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2章
お風呂場ハプニング
ヴァンハロー領のイクシオンのお屋敷に着いた途端、デンちゃんは疲れたーと、体を縮めて私に抱っこをせがむように後ろ足で立って、私の足に手を伸ばす。
ボン助をリュックサックから出して地面に置くと、代わりにデンちゃんを抱き上げた。
「ワフーン」
「デンちゃん、お水を貰おうね。ボン助もお水貰おうね」
「ワンッ!」
イクシオンがお屋敷の扉を開けると、執事のアンゾロさんとメイド長のアーデルカさんが揃って出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。イクシオン殿下。リト様、心配しておりました」
「お帰りなさいませ。イクシオン殿下、リト様、直ぐにくつろげるように用意致しますので、少々お待ちください」
「ただいま。オレはまずは風呂に入りたい。風呂の準備から頼む」
「私は、デンちゃんとボン助にお水を貰いたいので、厨房に行って良いですか?」
「リト様、デンにはお部屋を用意していますので、そちらの方へ案内します」
「イクシオン殿下、直ぐにご用意致します」
アンゾロさんがイクシオンを案内して、私はアーデルカさんに連れられて一階の客間だった部屋が大きな丸いクッションと、止まり木に餌箱などがある事から、デンちゃんとゲッちゃんのお部屋を作ってくれたらしい。
「うわぁ……お部屋を作ってくれたんですか?」
「はい。そちらの……ボンスケ? のお部屋もここでよろしいですか?」
流石にここの人にはボン助は言いづらいらしい。
ボン助は足元で「へっへっ」と甘えてて、デンちゃんは少しぐったり気味だ。
ゲッちゃんは肩に乗ったまま眠そうな目をして、うつらうつら船をこいでいる。
「ボン助、ここがボン助の新しいお部屋だよ。ここでも良い?」
「ワン?」
首を傾げるボン助にアーデルカさんが「扉は自由に出入る出来るようになっております」と、犬用の出入り口が小さく作ってあることを教えてくれた。
アーデルカさんに水をお皿に貰って、デンちゃんとボン助に水を飲ませて、ゲッちゃんを止まり木で寝かせると、アーデルカさんに連れられて、大浴場に連れて行かれた。
大浴場の鏡で見たら、私の髪の毛ぐしゃぐしゃで、確かにこれはお風呂に突っ込みたくもなるかも?
流石に十七の乙女なので、もう体を洗うのも一人でさせて貰いたい……と、思っていたら、メイドの人達は今出払っていて、戻りは夕方になるのだそうだ。
「イクシオン殿下がお戻りになるのは、もう少し後だと思っていた為に、申し訳ありません」
「いえいえ。お風呂ぐらいは一人で入れますから、大丈夫ですよ。それより、ボン助はここ初めてなので、見ていて下さると有り難いです」
「畏まりました。着替えとタオルはここにご用意させていただきますね」
「はい。ありがとうございます」
「では、ごゆっくりなさって下さいませ」
アーデルカさんが脱衣所から出て行き、髪からリボンやピン止めを外して髪ゴムを取ってから、服を脱いで浴室に入ると、銀色の狼が金色の鹿の口から出るお湯を、頭から被って目を瞑っていた。
「うわぁ~っ、狼が滝行してる~」
湯船の中で揺蕩う銀色の毛がキラキラしてて綺麗で、サラサラの毛並みに思わず湯船に入って進んで行き、手をワキワキさせていると、狼が目を開いた。
シルバーアメジストの眼が、瞬きもせず私を見て、私は「あっ!」と、ようやくここで気付いた。
この屋敷で銀色の狼でシルバーアメジスト色の瞳の持ち主はイクシオンだけ。
獣人が獣化するのは知っていたのに、スコンと頭から抜けて……毛を触ろうとしか頭に無かったのだ。
「……リト、その、まぁ……湯船に入るなりして、体を隠してくれると、助かる……」
「は、へっ、ひゃい!」
ザブッと湯船に肩まで浸かって、一気に羞恥心で赤くなる。
やってしまった―っ! まさかのお風呂ハプニング!? これはラッキースケベというヤツ? ラッキーなのは私? イクシオン? どっちだーっ!!!!
「アーデルカが間違えたのかもしれないな」
「はひ……イクス、お風呂って言ってた、もんね……ごめんなさい~っ」
「いや、謝らなくていい」
「ううっ、恥ずかしくて、お風呂から出れない……」
「まぁ、オレはもう出るから、のぼせないうちに上がるといい」
私に近付いて、頬に鼻をつんとくっつけてから、イクシオンは湯船から上がっていった。
大人だ……大人の対応だーっ!! ずっと獣化したままで出て行ってくれたし、やっぱりイクシオンは紳士かも?
でも、私の裸見ても動揺もしないのは、少し残念かな?
いやまぁ、動揺されたら、私が恥かしくて死んでしまうけど、少しだけ胸に自信はあったんだけどなぁ。
うーん。まだ私が子供っぽいから魅力無いのかなー……
湯船から上がって、シャンプーで髪をワシワシ洗って、たまに「ああぁぁぁ」と奇声を発して、体を洗ってからから浴室から出ると、脱衣所に服が置いてあった。
そして、ここでも、問題発生である。
服が……主に下着のタンクトップと、上着のシャツが……胸の所が苦しい。
さっきまで着てた私の服はもう持って行かれてるし、三ヶ月しか経ってないここでは、私の今のサイズにはもう服が合わないっ!!
タンクトップはギュウギュウに胸がぺたーんと押さえつけられて苦しいし、シャツはボタンが閉まらない。
服とかが入ったトランクはイクシオンの獣騎に縛って持ち運んでもらっていたから、明日か明後日にならないと届かないだろう。
「ハハハ……はぁー……」
乾いた笑いを漏らして、タオルをテルテル坊主のようにして脱衣所を出た。
きっと、私の為にヴァンハローの人達がくれたドレスや服は、もう着れなくなっていることだろう。勿体ない。
ボン助をリュックサックから出して地面に置くと、代わりにデンちゃんを抱き上げた。
「ワフーン」
「デンちゃん、お水を貰おうね。ボン助もお水貰おうね」
「ワンッ!」
イクシオンがお屋敷の扉を開けると、執事のアンゾロさんとメイド長のアーデルカさんが揃って出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。イクシオン殿下。リト様、心配しておりました」
「お帰りなさいませ。イクシオン殿下、リト様、直ぐにくつろげるように用意致しますので、少々お待ちください」
「ただいま。オレはまずは風呂に入りたい。風呂の準備から頼む」
「私は、デンちゃんとボン助にお水を貰いたいので、厨房に行って良いですか?」
「リト様、デンにはお部屋を用意していますので、そちらの方へ案内します」
「イクシオン殿下、直ぐにご用意致します」
アンゾロさんがイクシオンを案内して、私はアーデルカさんに連れられて一階の客間だった部屋が大きな丸いクッションと、止まり木に餌箱などがある事から、デンちゃんとゲッちゃんのお部屋を作ってくれたらしい。
「うわぁ……お部屋を作ってくれたんですか?」
「はい。そちらの……ボンスケ? のお部屋もここでよろしいですか?」
流石にここの人にはボン助は言いづらいらしい。
ボン助は足元で「へっへっ」と甘えてて、デンちゃんは少しぐったり気味だ。
ゲッちゃんは肩に乗ったまま眠そうな目をして、うつらうつら船をこいでいる。
「ボン助、ここがボン助の新しいお部屋だよ。ここでも良い?」
「ワン?」
首を傾げるボン助にアーデルカさんが「扉は自由に出入る出来るようになっております」と、犬用の出入り口が小さく作ってあることを教えてくれた。
アーデルカさんに水をお皿に貰って、デンちゃんとボン助に水を飲ませて、ゲッちゃんを止まり木で寝かせると、アーデルカさんに連れられて、大浴場に連れて行かれた。
大浴場の鏡で見たら、私の髪の毛ぐしゃぐしゃで、確かにこれはお風呂に突っ込みたくもなるかも?
流石に十七の乙女なので、もう体を洗うのも一人でさせて貰いたい……と、思っていたら、メイドの人達は今出払っていて、戻りは夕方になるのだそうだ。
「イクシオン殿下がお戻りになるのは、もう少し後だと思っていた為に、申し訳ありません」
「いえいえ。お風呂ぐらいは一人で入れますから、大丈夫ですよ。それより、ボン助はここ初めてなので、見ていて下さると有り難いです」
「畏まりました。着替えとタオルはここにご用意させていただきますね」
「はい。ありがとうございます」
「では、ごゆっくりなさって下さいませ」
アーデルカさんが脱衣所から出て行き、髪からリボンやピン止めを外して髪ゴムを取ってから、服を脱いで浴室に入ると、銀色の狼が金色の鹿の口から出るお湯を、頭から被って目を瞑っていた。
「うわぁ~っ、狼が滝行してる~」
湯船の中で揺蕩う銀色の毛がキラキラしてて綺麗で、サラサラの毛並みに思わず湯船に入って進んで行き、手をワキワキさせていると、狼が目を開いた。
シルバーアメジストの眼が、瞬きもせず私を見て、私は「あっ!」と、ようやくここで気付いた。
この屋敷で銀色の狼でシルバーアメジスト色の瞳の持ち主はイクシオンだけ。
獣人が獣化するのは知っていたのに、スコンと頭から抜けて……毛を触ろうとしか頭に無かったのだ。
「……リト、その、まぁ……湯船に入るなりして、体を隠してくれると、助かる……」
「は、へっ、ひゃい!」
ザブッと湯船に肩まで浸かって、一気に羞恥心で赤くなる。
やってしまった―っ! まさかのお風呂ハプニング!? これはラッキースケベというヤツ? ラッキーなのは私? イクシオン? どっちだーっ!!!!
「アーデルカが間違えたのかもしれないな」
「はひ……イクス、お風呂って言ってた、もんね……ごめんなさい~っ」
「いや、謝らなくていい」
「ううっ、恥ずかしくて、お風呂から出れない……」
「まぁ、オレはもう出るから、のぼせないうちに上がるといい」
私に近付いて、頬に鼻をつんとくっつけてから、イクシオンは湯船から上がっていった。
大人だ……大人の対応だーっ!! ずっと獣化したままで出て行ってくれたし、やっぱりイクシオンは紳士かも?
でも、私の裸見ても動揺もしないのは、少し残念かな?
いやまぁ、動揺されたら、私が恥かしくて死んでしまうけど、少しだけ胸に自信はあったんだけどなぁ。
うーん。まだ私が子供っぽいから魅力無いのかなー……
湯船から上がって、シャンプーで髪をワシワシ洗って、たまに「ああぁぁぁ」と奇声を発して、体を洗ってからから浴室から出ると、脱衣所に服が置いてあった。
そして、ここでも、問題発生である。
服が……主に下着のタンクトップと、上着のシャツが……胸の所が苦しい。
さっきまで着てた私の服はもう持って行かれてるし、三ヶ月しか経ってないここでは、私の今のサイズにはもう服が合わないっ!!
タンクトップはギュウギュウに胸がぺたーんと押さえつけられて苦しいし、シャツはボタンが閉まらない。
服とかが入ったトランクはイクシオンの獣騎に縛って持ち運んでもらっていたから、明日か明後日にならないと届かないだろう。
「ハハハ……はぁー……」
乾いた笑いを漏らして、タオルをテルテル坊主のようにして脱衣所を出た。
きっと、私の為にヴァンハローの人達がくれたドレスや服は、もう着れなくなっていることだろう。勿体ない。
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