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第二章
裸の女神
しおりを挟む「仲間が来てるかも知れない、誰か外を見てきて!」
新たにボスになったティルが命令し、一人出てったようだ。
「さてと、ユウタには色々教えてもらわないとね」
ピンク髪で童顔で巨乳の美少女エルフがかわいい声で喋りながら、縛られて目隠しまでされた俺の頭を踏みつける。
『なんてこった……!』
誰か撮影しててくれないものかと、心の底から祈る。
「あの神が宿った女の子、急に知性がなくなったんだけど何か知ってる?」
ティルの問いに俺は何も答えない。
すると更に強く踏んでくれた。
「協力すれば仲間にしてあげるわよ? 私達は強大な存在をこの世界に呼び寄せるの。貴方にも国の一つくらいあげるから」
その台詞、やっぱりラスボスじゃないですか。
「クゥ殿、余り勝手な真似をされては困る! 今はその娘を使い、我らの聖石に力を注ぐことが優先だ」
名前も知らぬ誰かが喋る。
「それもそうね」とティルが言ったと同時に、外から叫び声がした。
絶叫、それも断末魔だな、外を見に行った奴か。
「何事だっ?」と誰かがいい、「クローラ、残ってなさい!」とティルが命令する。
三人が出ていったか……そのまま番犬にやられてくれれば楽なのだが。
さてと……俺は寝転んでても出来ることをやりますか。
「クローラ、とか言ったかね? 君は、この儀式で何が起きるか知ってるのかい?」
「黙りなさい」
クローラは、声からするに女のようで、そう言いながらも質問に答えてくれる。
「この聖石は凄いものよ。これが身に宿った時に確信したわ、素晴らしい至高の存在と繋がっているとね!」
そりゃまあ、別の世界群を束ねる創世神の忘れ物だもんな。
しかし、それが発動したということは。
「その石のせいで、周りの人たちが消えただろ。しかも世界樹から力を搾り取る為に、幾つの村々を犠牲にしたんだ?」
半分は推測混じりだったが図星のようだ。
「黙れ、必要な犠牲に過ぎぬ。自分はこの石の導きのままにぃ……か、家族が消えたのはわたしのせいじゃないの!」
操られる意識と昔の記憶ってやつかな、もう一押し。
「その石は聖なる物ではない。そこにあってはならない異質の物だ。今、この世界を産んだ女神さまが近くまで来ておられる。お前も必ず助けて貰えるし、女神さまは命も魂も奪ったりしない! 俺を信じろ! あと六つ、それだけ魔法陣を壊せばお前たちは救われるんだ!」
「ほ、ほんとうに……?」
「本当だクローラ。神さまってのは、優しいものだよ」
顔を覆われ縄でぐるぐるの俺の言葉が、クローラに届いた。
黙った彼女の足音が俺から遠ざかる。
どの魔法陣からでも、あと少しだけ力を返してくれれば良いのだが。
その時、何か速いものが空気を裂く音がした――恐らくは弓矢。
「クローラ、何をしてるのかしら?」
「ティ、ティル……。ぐっ……わたし、家族が消えた……時、怖かったの……」
どさりと、クローラが倒れた。
「わたしの家族も、この石に飲まれたわ。けど、仕方ないでしょ?」
ティルの声だ、くっそ意外と早く戻って来やがった。
続けざまに、残りの二人も戻ってくる。
「ティル殿、一人で聖石を三つも持つなど……! や、これはっ!?」
「ク、クローラまで、まさかお主が」
慌て動揺する二人の声に対し、エルフ族の娘の声はとても冷たい。
「これで四つ。せっかくなので、全部貰ってしまいましょう」
一分とかからずに、周囲は静かになった。
六つの破片を独り占めしたティルが、俺に近づいて目隠しを取った。
「ねえ、見て見て! 凄いでしょ? これだけの力があれば殺すも生かすも自由自在よ。きっと元は一つの石だったのねえ」
凄惨さを加えて三割増しの美人になった彼女が、にこりと俺に笑いかける。
非の打ち所のない悩ましい身体からは目に見える量のオーラが溢れ、長く細い髪は蛇のように波打つ。
「今からわたしは神になる。ユウタ、あなたにはそれを見届けてもらうわね」
これは困った、そこに女神さまのお力を混ぜたらどうなるか分からない。
もちろん神にはなれないだろうが……。
全ての魔法陣と繋がった一番大きな陣に、女神さまの抜け殻を据える。
一つの魔法陣から力が注ぎ込まれ、この世界でも使えるエネルギーに変換され、それをティルが吸収する。
「はははっ! 凄いわ、なにこれ!? この世にこんな力があったとは! 全知全能の存在にわたしはなるのよ!」
やっべーな、もうイッってやがる。
次は同時に二つの魔法陣を、その次は三つを吸収した。
それが五つになり、遂に六つになった。
やれやれ、これだけは絶対にしたくなかったんだけど……。
<<縄抜け>>、今後も一番役に立つスキルを使い、俺は自由を取り戻して走った。
「大人しく見てなさい!」とティルが力をふるう。
『うぐぅ』今のはちょっと効いたぞ。
俺はティルでなく、女神さまの体をダイブで取り戻した。
裸に抱きつくのをお許しくださいね。
「そんなものを今更! 今のわらわなら依代を経由せずとも、力を吸収することが出来るわ!」
暴れると言うよりも、内側からの暴風に翻弄されると言った方がいいか。
ティルの行動と言動はどんどん過激になってゆく。
いずれ体内のヴィルクォムの石を通じて外からの力が流れ込むかもしれないが、その前に女神さまに助けてもらうんだな。
俺は腰のナイフを引き抜くと、「女神さま、すいません!」と謝ってから、その肉体の中央、心臓の位置に突き立てた。
「なにを!? わらわに利用されるよりも殺すとは、手間をかけさせおって!」
既に膨大な力を吸収したティルが激怒する。
白い光が集まり凝縮し、俺に向かって撃つつもりのようだ。
あれが当たれば無傷ではすまないなと、直感的に分かる。
抱きしめていた女神さまの体が、一度は生命活動――鼓動――を止めた。
別に爆発したりはしない、生命体に留まれなくなったエネルギーが本来の持ち主ところへ帰るだけさ。
「死ね!」と宣言して放たれたティルの一撃は、俺まで届かなかった。
腕の中から声がする。
「ふーむ、服がない……。ゆうた、いたずらしたりしなかったか?」
「まさか! お肌を傷つけてしまいましたが……」
「まあ、許してやろう。よくやったぞ、ゆうた!」
「はい!」
裸の女神さまが、俺の手を借りながら立ち上がった。
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