女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

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第二章

貧乏女神

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 夕暮れも迫る頃に着いた街の様子は、ぴりぴりしていた。
 街道から続く入り口は、検問まである。

『まずいなあ』と思う。
 女神さまもティルも人目を引くのだ。

 街の外で泊めてくれる所があればそっちを選んだが、緊張あふれる雰囲気の中でそんなとこは無い。

 引き返すわけにも行かないし、二人には帽子とフードを被ってもらいユニコに乗せる。

 って、おい女神さま! 前の世界のグラサンなんか着けないで下さい。
 一発でお縄ですよ。

「そこのお前ら、こっちへこい」
 早速止められる。

「見かけん顔だな。何処から来た?」
「いやーそれがですね。転送魔法機が故障したのか、妙なとこへ飛ばされましてね。見慣れぬとこへ出ちまって。あ、私らはミッドガルドのローランって街から来たんですよ」

「お、おう?」
「いやー助かった。武器もなしで放り出されて、ここ何処ですかね? あ、荷物も見ますか?」

 ペラペラと嘘が口から出る。
 完全なでまかせなのに、何故か信じてくれる。
 あーそうか、これも前回の残り――説得系のスキル――ってやつか。

「ふむ、女二人に使用人か……ところでこの馬、まさかユニコーンか?」
 う、嫌なところに気付くな、

「そんな訳ないじゃないですか。飾りですよ、飾り」
 俺はユニコの角をぐいぐい引っ張る。
 嫌そうな顔をするが、賢いユニコーンは我慢した。

 最後に、『お手数かけてすまないね』と荷物の底に転がっていた、小粒の金塊を握らせた。
 なんだかんだで、これが一番効果があった。
 無事に検問を過ぎると、ユニコがごつんごつんと角をぶつけてきやがる。

「悪かったよ、お前は賢い神獣だよ。あとで好きな野菜買ってやるから」
 所詮は馬だ、これで満足してくれた。

 たぶん、俺が女神さまに貰った能力は4つか。
 転生時に貰った自動翻訳、それに説得と神獣捕獲と縄抜け。
 あとは女神さまの力の5%ほどを預かっている。

『これを返せれば、万事解決しそうなんだけどなあ。二人切りになった時に、相談しよう』

 宿屋にて、さっそく持ちかけた。
 ティルのいる前でこんな話は出来ない。

「回収できませんか?」
「どうやって?」
 それを聞いてるんですが。

「だってー、回収する為の力がないんだよー。ゆうた、乾電池から発電所に電流を送れるか? 分かるな?」

 いや、さっぱり分からん。
 女神さまは、意外と現代用語も知っている。
 管理下に、前みたいに科学系の世界もあるからだろう。

「なら、俺から送ることは出来ないんですか? バッテリーから電流送ってエンジンを始動させるみたいに」

 女神さまは、頭に『?』を浮かべる。
 あーもう、持ってる知識がバラバラだよ、この神。

 少し分かりやすく説明し直した。

「お前から、わたしに力を注ぐと?」
「まあそういう事ですね」

「お前……そんな事考えてたのか、人のオスは見境がないな! このスケベ!」
 何故か、女神さまは怒って背を向けてしまった。

『ええー……俺、なんかやっちゃいましたか?』
 理不尽だと感じたが、本気で怒ってないのでしばらく放っておいた。

 その間、俺は鞄の中身を確認する。
 先程の4つの能力と、この荷物、今のとこ防御にしか使えない女神のパワー。
 これで当面は乗り越えないといけない。

 だが、防御と言っても核の直撃にも耐えるレベルのものなので、気が楽だ。
 水責めでもされなければ、死ぬことはないな!

「ゆーた、腹が減ったぞ!」
 どうやら、ご機嫌が直ったようだ。

 食事の出る宿ではないので、食材を買って来て薪代を払って自分らで調理する。

 今晩のメシは、エルフ風サラダに、鳥に香草を詰め込んだ丸焼きに、穀物を粉にして練って焼いたもの、要するにパンだ。
 ユニコにも、ニンジンの様なものを買ってやった。

 三人での食後に、ティルからこの辺りで起きる事件のことを聞いた。
 幾つもの村から、突然住人が消えると。

「人にエルフ、オークにゴブリンと種族も関係なくです。けれど、お互いが疑心暗鬼になって、人とオークが一瞬即発だとか。わたしの村も……」

 ティルは、そのままうつむいてしまった。

「エルフの娘よ、その失踪が何処で起きたかこの地図に記してくれ。分かるだけで良い」

 女神さまが渡した地図に、ティルが印を付ける。
 多いな、十数箇所はある。
 なら被害は数百人どころではないかも。

「ふーん、この大陸のあちこちか。バラバラだな」と、女神さまは地図をくしゃっと丸めた。

 その夜、二人きりなのを確認して、俺は女神さまに聞いた。

「地図で、何か分かったのですか?」
「なんだ、気付いたのか」

「そりゃもう、女神さまは嘘と演技は下手くそですから」
「ふん、褒めてあげようと思ったのにー! まあいいや。印は、大まかに二点を中心に円を描く」

 そこまで言われりゃ俺でも分かる。

「一つは、女神さまが現れた世界樹の苗木。もう一つは、今回の黒幕かヒントですね?」
「ゆうたはかしこいなあ」

 頭を撫でて貰うなど、何十年ぶりだろう。
 嬉し恥ずかしだ。

「目的は分からんが、目的地ははっきりした。あとは乗り込んで何とかする!」

 大雑把な計画を立てた女神さまに、俺は辛い現実を伝えねばならない。

「実は、もうお金がありません。金も宝石もです。女神さま、バイトの経験は?」
「あ、あるわけないじゃろ……」

 俺達は、二人で旅に出て、最大の窮地をむかえていた。
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