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【番外編】二度目の人生 本編番外編
隣国、ミャーム国編 ⑨
それから俺たちは三人で穏やかな時間を過ごす。
湖を取り囲むように整備された遊歩道を、ノア王子を真ん中に手を繋ぎ散歩をする。
そして、立派なガゼボに到着すると、マエル国王が今日のために美味しいお菓子と紅茶を準備してくれていた。
ほろりと口の中でとろける焼き菓子に、目を丸くするとノア王子にクスクスと笑われる。
「不思議な食感ですよね。僕も初めて食べた時に、シャルル様と同じ顔をしてしまいました」
「これは驚かずにはいられないですね」
二人で笑い合っていると、マエル国王が焼き菓子を差し出してくる。
「シャルル殿、こちらも不思議の食感の焼き菓子なんですよ」
「そうなんですね」
差し出された焼き菓子に手を伸ばそうとすると、マエル国王がその焼き菓子をとり俺の口元に……。
え……? と、驚いた顔でマエル国王を見上げると、ニコリと微笑まれる。
———これは、このまま食べろということなのか?
ミャーム国の礼儀作法はあまり詳しくないが、差し出されたものを口で受け取るのは行儀が悪いのではないだろうか?
この場合は手で受け取った方がいいのだろうが、国王の指先は俺の口元のすぐそばにある。
チラチラと困った顔で視線を向けると、国王は自らの口を開き『あ~ん』と指示してくる。
恥ずかしさのあまり、ノア王子に助けを求めようと目線を送るとノア王子もお菓子をつまみ俺の方に差し出していた。
———ミャーム国の王室ではこれが普通なのだろうか……?
俺は困惑しながら、小さく口を開く。
すると、国王は俺の口に焼き菓子をいれ微笑む。
「どうですか?」
「おい……ひいです」
「シャルル様! 次はこちらのお菓子も食べて下さい!」
「え、あ、はい」
それから俺は、餌付けされる小鳥のように二人からおすすめのお菓子を食べさせられる。
二人の楽しそうな表情を見ていると断ることも出来ず、口の中は甘いお菓子でいっぱいになった。
その後、お昼は軽食で済ませ馬車に乗り次の目的地へ。ノア王子はお腹が満たされて眠くなったのか、ウトウトと頭を揺らす。
「ノア王子、少し休まれますか?」
「ん……はい、すみません」
眠そうに目を擦ると、ノア王子はそのまま俺の肩に頭をあずける。小さな寝息は可愛らしく、そっとノア王子の頭を撫でていると、マエル国王が話しかけてくる。
「シャルル殿は子どもの相手が上手なのですね」
「ノア王子と同じ歳くらいの子どもがいるからですかね」
「子ども……。シャルル殿は、まだご結婚されていないと聞きましたが?」
「私の子どもではなく、叔父の子どもを引き取っているんです。双子でとても可愛いんですよ」
「なるほど。そうでしたか」
マエル国王はニコリと柔らか微笑むと、ノア王子の頭を撫でる。
「レシスが亡くなってから、ノアはあまり笑わなくなりました。ですが、シャルル殿と過ごす時間がよほど楽しかったのでしょう。久しぶりにあんなにも笑っている姿を見ました。王太子として沢山の教育を受け、大人びた性格をしていますが、中身はまだ幼い子どもです。ノアには色々と我慢させてしまいました……」
マエル国王は視線を落とし、ノア王子の寝顔を見つめる。
その表情は子を思う一人の父親の顔だった。
「ノア王子は本当に立派なお方です。幼いながらに王太子としての自覚をもち、あんなに立派なスピーチまでできるんですから。きっと、マエル国王の背中を見て育たれたんでしょうね」
「そうだろうか……」
マエル国王は照れ臭そうに微笑むと、ノア王子を撫でていた俺の右手に手を重ねてくる。
「シャルル殿。今日はノアの願いを叶えてくれてありがとう。貴方には感謝してもしたりないくらいだ。この礼は、またちがう機会に」
「あ、えーっと……はい」
国王の圧に押されて頷くと、パッと明るい表情を浮かべた。
それから、次なる目的地へと到着する頃にはノア王子も目覚める。
次に辿り着いたのは小さな教会。
作りは小さいが中に入ると、美しいステンドグラスで教会内は優しい色に包まれていた。
「うわぁ……ここも素敵な場所ですね。とても綺麗です」
「ここも母様のお気に入りの場所でした。神様に祈りを捧げたり、嬉しいことがあれば感謝の言葉を伝えに来ていました。僕もよく通っているのですが、今日は神様にシャルル様と出会わせてくれてありがとうと伝えたかったんです。そして、シャルル様はこんなにも素敵な人ですよって紹介したくて……」
はにかむノア王子の瞳はステンドグラスの光を吸い込み、キラキラと輝く。
「ありがとうございます、王子。私も今日はノア王子とマエル国王と沢山の楽しい時間を過ごせたことを、神様にお伝えし感謝しなければいけませんね」
「では、私も同じくシャルル殿に出会えたことを感謝しなくてはな」
「エヘヘ。じゃあ、みんなでお祈りしましょう」
三人で並び神様に感謝の言葉を心の中で呟く。
そして、俺はノア王子とマエル国王がもっと笑顔になれるようにと願いを込めた。
————————————
近況ボードにもお知らせしましたが、嫌われ者の書籍化の書影が発表されました!
是非、美しき三兄弟の姿を見て下さい!
湖を取り囲むように整備された遊歩道を、ノア王子を真ん中に手を繋ぎ散歩をする。
そして、立派なガゼボに到着すると、マエル国王が今日のために美味しいお菓子と紅茶を準備してくれていた。
ほろりと口の中でとろける焼き菓子に、目を丸くするとノア王子にクスクスと笑われる。
「不思議な食感ですよね。僕も初めて食べた時に、シャルル様と同じ顔をしてしまいました」
「これは驚かずにはいられないですね」
二人で笑い合っていると、マエル国王が焼き菓子を差し出してくる。
「シャルル殿、こちらも不思議の食感の焼き菓子なんですよ」
「そうなんですね」
差し出された焼き菓子に手を伸ばそうとすると、マエル国王がその焼き菓子をとり俺の口元に……。
え……? と、驚いた顔でマエル国王を見上げると、ニコリと微笑まれる。
———これは、このまま食べろということなのか?
ミャーム国の礼儀作法はあまり詳しくないが、差し出されたものを口で受け取るのは行儀が悪いのではないだろうか?
この場合は手で受け取った方がいいのだろうが、国王の指先は俺の口元のすぐそばにある。
チラチラと困った顔で視線を向けると、国王は自らの口を開き『あ~ん』と指示してくる。
恥ずかしさのあまり、ノア王子に助けを求めようと目線を送るとノア王子もお菓子をつまみ俺の方に差し出していた。
———ミャーム国の王室ではこれが普通なのだろうか……?
俺は困惑しながら、小さく口を開く。
すると、国王は俺の口に焼き菓子をいれ微笑む。
「どうですか?」
「おい……ひいです」
「シャルル様! 次はこちらのお菓子も食べて下さい!」
「え、あ、はい」
それから俺は、餌付けされる小鳥のように二人からおすすめのお菓子を食べさせられる。
二人の楽しそうな表情を見ていると断ることも出来ず、口の中は甘いお菓子でいっぱいになった。
その後、お昼は軽食で済ませ馬車に乗り次の目的地へ。ノア王子はお腹が満たされて眠くなったのか、ウトウトと頭を揺らす。
「ノア王子、少し休まれますか?」
「ん……はい、すみません」
眠そうに目を擦ると、ノア王子はそのまま俺の肩に頭をあずける。小さな寝息は可愛らしく、そっとノア王子の頭を撫でていると、マエル国王が話しかけてくる。
「シャルル殿は子どもの相手が上手なのですね」
「ノア王子と同じ歳くらいの子どもがいるからですかね」
「子ども……。シャルル殿は、まだご結婚されていないと聞きましたが?」
「私の子どもではなく、叔父の子どもを引き取っているんです。双子でとても可愛いんですよ」
「なるほど。そうでしたか」
マエル国王はニコリと柔らか微笑むと、ノア王子の頭を撫でる。
「レシスが亡くなってから、ノアはあまり笑わなくなりました。ですが、シャルル殿と過ごす時間がよほど楽しかったのでしょう。久しぶりにあんなにも笑っている姿を見ました。王太子として沢山の教育を受け、大人びた性格をしていますが、中身はまだ幼い子どもです。ノアには色々と我慢させてしまいました……」
マエル国王は視線を落とし、ノア王子の寝顔を見つめる。
その表情は子を思う一人の父親の顔だった。
「ノア王子は本当に立派なお方です。幼いながらに王太子としての自覚をもち、あんなに立派なスピーチまでできるんですから。きっと、マエル国王の背中を見て育たれたんでしょうね」
「そうだろうか……」
マエル国王は照れ臭そうに微笑むと、ノア王子を撫でていた俺の右手に手を重ねてくる。
「シャルル殿。今日はノアの願いを叶えてくれてありがとう。貴方には感謝してもしたりないくらいだ。この礼は、またちがう機会に」
「あ、えーっと……はい」
国王の圧に押されて頷くと、パッと明るい表情を浮かべた。
それから、次なる目的地へと到着する頃にはノア王子も目覚める。
次に辿り着いたのは小さな教会。
作りは小さいが中に入ると、美しいステンドグラスで教会内は優しい色に包まれていた。
「うわぁ……ここも素敵な場所ですね。とても綺麗です」
「ここも母様のお気に入りの場所でした。神様に祈りを捧げたり、嬉しいことがあれば感謝の言葉を伝えに来ていました。僕もよく通っているのですが、今日は神様にシャルル様と出会わせてくれてありがとうと伝えたかったんです。そして、シャルル様はこんなにも素敵な人ですよって紹介したくて……」
はにかむノア王子の瞳はステンドグラスの光を吸い込み、キラキラと輝く。
「ありがとうございます、王子。私も今日はノア王子とマエル国王と沢山の楽しい時間を過ごせたことを、神様にお伝えし感謝しなければいけませんね」
「では、私も同じくシャルル殿に出会えたことを感謝しなくてはな」
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三人で並び神様に感謝の言葉を心の中で呟く。
そして、俺はノア王子とマエル国王がもっと笑顔になれるようにと願いを込めた。
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