女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

文字の大きさ
4 / 29
第一章

忠実な下僕へ

しおりを挟む

 夜の街を、白い立派なユニコーンを連れて歩き回る。

『め、目立つなあ……灰で汚してくればよかった、こいつ』
 ユニコーンは、迷いなく進んでくれた。
 これで雌馬のとこにでも行かれたら、どうしてやろうかと。

 とても大きな屋敷、いや教会だなこれ。
 通り過ぎた街でも見たことがある、鐘楼にバツ十字を飾ったこの世界の宗教施設。
 庭も驚くほど広い。

「ちょっと行ってくるから、背中貸してくれ」
 乙女以外は拒否すると言われるユニコーンが、素直に背に立つことを許してくれた。
 こいつは、あれが女神だと分かってるっぽい。

 通りに面した塀を乗り越える。
 どうせ、悪さしてるのは中の高位聖職者ってやつだろう。
 昔から坊主ってのは、ろくな事をしないものだ。

『待ってても良いのだが』とも思う。
 何といっても、女神様はとてもお強い。

 しかし、賊徒をおびき寄せる為、自らを囮にした行動に俺はいたく感動した。
 そして、役に立つところを見せたいと決意したのだ

 最前線に立つ上官の為なら、一兵卒は死の恐怖も乗り越えるものですよと。

 そこいらの木々の枝葉を体にくくりつけ、匍匐前進。
 ちょっと輪郭をぼやかすだけで、人の目には付かないと漫画で読んだのだ。


 ……俺は、あっさりと見つかった。

「こいつ、どうしましょう?」
 一度見た覆面に剣を突きつけられて、当然お手上げ。
 こんな偽装してりゃ言い訳もきかない。

 仕方がない戦うか、と思ったのだが。
「あっさり警戒網に引っかるし、探ってみても何の反応もねえな。素人だ」

 手に水晶球を持った男が、勝手に評価してくれる。
 しかも、水晶球には魔法陣が浮いている。
 そういや、そういう世界だって忘れてた。

 ならば、ここは。
「お、お許し下さい! わたしはただお嬢様が心配で、後を追ってきただけでげす!」
 忠実な下僕になりきった。

「うるせえ! 大声出すんじゃねえ!」と一発殴られたが、風向きも変わった。

「お前も大声出すんじゃねえよ。見られても面倒だ、地下へ連れてけ。一緒に始末してやる」
 頭目らしきのがペラペラと喋った。


 無事に教会の地下施設へ潜り込めたが、階段を降りた途端に臭う。
『なんだこれ? 嗅いだことあるような、ないような……』

 十数歩進んで理解する。
 人の体臭を何百倍にも凝縮して、糞便の臭いが混ざった感じ。
 ずらりと並んだ地下牢には、女神様以外にも大勢の女性が捕まっていた。

 すすり泣きの聞こえる中で、空いた牢に放り込まれる。
 また両手を縛られたが、速攻で外す。

「女神さまー女神さまー、いらっしゃいますかー?」
 何の遠慮もせずに、大声で呼びかけた。
 見張りが何か叫んでるが無視していると、直ぐに返事があった。

「おー、来たのか。えらいぞ!」
 褒められてとても嬉しい。

「ヴィルクォム関連の物は、お前みたいなのが居ると便利なんだ」
 良く分からんが、認められてとても嬉しい。

「ってめーら、こらっ! 舐めてんのか!?」
 ガンガンと金属音がする。

 痺れを切らした見張りが、女神様の牢屋の格子を剣か槍で殴ったか。
 バカな奴め。

 どーん! と派手な音がして何かが吹っ飛んだようだ。
 もう見張りの声はしない。

 異変が起きたのを察した女達も息を殺し、静まり返った地下牢を、女神様がゆっくりと歩いてくる。

 ほんのひと睨みで、俺を閉じ込めていた鉄格子が崩れた。
 ついでに女達も助け出し、魔法の警戒網を停止させて外へ逃がす。

 地下へ戻ると、見張り役は生きていた。

「こういうのは放っておくんですか?」
「んー、わたしはわたしの世界の草花から星々まで、全て愛しているぞ?」

 微妙によく分からん答え。
 女神様は、もう一言付け加えた。

「目の前で死んでも、互いに殺し合ってもわたしは関与しない。ただ世界の中で循環するだけだ。ただし、わたしに殺されると世界から弾き出される。それは望むところではない」

 優しいのか冷たいのか、良く分からんなあ。

「ま、似たようなことをする存在があるから、たまにお前らみたいなのを呼んで対処させるがな」
 ふーん、異世界勇者は別会社からの派遣なのね。

「さあ、いこうか」
「へい!」
 直接雇用になった俺は、女神様に付いて歩きだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...