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2章
牛肉
テントが設営し終わり、白い布式のモンゴルの遊牧民っぽいゲルに似たテントで、中柱二本を中心に作られた物がイクシオンと私の周りに六つほど作られて、一つのテントに六、七人が入って使うらしい。
私とイクシオンのテントは二人だけで使うみたいで、それはそれで恥ずかしいけど、嫁入り前なので男性複数人と雑魚寝は少しご遠慮したかったから、それはそれで助かったかな?
イクシオンとは小屋とかで一緒に寝てたし、婚約者だからギリギリセーフかな?
それに、ボン助も居るしね。
パチパチと爆ぜる焚火の周りで食事の準備が進んでいて、ブモオォォ~ッ! と、悲鳴を上げている大きな牛が倒される解体ショーをボン助を抱きしめて見ていた。
「ワウッ!」
「ボン助、ボン助のご飯の為に凄いことになっちゃったね……」
もう帰るまで数日となっていた為に、食材がそんなに残っていなかったのもあって、干し肉とか味の濃い乾物系しか残っていなかった為に、「ボン助には食べれないね……どうしようかなぁ……」と言ったら、イクシオンが「この付近なら牛が生息してるな」と言い、部下の人達も元気に「よっしゃー! 肉だー!」と狩りに行き……牛がドナドナされてきたのだ。
牛には申し訳ないけど、焼ける牛の匂いはとても食欲をそそる香りで、ボン助の口からヨダレがぽたぽた垂れ始めている。
ボン助や、きっとボン助が食べたお肉の中で一番ジューシーかもしれないけど、ここは異世界。きっとボン助の好きなオヤツとかドックフードは無いんだよ?
「ボン助、お父さん達心配してるよ?」
「ワンッ!」
尾っぽをパタパタ振って、もう牛の匂いにしか頭がいってなさそうなボン助に、私は少々苦笑いしてしまう。でも、置いて行ってしまうのも、少しだけ寂しかったのもあって、ボン助がここで上手く生きていけるのかも不安だけど、ついてきてくれた事に嬉しくも思う。
「ボンスケに味付け無しの肉を持ってきたが、細かく切った方が良いか?」
「ありがとうイクス。細かくは私が切るよ。切れ味のいいナイフは持って来てるから」
イクシオンが木のお皿に持ってきてくれたのは、箱ティッシュくらいの大きさのステーキで、ボン助には少し大きすぎるかも? これはあと三日は旅路があるから三日分に切り分けよう。
ナイフでサイコロ状に切り取って、冷ましながら「早く寄越せ!」と騒ぐボン助を足に挟んでいた。
「リトの分も持ってきた」
「ありがとう。でも、私は食べてからこっちに来たから、お肉もう少し小さくてもいいよ?」
差し出された串焼きの牛肉は、拳大だったから半分程の小ささにしてもらって、串焼きにかぶりついた。
あーっ、ジューシーだわ。んまーっ。
さっき食べたフランス料理は、高級すぎて味が美味しいのか何なのか庶民には分からなかったよ。
あれは雰囲気で食べる物だね。私にはこういう、サバイバル食の方が似合うわ~。
「ワンッ!」
「ボン助、これはお姉ちゃんの分。ボン助はそっちのサイコロステーキだよ。この、贅沢ものめ」
「リト……」
「ん? どうかしたのイクス?」
「リトが、隣りに居る……」
イクシオンが目を細めて微笑んで、じーっと私の方を見てきて少し食べづらい。
乙女の顔に風穴でも開ける気かな? でも、やっぱりイクシオン恰好いいなぁ……少し疲れている顔をしてるから、早くお屋敷に返して休養を取らせないと、倒れちゃいそう。
「イクス、ちゃんとご飯食べてる?」
「今は、胸がいっぱいで腹は空いてない」
「……ダーメ。ちゃんと食べる! いっぱい食べてちゃんと寝て、明日また出発するんでしょ? ほら、食べる!」
ズイッと一口齧った串焼きをイクシオンに差し出して、「あっ、新しいのにする」と言ったところで、串焼きお肉はイクシオンの口にモグモグされていた。
行儀が悪かったかと思ったけど、「んっ、美味しいな」とイクシオンが言って、また微笑むから一気に頬が赤くなって胸がドキドキする~っ!!
心臓に悪いッ!
「おっ、イクシオンようやく食ったか。お前、最近ずっと食ってないわ、寝てねぇわで皆心配してたんだから、食ったら寝ろよ?」
「うるさいガリュウ。食ってたさ」
「干し肉一切れ齧るだけのを食事って言わねぇんだよ」
「イクス、ちゃんとご飯は食べなきゃ駄目だよ! 帰ったらいっぱいご飯作るからね! 私色々覚えて来たから、前よりも美味しいの食べさせるからね!」
ガリュウさんと私がイクシオンに迫ると、イクシオンが「ああ、ちゃんと食べる」と頷いて、部下の人達がスープも持ってきて、イクシオンは大人しく食べていた。
「にしても、少し見ない間に、背、伸びたか?」
「あんまり伸びてないんですよ? 五センチ伸びただけ……」
ガリュウさんに指で五センチと親指と人差し指で示すと、「成長期だなぁ」と、言われた。
ああ、そうかここでは三ヶ月しか経ってないから、三ヶ月で五センチは凄いよね。うん。
「ガリュウさん、大型魔獣の討伐はどうだったんですか?」
「交戦してトドメって時に、白い光が溢れて気付いたら、魔獣は倒れてるし、イクシオンはお前の気配が消えたって騒いでるしで、魔獣よりイクシオンを止める方が大変だった」
「あー……そうなんですか。面目ない。それで、玉みたいな物は魔獣から出ましたか?」
「ああ。よく玉だってわかったな」
「私の方で出た物と対になってて、玉の場所に私は出る事になっていたから、ここに出ちゃったので、持ってるかな? って、思ったんです」
「なんだそりゃ? 移動魔法か何かの魔法の武器なのか?」
「武器じゃないんです。移動の魔法なのは確かだけど、出来れば、玉を譲って欲しいのですが、駄目ですか?」
「おい。イクシオン、リトが玉が欲しいんだってよ」
横で食べていたイクシオンにガリュウさんが言うと、イクシオンが立ち上がって獣騎にくくり付けてある袋から白く濁った玉を取り出して、私に手渡した。
「おそらく、今回も褒賞でこれは貰えると思うが、まだ実物を兄には見せていない。何か似た物とすり替えておくか」
「おいおい。それ大丈夫なのかよ?」
「どうせ貰える物なら、今のうちにすり替えておいても、問題ないだろ?」
あー、何か聞いてはいけない悪だくみにも聞こえなくもないけど、王様の所に場所固定されるより、本とセットにして好きに移動出来るようにした方がマシかな?
「ではでは、私が有り難く貰っちゃいます」
リュックサックの中に入れていた黄金の本に玉をはめ込んで、サッサと仕舞い込んだ。
ガリュウさんが手を伸ばしていたけど、リュックサックの上にボン助が乗って、座布団にしてしまったので、手を引っ込めていた。
ボン助、私の荷物を見張っているつもりらしくて、手を出すと「ガルルル」と歯をカチカチ言わせて怒るから、怖いみたい。
獣人の国には普通の犬って居ないようで、純粋に犬を見るのは皆初めてなんだそうだ。
犬獣人の人は「へぇーすげぇー犬だー」と言ってたぐらいだ。
食事が終わってテントに入ると、寝袋を置かれていて、イクシオンと一緒に寝袋の上で横になると、ボン助が間に割り込んできた。
あくまで邪魔をする気らしい……お父さんの刺客かな? と、少し思わないでもない。
「おやすみ、リト」
「おやすみなさい。イクス」
軽く押し当てる様なキスをおでこにされて、目を閉じるとボン助におでこをべろべろに舐められた……
ボン助、牛肉臭い……そんな事を思いつつ、少し笑ってそのままボン助を抱いて寝た。
私とイクシオンのテントは二人だけで使うみたいで、それはそれで恥ずかしいけど、嫁入り前なので男性複数人と雑魚寝は少しご遠慮したかったから、それはそれで助かったかな?
イクシオンとは小屋とかで一緒に寝てたし、婚約者だからギリギリセーフかな?
それに、ボン助も居るしね。
パチパチと爆ぜる焚火の周りで食事の準備が進んでいて、ブモオォォ~ッ! と、悲鳴を上げている大きな牛が倒される解体ショーをボン助を抱きしめて見ていた。
「ワウッ!」
「ボン助、ボン助のご飯の為に凄いことになっちゃったね……」
もう帰るまで数日となっていた為に、食材がそんなに残っていなかったのもあって、干し肉とか味の濃い乾物系しか残っていなかった為に、「ボン助には食べれないね……どうしようかなぁ……」と言ったら、イクシオンが「この付近なら牛が生息してるな」と言い、部下の人達も元気に「よっしゃー! 肉だー!」と狩りに行き……牛がドナドナされてきたのだ。
牛には申し訳ないけど、焼ける牛の匂いはとても食欲をそそる香りで、ボン助の口からヨダレがぽたぽた垂れ始めている。
ボン助や、きっとボン助が食べたお肉の中で一番ジューシーかもしれないけど、ここは異世界。きっとボン助の好きなオヤツとかドックフードは無いんだよ?
「ボン助、お父さん達心配してるよ?」
「ワンッ!」
尾っぽをパタパタ振って、もう牛の匂いにしか頭がいってなさそうなボン助に、私は少々苦笑いしてしまう。でも、置いて行ってしまうのも、少しだけ寂しかったのもあって、ボン助がここで上手く生きていけるのかも不安だけど、ついてきてくれた事に嬉しくも思う。
「ボンスケに味付け無しの肉を持ってきたが、細かく切った方が良いか?」
「ありがとうイクス。細かくは私が切るよ。切れ味のいいナイフは持って来てるから」
イクシオンが木のお皿に持ってきてくれたのは、箱ティッシュくらいの大きさのステーキで、ボン助には少し大きすぎるかも? これはあと三日は旅路があるから三日分に切り分けよう。
ナイフでサイコロ状に切り取って、冷ましながら「早く寄越せ!」と騒ぐボン助を足に挟んでいた。
「リトの分も持ってきた」
「ありがとう。でも、私は食べてからこっちに来たから、お肉もう少し小さくてもいいよ?」
差し出された串焼きの牛肉は、拳大だったから半分程の小ささにしてもらって、串焼きにかぶりついた。
あーっ、ジューシーだわ。んまーっ。
さっき食べたフランス料理は、高級すぎて味が美味しいのか何なのか庶民には分からなかったよ。
あれは雰囲気で食べる物だね。私にはこういう、サバイバル食の方が似合うわ~。
「ワンッ!」
「ボン助、これはお姉ちゃんの分。ボン助はそっちのサイコロステーキだよ。この、贅沢ものめ」
「リト……」
「ん? どうかしたのイクス?」
「リトが、隣りに居る……」
イクシオンが目を細めて微笑んで、じーっと私の方を見てきて少し食べづらい。
乙女の顔に風穴でも開ける気かな? でも、やっぱりイクシオン恰好いいなぁ……少し疲れている顔をしてるから、早くお屋敷に返して休養を取らせないと、倒れちゃいそう。
「イクス、ちゃんとご飯食べてる?」
「今は、胸がいっぱいで腹は空いてない」
「……ダーメ。ちゃんと食べる! いっぱい食べてちゃんと寝て、明日また出発するんでしょ? ほら、食べる!」
ズイッと一口齧った串焼きをイクシオンに差し出して、「あっ、新しいのにする」と言ったところで、串焼きお肉はイクシオンの口にモグモグされていた。
行儀が悪かったかと思ったけど、「んっ、美味しいな」とイクシオンが言って、また微笑むから一気に頬が赤くなって胸がドキドキする~っ!!
心臓に悪いッ!
「おっ、イクシオンようやく食ったか。お前、最近ずっと食ってないわ、寝てねぇわで皆心配してたんだから、食ったら寝ろよ?」
「うるさいガリュウ。食ってたさ」
「干し肉一切れ齧るだけのを食事って言わねぇんだよ」
「イクス、ちゃんとご飯は食べなきゃ駄目だよ! 帰ったらいっぱいご飯作るからね! 私色々覚えて来たから、前よりも美味しいの食べさせるからね!」
ガリュウさんと私がイクシオンに迫ると、イクシオンが「ああ、ちゃんと食べる」と頷いて、部下の人達がスープも持ってきて、イクシオンは大人しく食べていた。
「にしても、少し見ない間に、背、伸びたか?」
「あんまり伸びてないんですよ? 五センチ伸びただけ……」
ガリュウさんに指で五センチと親指と人差し指で示すと、「成長期だなぁ」と、言われた。
ああ、そうかここでは三ヶ月しか経ってないから、三ヶ月で五センチは凄いよね。うん。
「ガリュウさん、大型魔獣の討伐はどうだったんですか?」
「交戦してトドメって時に、白い光が溢れて気付いたら、魔獣は倒れてるし、イクシオンはお前の気配が消えたって騒いでるしで、魔獣よりイクシオンを止める方が大変だった」
「あー……そうなんですか。面目ない。それで、玉みたいな物は魔獣から出ましたか?」
「ああ。よく玉だってわかったな」
「私の方で出た物と対になってて、玉の場所に私は出る事になっていたから、ここに出ちゃったので、持ってるかな? って、思ったんです」
「なんだそりゃ? 移動魔法か何かの魔法の武器なのか?」
「武器じゃないんです。移動の魔法なのは確かだけど、出来れば、玉を譲って欲しいのですが、駄目ですか?」
「おい。イクシオン、リトが玉が欲しいんだってよ」
横で食べていたイクシオンにガリュウさんが言うと、イクシオンが立ち上がって獣騎にくくり付けてある袋から白く濁った玉を取り出して、私に手渡した。
「おそらく、今回も褒賞でこれは貰えると思うが、まだ実物を兄には見せていない。何か似た物とすり替えておくか」
「おいおい。それ大丈夫なのかよ?」
「どうせ貰える物なら、今のうちにすり替えておいても、問題ないだろ?」
あー、何か聞いてはいけない悪だくみにも聞こえなくもないけど、王様の所に場所固定されるより、本とセットにして好きに移動出来るようにした方がマシかな?
「ではでは、私が有り難く貰っちゃいます」
リュックサックの中に入れていた黄金の本に玉をはめ込んで、サッサと仕舞い込んだ。
ガリュウさんが手を伸ばしていたけど、リュックサックの上にボン助が乗って、座布団にしてしまったので、手を引っ込めていた。
ボン助、私の荷物を見張っているつもりらしくて、手を出すと「ガルルル」と歯をカチカチ言わせて怒るから、怖いみたい。
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犬獣人の人は「へぇーすげぇー犬だー」と言ってたぐらいだ。
食事が終わってテントに入ると、寝袋を置かれていて、イクシオンと一緒に寝袋の上で横になると、ボン助が間に割り込んできた。
あくまで邪魔をする気らしい……お父さんの刺客かな? と、少し思わないでもない。
「おやすみ、リト」
「おやすみなさい。イクス」
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