悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

文字の大きさ
31 / 73
二章 学園生活

ミナ

しおりを挟む
「どうして、こうなったぁぁぁ!!」

 転生して悪役令嬢フェルミナ・ドロッセルになった時以来の、激しいツッコミをした気がする。
 桜色の肩につくくらいのセミショート、メガネから鏡越しに見る目の色はオレンジと黄色がかった目。
 女物の学園の制服。
 ハーフケープには桜色の飾り紐にオレンジと黄色のトンボ玉の他に、他の攻略対象者の飾り紐が取り付けられている……ついでにフェルミナの飾り紐までついている。

「あいつ等、何を考えているんだよぉぉぉ!!」

 部屋の中で吠える俺は、さぞうるさかったのだろう。
 隣の壁から、ドンッと叩かれ、俺は口を閉じる。
 部屋は一階の平民宿舎……とても、一等級の部屋とは比べ物にならない。
 薄い木の板で区切られたような六畳ほどの部屋にベッドと机にドレッサー、バストイレ付ではあるものの、バスタブは無く、シャワーだけ。
 
「ハァー……迷惑だ……」

 こうなったのも、クロームのせいである。
 話は入学式が終わり、ルカリオンと俺が恋人になって三日後の事だ。
 ようやく情事のダメージも減ってきたところで、友人たちの登場だったわけである。

「ボクたちの力が足りず、助けてあげられなくてごめんね。フェル~っ」
「人が襲ったような事を、言わないで下さい」

 俺に抱き着いてきたセインをルカリオンが引き剥がし、お茶を人数分淹れて出してくれる。
 部屋には、セイン、ヒルクス、ベンガル、ディオンが来ていて、ラローシュだけは忙しくてケーキをディオンに持たせてお見舞い? という事らしい。
 初日の授業から三日間、病欠になっていたのは俺である。
 腰とお尻が死んでいたので仕方がない。

「でも、随分と派手にやったみたいだな」
「ひゃっ!」
「うちの坊ちゃんの肌に、気安く触らないで貰えますか」

 首筋を触ってきたヒルクスにルカリオンがドスのある声を出して、手を叩き落す。
 まぁ、俺も鏡で自分のシャツから覗く、肌のまだら模様と歯形の後に「うっ!」と声は上げたけどね。
 穴があったら入りたい。羞恥で死ぬから~っ!!

「それはそうと、面白い発明品が出来たんだが、フェルに渡そうと思ってね」
「新しい発明? また何を……ってぇ! ベンガル!」
「坊ちゃんに卑猥ひわいな物を見せないで下さい」

 なんだかとても、モザイクを掛けないとイケナイ物があった気がする!
 ルカリオンに手で目隠しをされて、ベンガルが「間違えたこっちだ」と何かを取り出す音がした。
 ベンガルの発明品は、普通のメガネだったのだけど、真正面からだと目の色が変わって見える物だった。

「変装用に良いかと思って、思い付きで作ったんだけど。今のフェルには必要だと思う」
「なんで、俺に?」

 俺が変装する必要が何処にあっただろうか? 謎だ。
 ラローシュが持たせてくれたケーキを口に放り込み、さすが王族、しっとりふわふわケーキだと呑気のんきにフォークを動かしていると、ベンガルが他にも女生徒用の服などを一式広げた。

「式典の時にフェルに、その……キス、したやつがいただろ? そいつがフェルを血眼になって探している」

 危うくフォークを落としそうになって、ルカリオンにフォークごと手を握られた。
 その手が強く握られた事で、ルカリオンの中で嫉妬のようなものが見えた気がする。

「それで、このメガネで変装……って、わけじゃないんだよな? その制服一式からして……」
「兄様が、教師陣にフェルの事を『ミナ』って生徒で授業に出る事を承認させているから、クロームが諦めるまでは『ミナ』として過ごした方が良いと思うよ」

 フェルミナだから『ミナ』なのだろうけど、安直な名前を付けてそこからバレそうな気がする……
 というより、女装は決定事項なのか……?
 まぁ、この薄いラベンダー色の髪は目立つし、クロームも一瞬だったとはいえ、覚えてしまっているかもしれない。
 ブルッと寒気で鳥肌が立つ。

「オレたちがずっと一緒に居られたらいいんだけど、学科が違うからな」
「僕たちは基礎授業以外、皆バラバラだからな」
「フェルもボクと一緒の、魔法学科に来ればよかったのに」

 俺たちは専門している学科がそれぞれ違って、一日のうち二時間くらいは基礎授業以外、それぞれの学科に通うことになる。
 ヒルクスとディオンは騎士学科、ベンガルは魔道具学科、セインは魔法学科、俺は薬剤学科という感じだ。
 薬剤学科は、回復魔術以外のパーティの回復をするポジションの生徒が通う事が多い。
 俺が専攻する理由は、自分自身には回復魔術は使えないからなのと、攻略対象の好感度を今更上げるつもりは無いからだ。
 どの学科を選ぶかで、好感度に多少の変化がある。
 今更、好感度カンスト状態のこいつらの好感度がどうしたというのだ。むしろ、どうしてこうなった! と言いたいが、この際、これは置いておく。
 そして、俺は大事を取って、クロームが諦めるまで部屋を移すことになった。 

 
「はぁ……確かに、女装には頷いたし、一ヵ月、自分の部屋を空き状態にするとは言ったけど……これ、どう見ても、ヒロインじゃんかぁぁぁ!!」
 
 そして、横の壁からドンッと音を立てられ……静かに消沈した。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...