嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

赤牙

文字の大きさ
102 / 112
【番外編★現在更新中★】ジェイドとリエンのやり直し

ジェイドとリエンのやり直しの人生 〜嵐の夜に③〜

 呆然と座り込む私と兄さんの体に叩きつけられるような雨が襲いかかる。
 
「リエンを助けないと……」

 立ちあがろうとするが右足に激痛が走り、両腕を地面についたまま動けない。ぬかるんだ地面にぐっと指を押し付け不甲斐ない自分に苛立っていると、シャルル兄さんが手を差し伸べてくれる。

「ジェイド、まずはあそこの洞穴に避難しよう。この状態ではリエンを助けにいけない」
「……はい」

 兄さんの手を借りなんとか立ち上がり洞穴へと向かう。
 薄暗い洞穴の中に入ると、奥からひやりとする風が吹いてくる。雨に濡れた体が冷え、ぶるりと震えた。
 だが、雨に打たれないだけマシ、か……。
 リエンが消えた森の奥を見つめていると、兄さんが声をかけてくる。

「ジェイド、足は大丈夫か?」
「あ、はい。ひねった程度なので少し痛むだけです」

 強く痛むが兄さんに心配をかけたくなくて無理に笑顔をつくる。だが、兄さんにはお見通しのようで「そんなわけないだろ」と心配された。
 体が冷えないように濡れた服をぬぎ、絞った服を兄さんが岩場に干してくれる。
 小枝を拾い集め火を付け、手持ちのタオルで濡れた体を乾かせば幾分寒さはマシになった。
 一度目の時は、ここでシャルル兄さんの家族への思いや優しさに触れ、胸の奥に秘めていた兄さんへの思いが膨れ上がったのを思い出す。
 だが、今は私も兄さんもリエンの安否だけを心配し、じっと真っ暗闇の森の奥を見つめていた。
 
 — —助けにいかなければ……だが……

 疼きと熱をもつ役立たずの自分の右足に心の中で舌打ちしてしまう。今、私がリエンを助けに行くと言えばシャルル兄さんに心配をかけてしまうのは間違いない。
 リエンのことだから、どうにかして自分の身を守ることはできるだろう。ここは、嵐がおさまる朝まで様子を見る選択を選んだ方が賢明だろう。
 そう結論付けた時、シャルル兄さんが干していた服に腕を通していた。

「え、シャルル兄さん。服は、まだ乾いていないですよ?」
「あぁ、そうだな。でも、また濡れるからどうってことないさ」
「また……濡れる?」

 シャツとジャケットを着終えた兄さんは、最低限の荷物を持ち私の方へやってくる。

「ジェイド、ここで待っててくれないか」
「兄さん、リエンを探しにいくつもりですか!? こんな嵐の夜に探しに行くのは無謀です。シャルル兄さんも遭難や怪我をしてしまうかもしれないんですよ! リエンならば、きっと大丈夫です。嵐は朝には落ち着くはずですから、それを待ってからでも……」
「ジェイド、心配してくれてありがとう。でも、リエンはきっと俺のことを待ってるんだ。こんな嵐の中で一人ぼっちなんて……辛いだろ。それに、この森は俺にとって庭みたいなものだから、馬が逃げていきそうな場所の目処はあるからさ。必ず二人で戻ってくるから」

 シャルル兄さんはそう言うと、私の頭をポンポンと優しく撫で柔らかな笑顔を向ける。ただ、撫でられた指先から恐怖心を感じた。
 あの嵐を見て恐怖を感じない人間はいないだろう。それでも、兄さんはリエンのために……
 兄さんの服の裾をぐっと掴み、引き寄せる。
 両腕で兄さんを抱きしめた。

「すみません、兄さん。リエンをよろしくお願いします……」
「あぁ、任せてくれ。必ずリエンを見つけてくるから。そして、三人で家に帰ろう」

 兄さんの恐怖心を和らげようと抱きしめたはずなのに、気がつけばシャルル兄さんに強く抱きしめられていた。
 両腕から伝わる意志の強さと気持ちに胸が熱くなる。

 そして、シャルル兄さんは嵐の森の中を駆けていった。


感想 513

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話