと言われれば納得しそうな小さな違和感。でも、それはたしかにあった。

「…レイ。久しぶりだね。」

震えるノドから出たのは自分でも驚くような冷たい声だった。
今すぐにでも振り向いて、会えて嬉しいと伝えたいのに、体はまるでいうことをきかなかった。

「……ああ。久しぶりだな、カイ。」

「どうしてここに来たの?神サマは特別な事情がない限り、現世に影響を与えるような行いはできないと聞いたけど?」

「…これは俺の独断だ。あとで罰を受けることにはなるだろうが、おまえにどうしても伝えなければいけないことがあるから、こうして現世に来たんだ。」

「…そう。で、伝えたいことって?」

「お前が、カイが、、どうしてあんなに苦しまなければならなかったか、俺はようやく思い出したんだ。」

それからレイは思い出したことを話してくれた。

その話をまとめるとつまりこういうことらしい。

まず神は世界を作る仕事をしていて、世界からあふれる出るエネルギーが神にとっての食事のようなものであるらしい。

ただ、世界は何千年と過ぎると人々の負の感情が一か所に集まり、災いを引き起こす。それは癌のようなもので、一度集まってしまえば急速に広がってしまう。そのため、神たちはそうならないように、自分のエネルギーを犠牲に除去していたようだ。

世界の均衡が壊れる原因となったのは創造神ノア様と創造神ロキによる戯れだったらしい。

創造神ロキが戯れの最中に創造神ノアを傷つけてしまい、創造神ノアのお気に入りだったレイがそれに激怒してした。ただまあ、中級神であるレイは上級神ロキにかなうはずもなく、消滅一歩手前まで追い詰められた。

創造神ノアがレイを治そうとあの手この手を使い奮闘すること千年弱。記憶の8割が消えてしまった状態ではあったものの、ノ創造神ノアはレイをもう一度作り直すことに成功した。

そこまでであればいい話で終わったものの、この千年の間、創造神ノアは自身の仕事を蔑ろにしていた。結果、人々の負の感情が一か所に集まってしまった。

その場所は惑星グレイゼア。つまり僕が生きるこの世界が被害を被ったらしい。創造神ノアが気づいた頃には、人の力ではもう無理な段階まで来ていた。

そのため、創造神ノアは時の神レスをグレイゼアに派遣し、選ばれしものに真実眼、真眼、魔力眼、幻想眼、服従眼を与え、悪しきものを消すために戦わせた。

ただ、神が現世に介入できる年数は決まっていたため、実質的に悪しきものを封印したのは、時の神レスの一番目の子ども、ハルシャ家二代目当主『カイ・ハルシャ』、となっている。

二代目当主は幻想眼をもったアイリス・フランソワーズという聖女と婚約をしたものの、二人とも25という若さで亡くなり、子どももいなかったため、カイ・ハルシャの弟が三代目となった。

そう、世の中では言われているが、そうではないらしい。

実際には、カイ・ハルシャは創造神ノアと取引をし、その結果魂を肉体から解き放つ必要があったため、消滅したという。

そして彼と創造神ノアの取引の内容は本人達にしか分からない。

ただ、取引後、カイ・ハルシャは下級神である水の神カイとなり、魂をいくつかに分裂させて現世に関与していたことは分かっているようだ。

その一人がライで、もう一人が僕らしい。

そして、アイリス・フランソワーズも同じ世界に転生していた。ただ、ライの世界では17才のときに亡くなっており、五十嵐海の世界では7才で亡くなっている。

つまり、ライにアリスと呼ばれていた女の子がアイリス・フランソワーズの生まれ変わりで、僕の世界にも彼女はいたのだろう。

そして、アイリス・フローレスは間違いなくアイリス・フランソワーズと同一人物ということになる。

こんな話を聞いたところで、僕はどんな反応をすればいいのだろうか?

レイが創造神ロキに喧嘩を売らなければ僕はこうして不幸な目に合っていなかったのだろう。悪しきもののせいで誰かが死ぬこともなかっただろうし、傷つくこともなかっただろう。

根本的な原因はレイに間違いない。

簡単には許せない。許してはならない。

そう少しでも思ってしまう自分自身が醜くて、大嫌いで、どうしたらいいのかわからなかった。

あの時、僕はたしかにレイに救われた。戦友だと思っていた。

僕はどっちの気持ちを優先させたらいいのだろうか?

キュッと嚙み締めた唇が意味もなくパクパクと動く。手のひらには爪が食い込んで血が流れていた。

そのとき、全身が硬直した。
誰かに縛り付けられているような、そんな感覚が僕を襲う。

「みーつけた…」

まさか、創造神ルナか…?

「あったりー!少しぶりだね。カイくん。レイちゃんは久しぶりだねー」

「…っルナ様!どうしてここに?」

「ノアお兄様に頼まれたの。レイちゃんを探してって。お取込み中のところ悪いけど、レイちゃんは回収していくね。」

「その前に、レイが盗んだ神器を返してもらいたいんですけど。」

「あーこれのことね。いいよ。返してあげる。」

瞬きをした瞬間、ふっとレイたちの気配がなくなり、金と銀の色をした聖杯だけがその場に残されていた。
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