やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

家に帰りたい

 遭難したら山の頂上を目指しましょう……とは書いてあったけど、どこが頂上へ行く道なのかもサッパリ判らない!

中学二年生に山を熟知しろなんて土台無理な話なんだよ?

キャンプのしおりを書いた先生は、もう少し詳しく書いとくべきだよ!

 いやまぁ、多分、遭難する様なおバカな子が居るなんて先生達は思っても居ないだろうし、私もまさか自分が遭難するとは思ってなかったよ……
今頃、先生や班の子とかが大騒ぎしている頃かもしれない。

「ハァー……せめてスマートフォンさえあればなぁ……」

 キャンプ中にスマートフォンをいじるのは駄目だと先生達に取り上げられたから、私の手元には連絡手段が無い。

スマートフォンをいじれるのは、夜、親に「おやすみなさい」の連絡を入れる時のみで、直ぐに先生に回収されてしまうという話だった。

 先生に中身を見られたくないから、指紋認証スマートフォンな上に暗証番号も誕生日とかにはしなかった。
お母さんくらいにしかわからない、私の生まれた時の体重2635gを暗唱番号にしたのだ。
もしこのまま、私が遭難して死んだら……スマートフォンの中身はお母さんだけが見れるだろう。
特に見られて困る物はないけど、まぁプライバシーなので、お母さん以外には見てほしくないっていうのもある。

「あっ、でも私が見付からないからって、誰かに攫われたとか変な話にならないと良いなぁ」

 行方不明だからって、人に攫われて大人しくするような私ではないのは皆知っているだろうし。
そう、ただただ単純に遭難した間抜けな子が私なので、警察も先生も変な方向へ考えないで欲しい。

 探すのは山ですよ山!

「山って、言っても、ここ本当に山なのか疑わしいけどね」

 どう見ても、明らかにキャンプ場にあった木々とは異なる形の木々だし、何度か見かけたゲキョゲキョ鳴く鳥以外の鳥も、やたらと目に痛いカラフルな色をしていた。

ちなみにゲキョゲキョ鳴く鳥は今も私の頭上の木の上でついて回っている。


 山頂を目指したいのに、平坦なジャングル地帯で上があるのかすら疑わしい。
辺りも少しずつ陽が落ち始めて、茜色の空模様になっていた。

これは本格的に野宿かもしれない。

 私は基本、元気でハチャメチャなところがあるとは言われていても、現代っ子である。

山なんて小学校の遠足で日帰りで行ったり、家族旅行先でほんの少し立ち寄る山の中にあるサービスエリアのトイレ休憩くらいしかない。

 野宿なんかしたことも無ければ、山で寝泊まりするのも今回のキャンプが初めてだったのだ。

 お腹の音はいつの間にか諦めてしまったのか鳴らなくなったけど、喉の渇きは少しずつ、何でもいいから口に入れたいと、生唾を飲み込むようになっていた。

 水……水が欲しい。

こんな事なら、草刈り前にサバちゃんに「水分補給してからしなさいよ」という忠告を、聞いておけばよかった。

「あ……そういえば」

 リュックサックを漁るとプラスチックのコップとお皿に、キッチンペーパーに包まれたステンレス製のスプーンとフォークが入っていた。

 山を汚さない為に使い捨てのコップやお皿ではなく、割れないプラスチック製の物を持ってくるように言われて、着替えの下に詰め込んでいたのだ。

 本当なら今頃、このコップには先生たちが用意した麦茶が入り、お皿には班の子達が作った美味しいカレーライスが乗っていたはずなのだ。

「私、何で、こんな場所にいるんだろう……」

 鼻の奥がツンと痛くなって、目から涙がポロポロと溢れ出した。

 家に帰って、お母さんの作ったカレーライスが食べたい。玄関を開けたら「おかえり」と尻尾を振って、私の帰りを歓迎してくれるミックス犬の柴犬っぽい顔の耳が垂れたボン助を抱きしめて、リビングのソファの上でゴロゴロと遊んで、お父さんに「李都、行儀が悪いぞ」と困った顔で言われたい。

「家に、帰りたい~……」

 泣き出した私の頭上でゲキョキョキョと、また鳥が小馬鹿にするように鳴いた。
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