異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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アルバード王立高等学院~嵐の前の静けさ~

特別試験2日目~誰かの正解を生きること~

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アルフォード視点

洞窟の中を歩いておよそ小一時間がたった。時折出てくるモンスターは全てハルシャ卿が倒してくれたおかげで傷一つなくここまで来れた。ただ、ハルシャ卿自身はかなり体力を消耗しているのか、めっきりとしゃべらなくなった。

「なあ、なんかここ変じゃないか?」

そう言って分かれ道の前で止まる。

「…何が?」

「確かに魔力を感じるのに誰もいないじゃないか。なあ、姉さんも感じるだろ?この変な魔力。」

「ええ。左の方が魔力が濃い気がします。…といってもアルの言う通り何もいませんが…」

姉さんが左の分かれ道の方へと足を踏み入れたその瞬間、真上の岩が落ちてきているのが瞳に映った。
それはスローモーションのように止まって見えた。
とっさに姉さんを押して通路に方に転がる。

ガラガラドッカン…とかなりの数の岩が続けて落ちてくる。

ハルシャ卿とエステラ嬢が無事なのか心配ではあるが、ひとまず安全な場所に身を置くため、姉さんの方に駆け寄ったのだった。


フェルリーナ視点

「…なっ、、」

まさか天井から岩が落ちてくるなんて思ってもいなかったわ…

そんなことをぼんやりと考えていると体が宙に浮く。

気づけばハルシャ卿に抱えられていた。

「大丈夫ですか?エステラ嬢。」

「えっ、ええ。おかげ様で傷一つありません。」

「それはよかったです。これからどうします?この岩をどけるのはさすがの僕でもフローレス嬢の魔法でも無理です。」

「どかに出口がないか探しましょう。幸い、道は続いているようですし。…どうしました?」

ハルシャ卿の顔色は誰がどう見ても悪かった。

「…ただの魔力切れなのでお気になさらず。」

「魔力切れ?!そこまで症状が出るということはほぼ枯渇状態ということですか?」

「…ええまあ。」

「そういえば、岩が落ちてくる前も具合が悪そうでしたね。魔力切れになるまで魔力を使う場面はなかったと思うのですが?」

「…こちらもいろいろとあるのですよ、エステラ嬢。」

「だとしてもいくらでも言う機会はあったでしょう!」

私が強めの口調でそう言うと、ハルシャ卿は辛そうな顔で困ったように眉を下げた。

なにか言えない事情でも…ハルシャ卿がしゃべらなくなったのはあの時からだから、、まさか…だけれど、そうなれば全てがつながる。

「あの岩たちはあなたの仕業ですか?ハルシャ卿。」

私の言葉にハルシャ卿は首をふる。

「いいや、あの岩は僕じゃない。…でも、エステラ嬢がここまで賢いとは思わなかったな」

急に口調を変えてきたのはここから先は個人と個人の会話だということ、なのでしょうか。

「あなたがしゃべらなくなったのは洞窟に入っておよそ30分後。あなたにはそうしなければいけない理由があった。それは禁断の二重スキルを使ったから。理論上、魔法の多重使用は脳のキャパを越えてしまうためできない。でも、なぜだか知らないですけど、あなたはできるんですよね?」

「どうして僕が二重スキルを使ったと思うの?」

「私は魔法を使うことができませんが、魔力を探知することができます。あなたからはずっと継続的に魔力が出ていた。そして、アイリス様からも。おそらく念話テレパシーを使っていたんじゃないですか?」

念話テレパシーは高位の魔法だよ。はたして僕らに使えるかな?」

「使えると思いますよ。確かに高位の魔法ですけれど、波長があえば習得可能です。」

「まあ、、そうだね。じゃあもう一つの魔法はなにだと推測する?」

「誰の魔力かは分かりませんでしたが、洞窟の中は薄い魔力の糸が通っていました。…索敵系スキル、でしょうか?」

私がそう言うとハルシャ卿は目を丸くしてクスッと笑う。

「やはり君が魔法を使えないのは人類の損だな。魔法に関する知識や魔力感知の腕は一級品だというのに、魔法が使えないのはもったいない。」

「余計なお世話です。好きで使えないわけではないですよ。」

私がそう言うとハルシャ卿は私の眼をじっと見た。

「…君が魔法を使えないのは魔力暴走が原因だと本気で思ってるの?」

何を、なにを言っているのだろうか?

「それ以外、、なにが原因だと言うんですか?」

「魔力暴走で生き残った人間は君が初めて。だから、自領では奇跡の子として崇められている。でも本当に魔力暴走で生き残ることなんてあると思う?少なくとも五体満足で生き残れる人なんていないっていうのが僕の見解だ。だから君は魔力暴走など引き起こしていなかった、これが真相だよ。」

「魔力暴走が起きていなかったとしたら、なぜ私は魔法が使えないんですか!」

「答えは簡単だ。飲まされたんだよ、魔力点のみを壊す薬を。」

「そのような薬は聞いたことがありません!」

「うん、ないだろうね。この国では販売されていないから。でも、ウチの商会は取り扱っていたよ。奴隷用だけどね。」

奴隷用?なんの話をしているの?

「僕の父はフォード商会のトップ。あそこでは薄暗いものも結構作ってたくせに管理がずさんだったから知ってるんだよね。その薬の名前はゼロナイズ。使う相手は大人が多いから知られてないけど、子どもに使ったら効果は半減する。魔力点は完全には壊れないし、成長するにつれて完全に修復される。」

「あなたの推理は間違っています。もしそうであれば今私は魔法を使えているはず。」

「まあ最後まで聞きなよ。魔力点が修復されても魔法が使えないのは、君が無意識下で拒絶しているからだ。まあ無理もないよ。魔力点が壊れている状態で魔法を使えばとんでもない激痛が走るからね。」

…一度興味本位で魔法を使ってみたことがある。その時、三日三晩寝込むぐらいの激痛を伴った。 
それが原因ってこと?

「君の魔力点はまだ不完全だ。魔力点同士を結ぶ魔力の糸がない。その魔力の糸を繋げるには人の魔力を送り込むか自分で魔法を使うしかない。」

「…そんなことをしたらまた激痛が伴います。」

「君のお祖父様であるエステラ公爵はそれを知っていたから君には言わなかったんだろう。どうする?」

「そんなこと急に言われても...」

「それに、エステラ公爵は言いたくなかったんじゃないかな。君にとって大切な人が君をこんな風にしたって。」

「…なんのことです?」

「それは君のお祖父様に聞いてほしい。僕が言ったら殺されちゃうから。…まあどちらにせよ、怖いのは『正解か分からない答え』じゃない。『誰かの正解』を生きてしまうことなんじゃないかな?…それに、君の大好きなアイリスに近づくにはそうするしかないしね。」

「なっ!!なんで知ってるんですか?!」

「鞄につけているそのブローチ、これってアイリスのファンクラブのやつでしょ?それに今日だってアイリスの顔をチラチラ見ては喋りたそうにしていたし。あーあと…」

「もういいですよ!!分かりました!女は度胸と言うではありませんか。いいでしょう、やります。」

私がそう言うとハルシャ卿はニッと笑った。子どもがイタズラを成功させた時に見せるような笑みだ。

「じゃあ遠慮なく。」

ハルシャ卿の指が私の額に当たったその瞬間、身体中に激痛が伴い私は気を失ったのだった。
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