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四話
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それからハヤトは、幼い頃に戻ったように俺のそばにひっついてくるようになった。
いつの間にか、俺の家に居座るようになり必然的に一緒に過ごす時間が増えてくる。
一緒に飯を食って、一緒にテレビを見て笑い、一緒の布団で眠りにつく日々。
ハヤトは毎日俺に笑顔をくれる。
その笑顔が嬉しくてたまらないのに……俺は心の底から喜べないでいた。
ーー俺なんかでいいんだろうか。
俺と番いたいと言ってくれたあの晩。
ずっと欲していた番が現れたはずなのに、ハヤトに対して抱く気持ちは申し訳ないとか、俺なんかにはもったいないという気持ちが先行した。
ハヤトはまだ高校二年。
これから沢山の人と出会い、恋をして、色んな経験を積んでいく。
そんなハヤトと番っていいのだろうか?
そう思うと、途端に自分の存在がみすぼらしく感じた。
平凡でオメガにすら見えない自分にハヤトが好意を寄せてくれる理由すらも分からない。
ただ、アパートの隣同士だっただけなのに……
仕事中も頭の中はハヤトのことばかりで、上の空。
憂鬱さにため息を吐きながら仕事を終えてアパートに辿り着くと、階段前が何やら騒がしかった。
わいわいと若い声が聞こえてくる。
数人の学生がいて、その中心に明るい茶色の髪が見える。
ハヤトだと気づいたと同時に、ハヤトも俺に気付き屈託のない笑顔を向けてくる。
「レン!」
ニカッと八重歯を見せながら名前を呼ばれると、嬉しくて心臓が跳ねた。
だが、そんな嬉しさをかき消すようにハヤトの周りにいた女の子からは怪訝な視線が突き刺す。
「ねぇ、ハヤト。あれ、誰?」
俺を見て不審者でも見るように見下す視線。
容姿やその態度から、その子はアルファなんだと悟った。
ハヤトは照れた様子でその子に俺について語り始める。
「先輩、あの人はオレの恋……」
「ただの隣人です!」
ハヤトの言葉をかき消すように大声をあげると、皆が呆気にとられた顔をしていた。
なんだか情けなくなって「すみません、通ります」と言って顔を伏せて脇をすり抜けていく。
階段を駆け上がると心臓がぎゅっと締め付けられ、痛み苦しくなった。
ハヤトたちは何もなかったかのように、また楽しげに雑談を始めた。
次の休みにどこか遊びに行こうだとか、大学はどこにするのかだとか、恋の話も。
耳に入ってくる明るい声や話題に、引け目を感じた。
俺にはないものをハヤトは沢山持っている。
アルファとしての輝かしい未来。
いい仲間に囲まれて、きっと俺なんかよりも素敵なアルファやオメガと出会うはずだ。
ハヤトの隣に立つ自分にずっと自信が持てなかったけれど、やっと気持ちが固まった気がした。
「……俺にはもう似合いの人がいるもんな」
スマホを取り出すと『九条』と書かれた連絡先にメッセージを飛ばした。
いつの間にか、俺の家に居座るようになり必然的に一緒に過ごす時間が増えてくる。
一緒に飯を食って、一緒にテレビを見て笑い、一緒の布団で眠りにつく日々。
ハヤトは毎日俺に笑顔をくれる。
その笑顔が嬉しくてたまらないのに……俺は心の底から喜べないでいた。
ーー俺なんかでいいんだろうか。
俺と番いたいと言ってくれたあの晩。
ずっと欲していた番が現れたはずなのに、ハヤトに対して抱く気持ちは申し訳ないとか、俺なんかにはもったいないという気持ちが先行した。
ハヤトはまだ高校二年。
これから沢山の人と出会い、恋をして、色んな経験を積んでいく。
そんなハヤトと番っていいのだろうか?
そう思うと、途端に自分の存在がみすぼらしく感じた。
平凡でオメガにすら見えない自分にハヤトが好意を寄せてくれる理由すらも分からない。
ただ、アパートの隣同士だっただけなのに……
仕事中も頭の中はハヤトのことばかりで、上の空。
憂鬱さにため息を吐きながら仕事を終えてアパートに辿り着くと、階段前が何やら騒がしかった。
わいわいと若い声が聞こえてくる。
数人の学生がいて、その中心に明るい茶色の髪が見える。
ハヤトだと気づいたと同時に、ハヤトも俺に気付き屈託のない笑顔を向けてくる。
「レン!」
ニカッと八重歯を見せながら名前を呼ばれると、嬉しくて心臓が跳ねた。
だが、そんな嬉しさをかき消すようにハヤトの周りにいた女の子からは怪訝な視線が突き刺す。
「ねぇ、ハヤト。あれ、誰?」
俺を見て不審者でも見るように見下す視線。
容姿やその態度から、その子はアルファなんだと悟った。
ハヤトは照れた様子でその子に俺について語り始める。
「先輩、あの人はオレの恋……」
「ただの隣人です!」
ハヤトの言葉をかき消すように大声をあげると、皆が呆気にとられた顔をしていた。
なんだか情けなくなって「すみません、通ります」と言って顔を伏せて脇をすり抜けていく。
階段を駆け上がると心臓がぎゅっと締め付けられ、痛み苦しくなった。
ハヤトたちは何もなかったかのように、また楽しげに雑談を始めた。
次の休みにどこか遊びに行こうだとか、大学はどこにするのかだとか、恋の話も。
耳に入ってくる明るい声や話題に、引け目を感じた。
俺にはないものをハヤトは沢山持っている。
アルファとしての輝かしい未来。
いい仲間に囲まれて、きっと俺なんかよりも素敵なアルファやオメガと出会うはずだ。
ハヤトの隣に立つ自分にずっと自信が持てなかったけれど、やっと気持ちが固まった気がした。
「……俺にはもう似合いの人がいるもんな」
スマホを取り出すと『九条』と書かれた連絡先にメッセージを飛ばした。
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