悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

回復術師

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 悲鳴の上がった中央では、中型車ほどの冠を被ったスズメバチが出現していた。
 女王バチ。
 誰かが練習場のどこかにあった巣を攻撃してしまったのだろう。
 あの女王バチは練習のチュートリアルボスで、今の俺たちレベルならばどうという事はない。
 大きさに画面で見るよりデカい……という印象はあるけれど。
 厄介なのは、女王バチは兵隊バチを無限に召喚するというスキルを持っていう事だろう。

「きゃああ! どうにかしなさい!」
「支援しろよ!」
「敵が増えた!」
「落ち着いて対処しなさい!」

 生徒たちのパニックに、教師の声はかき消され出口へと生徒が走り出していた。
 流石にこれは予想外ではあるが、倒せないものではない。

「ミナ、支援をいいかい?」
「いいよ」

 ディオンが俺の口元まで顔を持ってきて、頬にキスをして支援魔法を掛ける。
 ベンガルとヒルクスにセインも、俺の顔近くまで顔を持ってくる。
 支援をかけ直し、生徒たちとは逆に中央へ向かう。
 途中でケガをした生徒や教師に全体回復の投げキスをしておくものの、動作は口に指をつけて、ほんの少し指を動かすだけだから気付く人は少ないだろう。
 多少、回復魔法で体が薄く一瞬光るだけだ。

「ミナ! 作戦は!?」
「ディオンが先頭で盾を! ヒルクスはディオンが食い止めた敵を払いのける! ベンガルとセインは援護射撃と範囲魔法で増えた兵隊バチと女王バチを狙い打って!」
「余は!?」
「え? クロームはついてきたのか? えーと、じゃあ、逃げ遅れた生徒が居たら、守ってやって!」

 それぞれに指示を出して、深く息を吐く。
 ゲームと一緒で、司令塔は俺という感じなのだ。
 ゲームオーバーになれば死ぬのか、それともゲームのように時間が撒き戻ってまた再開なのか、また転生してしまうかは分からないが、死ぬ予定は今のところない。
 それぞれが指示に従って戦闘を開始し、俺は司令塔として周囲に注意する。

「ミナ君! 悪いが頼めるか!?」

 教師が女生徒を抱えて走り込んでくる。
 女生徒がアリシャの取り巻きの一人だと気付いたが、ケガの状態からいって迷っている時間も無い。
 ハチの魔物はスキルに『毒針』がある。おそらくは毒針の毒が回ったのだろう。
 紫色に腫れあがった顔は、早く処置を施さなくてはならない。
 しかし、彼女に俺が近付くとアリシャたちが声をあげた。

「ミュセ様をその平民に任せるのは、教師の怠慢では!?」
「その者は、薬剤を本日は、持ち合わせておりませんのよ!」
「殿方にいやらしく迫る不謹慎な平民を、ミュセ様に近付けさせないでくださいませ!」
「いや、君たち、ミナ君はだね……」

 教師の言葉に耳を貸そうとはせず、反発だけが大きくなる。
 一刻も猶予が無いのに、どうしてこんな風に言えるのだろう。
 頭を振って、気圧されている場合じゃないと自分を叱咤して、教師の抱えている女生徒の顔に手を当てる。

「女の子なのに、ごめんな」

 今まで男にしかキスをして回復魔術を使っていなかったが、医療行為なので少し許して欲しい。
 女生徒の唇に唇を落として、解毒魔法と回復魔法を吹き込み、顔を離す。

「貴女! なんて事を!」
「女性にまで節操がないなんて!」

 堪忍袋の尾もここまでで、俺も声をあげる。

「うるさいっ! 一刻を争う時に、薬剤を出すわけでもなく、騒ぐ事しかしない。文句だけで人は助からないんだよ! 節操がない? 回復術師は唇から直接魔法を放つ。それすらも知らないなら黙っとけ!」
「なっ……!」
「なんですって!」

 火花が散る睨み合いが一瞬起きるが、他の生徒にも毒の治療と回復魔法が必要だったため、無視して回復役に努める事にした。
 俺が回復魔法で忙しくしている間に、女王バチの討伐は終わり、そのまま授業も終わった。
 ランチタイムの時には、俺が助けたミュセを筆頭に、幾人かの生徒が感謝と謝罪を口にし、俺が二人目の回復術師だという話は昼休みには広がっていた。
 
「二人目って事に、なってしまったね」
「仕方がないだろ。男にミュセさんとかキスされたと思うより、 同性の方が良いだろうし、お前等だって、頬とはいえキスを男にされているなんて知られたくないだろ?」
「いや、全然気にしないけど」
「むしろ、幼馴染が回復術師なのを自慢したいぐらいだけどな」

 俺の幼馴染たちは慣れ過ぎだろ……少しは、躊躇してくれ。
 ただ、今回の事で困ったのは、回復術師がフェルミナだけだったはずが、ミナも回復術師という事で、今まで男のフェルミナには関心の無かった貴族の男子生徒が、自分の一族に回復術師を嫁にすれば……という、浅ましい考えに至ったのか、この日を境にミナの俺は男子生徒に追い回されることになった。
 本当にもう、貴族ってやつは! と、言いつつ権力者な王族のラローシュやディオン、公爵家のセインの後ろに隠れたりする俺も、どうかとは思う。
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