美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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146話:一方その頃イケメン達は… ⑦ 〜ディランSide〜

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「カオルに選ばせるだと……?」
「はい。僕のいる国では恋愛は自由です。学歴も身分も関係なく愛し合った者達が結ばれます。王子の婚約者だとしても……愛し合う者同士を引き裂くのはいかがなものかと……」

クリストファーはサリュイの挑発に苛立ちを隠せず、表情は怒りに満ちている。
確かに隣国のルーニア国は恋愛は自由だが……それをこの国の王子であるクリストファーにも押しつけてくるとは……。

「とりあえず……カオルに合わせていただけますかサリュイ殿。話はそれからです」

私が二人の間に入り話を進めていく。
サリュイは私の言葉に頷くと、カオルのいる部屋へ私達を案内する。

サリュイのどこか余裕のある態度……もしかしたらカオルはまた洗脳されているかもしれない……。
そう思うと目の前にいる白い悪魔を今すぐにでも消してしまいたくなるが……カオルを保護する事が先決だ。
全てはカオルを救い出してからだ……。


サリュイの後をついて行き、しばらく進むと奥の部屋に到着する。サリュイが部屋に向かって声をかけると、カオルの明るい声が聞こえてくる。
その声を聞いただけで今すぐにでも駆け寄りたくなるがグッと我慢する。
部屋の扉が開かれると……目の前にカオルの姿が……。


「カオル……! カオル……カオル……」

カオルを見つけた瞬間、クリストファーは待ちきれずにカオルの方へと駆け寄り強く抱きしめる。

………しかし、カオルは驚き不安な表情を浮かべ始める。
そして、信じられない言葉をクリストファーに投げかける。

「あのぉ……貴方は一体誰ですか?」

その言葉に私もクリストファーも耳を疑った。

「カオル……? 私の事が……分からないのか……?」
「はい……」

カオルの不安気な表情を見ても脅されて嘘を言っているようには思えない。
本当に私達の事が分からないようだ……。

クリストファーはサリュイが洗脳をかけたと訴えるが、サリュイは薄ら笑いを浮かべながら否定する。
サリュイの態度を見てもカオルに洗脳をかけているの可能性は非常に高い。

無理矢理に引き離す事も可能だが……洗脳済みのカオルにしてみれば、主人であるサリュイと自分を引き離す私達の存在は疎ましいものだ。
前回の洗脳の時でさえカオルは私から離れるのを嫌がり悲しんでいた……。そんな状態のカオルに嫌がる事をすれば最悪の場合はカオルに嫌われてしまう……。

頭の中で最悪のパターンがぐるぐると巡り、想像しただけで胸が締め付けられる……。
カオルに嫌われるのは嫌だ……。
だからといって、サリュイに連れて行かれるのは……。

サリュイとクリストファーは、カオルを間に挟みずっと睨み合いを続け、カオルは終始困った表情で二人をチラチラと見ては時折私にも視線を向けてくる。
知らない人物を目の前に、助けを求めてもいいのか戸惑うような表情や態度……。
いつも私に向けてくれる優しく可愛らしい笑顔はそこにはない……。

「カオル……。本当にクリストファーの事も、私の事も分からないのか?」

私が声をかけるとカオルは少し驚いた表情を浮かべこちらを凝視してくる。
先程とは違う態度を見せるカオルにもう一度名前を呼ぶと小さく口を動かす。

「ディ……ラン……さん….」

ポツリと呟くように私の名前を呼ばれたかと思うと、カオルの表情がパッと明るくなり……

「ディランさんっっ!!」

「「「———ッ!?」」」

カオルの大声に驚いたクリストファーは腕を緩め、その隙にカオルはこちらへと駆け寄り……私を抱きしめてくる。
さっきまでの態度とは一変……どころか、この状態は以前の洗脳されたカオルではないか!
狼狽える私を他所にカオルは私の胸に埋めていた顔を上げ、幸せそうな表情を浮かべる。
そして……爆弾発言も……

「ディランさん。俺がいない間寂しかったですよね? 早くお家に帰ってエッチしましょ♡」
「なっ!? カ、カオル……どうしてまた洗脳状態に……」
「洗脳……? 叔父上……。これは一体どういう事ですか……?」
「まさか……カオルが僕以外にも洗脳されてたなんて……」
「サリュイ殿……。今なんと……?」

サリュイから漏れた『洗脳』という言葉……。
やはりサリュイはカオルを洗脳していたようだが……何故、昔の洗脳状態に戻ってしまったのだろうか……。

「ディランさん。今日のプレイはこの人達と4Pですか? 久しぶりだからディランさんとラブラブエッチがよかったんですけどぉ……ディランさんのお願いなら俺は全然大丈夫ですよ♡」
「カ、カオル……。頼む……少し口を閉じようか……」
「えぇぇぇ……。は~い……」

エッチがしたいと騒ぐカオルを宥めていると、突き刺さるような二つの視線……。
そちらへと顔を向ければサリュイは困惑した表情を浮かべ、クリストファーはどこか軽蔑したような態度を見せている。

「叔父上……これは一体どういう事なのか説明を」
「……カオルは以前、洗脳によって自分が性奴隷になったと思い込まされた時があったんだ」
「なっ!? 誰がそんな非道な事を……」
「サンクチュアリの連中だ……。カオルに目をつけていてな……助けに行った時にはすでに洗脳が完了してしまっていたんだ。洗脳状態のカオルを放っておけず、主人を求めるカオルの要求を満たす為に一時的に私が主人だと名乗ったんだが、その時の洗脳はすでに解けたと思っていたんだが……何故またこの状態になったのかは分からない」

ピッタリと私の腰にしがみつくカオルはクリストファーとサリュイに対して警戒心剥き出しだ。

「サリュイ殿……カオルにかけた洗脳魔法について説明してもらえないか?」
「……………。」
「サリュイ殿はカオルがこのままでもいいのか? こんな状態を繰り返していればいずれカオルの心が壊れてしまうぞ」

サリュイはそんなカオルの様子を見て今にも泣き出しそうな表情を浮かべ……噛み締めていた唇をゆっくりと開いた。
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