【完結】 禍の子

赤牙

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26話 Sideジン 【R】

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 それから一年が経ち、王都はゲイル様と魔物となったエクラ様や司教様の手により姿を変える。
 人々は逃げだし王都はさびれた姿に。
 人の代わりに魔物や魔獣が住み着き、誰も寄り付かなくなる。
 
 ゲイル様に与えられた新たな世界は混沌としていたが、閉じ込められた俺の世界は何も変わらない。
 三人で過ごす歪な生活が普通となり、悲しいとか辛いとか……そんな感情は徐々に薄らいでいった。
 エクラ様が生きてそばにいてくれればいい。
 俺の希望はそれ一つだけだった。


 そして、何も変わらない一日が今日も始まる。
 
「ひぁ、んっ……ぁ、ゲ、イル……さまぁ……」
「ジン……ジン……愛してる……ジン……」

 俺は犬のように四つん這いになり、腰を打ちつけられるたびに嬌声をあげる。
 ゲイル様に躾けられた体は、素直に快楽を拾い嬉々としてゲイル様を受け入れた。
 パンパンとリズム良く叩きつけられ、少し角度を変えてゲイル様が突き立ててくる。

「ふ、くっ、んぁ!? ———ッッッッ……」

 奥を抉られ、たまらずシーツに顔を埋め声を殺す。
 それと同時に、俺は果ててしまい、ゲイル様は俺の中に熱い飛沫を注ぎ込む。
 汗で濡れた背中を撫でられ、うなじにキスされ甘噛みされる。
 その行為ですら、イッたばかりの俺には刺激が強すぎて中がきゅっとしまる。

「はは、ジン……しめすぎだよ」

 ゲイル様は困ったように笑うと、俺の中から出ていく。
 息を整えていると、優しく頭を撫でられ顔を上げる。
 ゲイル様が俺の頭を撫でる時は、キスをするんだと教えこまれ、今では意識せずにこの通りだ。
 薄い唇が重なったあと、ゲイル様は衣服を整え部屋を出て行く。
 ゲイル様を嫌うことも拒絶することもできない中途半端な自分。
 俺は大きくため息を吐くと、再びベッドに顔を埋める。
 すると、近くにいたエクラ様が近づいてきて心配そうに俺の名を呼ぶ。

「ジン……ジン……」
「ハハ、大丈夫ですよエクラ様。俺は元気ですから」

 体を起こし、エクラ様のざらついた肌を撫でるとまた俺の名を呼んでくれる。
 最近、エクラ様は人間味が増してきたような気がしている。
 見た目は変わらず真っ白な異形だが、声や仕草に少し感情が見えてきた気がする。
 まぁ、俺がそう願っているからかもしれないが。

「エクラ様……」
「ジン……ジン……ジン……」

 俺が抱き寄せると、エクラ様は嬉しそうに名を呼び顔をすり寄せてくる。
 エクラ様の顔に触れ、唇を頬に落とす。
 欲望を吐き散らしたばかりだというのに、俺の体ははしたなくエクラ様を求める。

「エクラ様……また、俺を愛してくれますか?」

 エクラ様の鋭い爪を鎖骨に突き立てると、じわりと血が滲み出す。
 すると、エクラ様の長い舌が俺の血を舐めとる。

「ん……」

 丁寧に舐め取られ、ピチャピチャと水音が響く。
 傷ついた皮膚はエクラ様の唾液により治癒されるが、代わりにズクリと下半身が疼く。

「エクラ……さま……。もっと……」

 爪先で胸や腹を傷つけ、エクラ様の舌先が俺の体を這う。
 敏感になった胸の尖りに舌が触れ、舐め上げられればビクリと体が跳ねる。
 
「ん、ぁ……そこ、きもち……」

 俺の言葉に大きく引き裂かれた口元がクンと上がる。
 エクラ様が喜んでくれている気がして、俺もヘラっと笑顔を向ける。

「エクラ様……キス、したい……」

 唇を噛み締め、じわりと鉄の味が口の中に広がる。
 エクラ様の舌が胸元から離れ、そして俺の口の中……。
 入ってきた舌先を絡ませながら、俺はエクラ様の体に昂った欲望を擦り付ける。

「ぁ、ん……すき、すき……エクラさま……」
「ジ……ン……」

 名を呼ばれ、小さく体が震え熱を解き放つ。
 大好きで、俺の世界のたった一つの希望を汚してしまったが申し訳ないと思う気持ちよりも、汚してしまったことに満足してしまう。
 汚れも知らぬ真っ白で何もかもが完璧だったエクラ様。
 けれど、今はその姿形はなく、俺だけしかエクラ様を愛してはいない。
 俺だけの……エクラ様。

「大好き……」
 
 頬や額に唇を落とし自分だけのモノなんだとエクラ様にマーキングする。
 今の世界は絶望しかないけれど、そのかわり俺たちを遮るものは何もない。
 歪んだ心を持っていたのはゲイル様だけではなかった……。
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