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第二章
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しおりを挟む村長が持ってきた報酬は条件の二倍。
銀貨で60枚あったが、アドラーは半分を返しながら言った。
「コボルト達に謝罪なさっては如何です?」
それでも村長や長老達は、コボルトに頭を下げるのを渋る。
『こっちは種族間の仲が本当に悪い……』
いい加減に、アドラーも呆れてしまう。
それでも、黙って待ち続けるアドラーを気にしてか、村長はお詫びに羊二頭を約束した。
父コボルトは、コボルト族が今後も村を通して貰えるだけで良いと言って、一度は断った。
『この種族は……そういうところがある。個人よりも集団の利益優先するんだよなあ』
アドラーの記憶にもあった。
かつて指揮下にあったコボルト族の部隊が、全軍を救う為に進んで犠牲になったことがある。
その後、コボルトが死守した砦を軸にアドラーの軍は戦場を旋回し、戦いは一気に有利になった。
アドラクティア大陸で戦っていたのは、昆虫型モンスターの大群。
アドラーはここまで思い出していた。
「勘違いだったし、ここは素直に貰っておきましょう! いいですよね、村長?」
村長がこくこくと頷くので、アドラーはすぐさま羊を選ぶ。
若いメスを二頭貰った。
コボルトの一家は、早く自分たちの村へ帰りたがった。
ドリーに子コボルトを乗せて、ここ何年も危険な魔物など出てない道を行く。
「おにいちゃん、ありがとう!」から、あれこれ質問攻めをしていた子コボルトも眠気に負けた。
日付も変わる頃には、コボルトの村へ着いた。
まだ起きていたコボルト達は大喜びだった。
その晩泊まったアドラーが起きた時には、羊一頭を使ったごちそうが待っていた。
貰ってきた羊を、早速一頭潰してふるまってくれたのだ。
アドラーは腹いっぱい食べた。
バスティも、何時の間にか人型に戻ってガツガツ食べていた。
「ここなら猫の耳も目立たないからな」
犬耳に混じってご満悦。
謝礼を持ってきたコボルトの長は言う。
「本当にお世話になりました。もし何かあれば、是非ともお申し付けください。一族上げてお手伝いさせて頂きます!」
「いやいや、そこまでしなくても良いです!」
アドラーは丁重に断る。
コボルト族は忠節無比で約束を守る、変なことに巻き込んだりしたら申し訳がない。
盛大な見送りの時、助けた子コボルトが走って来た。
「おにいちゃん! 僕ね、大きくなったらおにいちゃんのギルドに入るね?」
「お、おう……それはどうだろなあ……あはは……」
何一つ約束できないアドラーに変わって、バスティが答えた。
「待ってるにゃ。その頃には立派な冒険者ギルドになってるから!」と。
二つのクエストを二日で終わらせた。
一人と一匹で合わせて銀貨55枚、悪くない稼ぎ。
しかもガラガ村からは、焼け残った魔狼の頭骨を持って帰った。
アドラーは巨大な頭骨をギルド本部へ持ち込んだ。
「テレーザさん、この討伐成果で冒険者ランクが上がらない?」
「……な、なんですかこれ?」
テーレザは大きな目を一層丸くする。
「自分のとこでは魔狼って呼んでた。野生の狼が魔物化したやつで、今回の犯人」
「へー。ふーん……見たことないけど、強そうですね。申請するので、預かって良いですか?」
「もちろん! 頼むよ、ギルドがああだから冒険者ランクでも上げないと人が集まらないんだ」
ギルドランキングは、ギルドの規模や功績にギルド戦の結果で決まる。
この度シード落ちして所属1人になった”太陽と掴む鷲”の順位は、大きく落ちる。
あまり重要視されてないが、冒険者ランクもある。
個人の強さを基準にしているが、必要になった事がないのでアドラーはランク外。
『物は試し、ってやつだな』
アドラーも余り期待はしていなかった。
それから5日、アドラーは小さな依頼をこなす。
ドラゴン退治に行こうにも、遠く離れた生息地まで行く金がない。
一ヶ月は地味なお使いクエストが続くと思われたが、またテレーザが手招きでアドラーを呼んだ。
「アドラーさん、こないだの骨なんですけど……」
「冒険者ランクの? 結果が出ました?」
「いえ、そっちはまだですが、あの頭の骨が珍しいから売ってくれと」
「へー、幾らですか?」
「金貨3枚で」
「ええっ!?」
「全身骨格なら10枚は出すって言ってました。見たことないって」
ギルド本部を飛び出したアドラーは、ドリーに強化魔法をかけて飛び乗った。
世にも珍しい馬より速いロバが、田舎道を疾走する。
しかし魔狼の骨は、たたりを恐れた村の者が砕いて海に撒いた後……。
ギルド本部へ舞い戻ったアドラーが答えた。
「売ります。直ぐにお金を下さい。今度はドラゴンを血の一滴も残さずに持って帰りますから!」
「直ぐって言われも……。なら、本部が建て替えてお渡しします。けど内緒ですよ?」
権力のある受付嬢は、こっそりと金貨3枚を先払いしてくれた。
相変わらずギルドに新人は来ない。
大借金があるのが知れ渡って、面接希望者すらない。
『一発逆転するには、もう大物を討伐するしかない!』
地味な前世の反動か、アドラーは大きな賭けに出ることにした。
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