11 / 29
第二章
貧乏女神
しおりを挟む夕暮れも迫る頃に着いた街の様子は、ぴりぴりしていた。
街道から続く入り口は、検問まである。
『まずいなあ』と思う。
女神さまもティルも人目を引くのだ。
街の外で泊めてくれる所があればそっちを選んだが、緊張あふれる雰囲気の中でそんなとこは無い。
引き返すわけにも行かないし、二人には帽子とフードを被ってもらいユニコに乗せる。
って、おい女神さま! 前の世界のグラサンなんか着けないで下さい。
一発でお縄ですよ。
「そこのお前ら、こっちへこい」
早速止められる。
「見かけん顔だな。何処から来た?」
「いやーそれがですね。転送魔法機が故障したのか、妙なとこへ飛ばされましてね。見慣れぬとこへ出ちまって。あ、私らはミッドガルドのローランって街から来たんですよ」
「お、おう?」
「いやー助かった。武器もなしで放り出されて、ここ何処ですかね? あ、荷物も見ますか?」
ペラペラと嘘が口から出る。
完全なでまかせなのに、何故か信じてくれる。
あーそうか、これも前回の残り――説得系のスキル――ってやつか。
「ふむ、女二人に使用人か……ところでこの馬、まさかユニコーンか?」
う、嫌なところに気付くな、
「そんな訳ないじゃないですか。飾りですよ、飾り」
俺はユニコの角をぐいぐい引っ張る。
嫌そうな顔をするが、賢いユニコーンは我慢した。
最後に、『お手数かけてすまないね』と荷物の底に転がっていた、小粒の金塊を握らせた。
なんだかんだで、これが一番効果があった。
無事に検問を過ぎると、ユニコがごつんごつんと角をぶつけてきやがる。
「悪かったよ、お前は賢い神獣だよ。あとで好きな野菜買ってやるから」
所詮は馬だ、これで満足してくれた。
たぶん、俺が女神さまに貰った能力は4つか。
転生時に貰った自動翻訳、それに説得と神獣捕獲と縄抜け。
あとは女神さまの力の5%ほどを預かっている。
『これを返せれば、万事解決しそうなんだけどなあ。二人切りになった時に、相談しよう』
宿屋にて、さっそく持ちかけた。
ティルのいる前でこんな話は出来ない。
「回収できませんか?」
「どうやって?」
それを聞いてるんですが。
「だってー、回収する為の力がないんだよー。ゆうた、乾電池から発電所に電流を送れるか? 分かるな?」
いや、さっぱり分からん。
女神さまは、意外と現代用語も知っている。
管理下に、前みたいに科学系の世界もあるからだろう。
「なら、俺から送ることは出来ないんですか? バッテリーから電流送ってエンジンを始動させるみたいに」
女神さまは、頭に『?』を浮かべる。
あーもう、持ってる知識がバラバラだよ、この神。
少し分かりやすく説明し直した。
「お前から、わたしに力を注ぐと?」
「まあそういう事ですね」
「お前……そんな事考えてたのか、人のオスは見境がないな! このスケベ!」
何故か、女神さまは怒って背を向けてしまった。
『ええー……俺、なんかやっちゃいましたか?』
理不尽だと感じたが、本気で怒ってないのでしばらく放っておいた。
その間、俺は鞄の中身を確認する。
先程の4つの能力と、この荷物、今のとこ防御にしか使えない女神のパワー。
これで当面は乗り越えないといけない。
だが、防御と言っても核の直撃にも耐えるレベルのものなので、気が楽だ。
水責めでもされなければ、死ぬことはないな!
「ゆーた、腹が減ったぞ!」
どうやら、ご機嫌が直ったようだ。
食事の出る宿ではないので、食材を買って来て薪代を払って自分らで調理する。
今晩のメシは、エルフ風サラダに、鳥に香草を詰め込んだ丸焼きに、穀物を粉にして練って焼いたもの、要するにパンだ。
ユニコにも、ニンジンの様なものを買ってやった。
三人での食後に、ティルからこの辺りで起きる事件のことを聞いた。
幾つもの村から、突然住人が消えると。
「人にエルフ、オークにゴブリンと種族も関係なくです。けれど、お互いが疑心暗鬼になって、人とオークが一瞬即発だとか。わたしの村も……」
ティルは、そのままうつむいてしまった。
「エルフの娘よ、その失踪が何処で起きたかこの地図に記してくれ。分かるだけで良い」
女神さまが渡した地図に、ティルが印を付ける。
多いな、十数箇所はある。
なら被害は数百人どころではないかも。
「ふーん、この大陸のあちこちか。バラバラだな」と、女神さまは地図をくしゃっと丸めた。
その夜、二人きりなのを確認して、俺は女神さまに聞いた。
「地図で、何か分かったのですか?」
「なんだ、気付いたのか」
「そりゃもう、女神さまは嘘と演技は下手くそですから」
「ふん、褒めてあげようと思ったのにー! まあいいや。印は、大まかに二点を中心に円を描く」
そこまで言われりゃ俺でも分かる。
「一つは、女神さまが現れた世界樹の苗木。もう一つは、今回の黒幕かヒントですね?」
「ゆうたはかしこいなあ」
頭を撫でて貰うなど、何十年ぶりだろう。
嬉し恥ずかしだ。
「目的は分からんが、目的地ははっきりした。あとは乗り込んで何とかする!」
大雑把な計画を立てた女神さまに、俺は辛い現実を伝えねばならない。
「実は、もうお金がありません。金も宝石もです。女神さま、バイトの経験は?」
「あ、あるわけないじゃろ……」
俺達は、二人で旅に出て、最大の窮地をむかえていた。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる