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三章 悪の華
悪の 賭け
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ポーカーのスタッフに連れられてきたのは、黒薔薇の紋章のある扉。
専用の鍵でスタッフが開けると、中は薄暗く鼻につくような甘い香りが充満している。
部屋の中には四畳ほどの大きさをした鳥籠が幾つか並び、中に入れられた少年少女はまるで人形のように着飾られて、眠りについていた。
「悪趣味……」
ボソリと呟いて、ルカリオンの腕に手を回す。
密着しつつ様子を覗き込んでいるが、これはバッドエンドの最悪シナリオの序盤攻略地点。
ここで行われているのは、年端もいかない子供達の売買だ。
ヒロインはここでメダル集めを何回かすると、『特別室』へ連れて行かれる。
しかもこれがランダムなイベントなものだから、百回メダルゲームをしても出ない時は出ない。
諦めてシナリオを進めてしまうと、暗殺集団の出来上がり。
本来ならルカリオンは、この暗殺集団で深く関わる事になるけど、俺が子供の頃に関わってしまった事で暗殺集団には関わっていない。
今は俺の横で怒りを沸々と滾らせているわけだけどね。
どうどう。今はまだ、暴れる時じゃない。
ルカリオンが暗殺者になっていない為に、誰が悪役令嬢フェルミナを殺しに来るかもわからないし、来ないかもしれない。
ヒロインの方にも同じことがいえる。
本来なら、悪役令嬢の依頼で暗殺依頼が行われるのが本来のシナリオだ。
俺が暗殺依頼をするわけがないから、別の人物から依頼が出てしまう事がありうるかも? という不特定なシナリオに今はなっている。
しかし、無視するには危険すぎる案件なわけだ。
暗殺集団が既に出来上がっているのかいないのか……それを探らなくてはいけない。
そして、ここで行われている事案を解決することがバッドエンディング回避に繋がる。
「さぁ、ここからは貴方自身をチップにする事も、今まで稼いだメダルでも結構。最高の賭けをしましょう」
スタッフの男は金色に光るカジノテーブルの前で立ち止まり、そこに立っていたディーラーが声を発する。
金色のカジノテーブルのディーラーは、目元を黒いマスクで隠したアイスブルーの髪の男。
他のスタッフとは雰囲気も着ている物さえ格上。
マスク越しでも、このディーラーが美形なのは確かだ。
品の良い立ち振る舞いは、貴族のようであり、貴族を相手にディーラーをしているから身につけたものかは判別できない。
「ここでは……自分自身をチップに、と言いましたね? ここに居るのは子供達ばかりのようですが、チップにされた子供達ですか?」
「ええ。ご自分を掛け金に、身代わりも受け付けていますので」
ディーラーの口元が品よく笑い、ルカリオンは形だけ口元に笑みを浮かべる。
俺に目線を向けたディーラーに、俺は頭空っぽですよという笑顔を返す。
「じゃあ、ご主人様が勝ったら、あの子達も貰えるの?」
「それも良いですね」
「えー、僕以外が必要なの?」
「フェル君が一番ですよ」
手を回す振りをしてルカリオンの尻尾をギシッと握りしめ、そうじゃないだろ! と目で訴える。
あれだけ、二葉ちゃんに特訓させられたのにこいつは……
まぁ、主に俺が『もっと可愛く! しなをつくって! 媚びるのよ!』と、散々指導されたんだけどね。
本当に二葉ちゃんは……弟を玩具にしか思ってない。
コホンと咳払いをして、ルカリオンはディーラーに小さく片目をつぶってみせると、ディーラーも小さく頷く。
つまりは、俺に分からないように俺をチップに、勝ったら他の子をチップに貰うという事を示し合わせたわけだ。
「では、お座りください」
赤いベルベッドの椅子に腰を掛けるルカリオンに、横からスッとカクテルが運ばれる。
薄い水色のカクテル。
ブルーキュラソーだろうか? 柑橘系のフルーティーな味わいが特徴のお酒。
ルカリオンが獣人だと分かって香りの高い物を用意したのかが気になるところだけど、一応変装している人々も多く、獣人っぽくみせている人もいるから五分五分だろう。
まぁ、ここは俺が飲むべきか? 一応、大学生だったわけだし。
フェルミナとしてはまだ二十歳ではないけれど、この世界は十四歳過ぎれば飲酒は出来るんだよなぁ。
カクテルに手を伸ばしたところで、ルカリオンが俺の手に手を乗せて止めた。
「フェル君には、まだ早いです」
「えーっ、僕飲みたいなぁ~」
「駄目ですよ。後で何か買ってあげますから、ね?」
「仕方がないなぁ。今回は、諦めてあげる」
「ええ。いい子です」
ルカリオンが止めるという事は、何か混ぜ物がしてあるのかもしれない。
いざとなれば、俺が魔法でなんとかすればいいか……と、本来の俺の役目を思い出す。
俺のおでこにキスを落として、ルカリオンはカクテルを景気よく飲み干した。
潔いやつである。
俺はまたディーラーに文句を言われない為にも、半歩後ろに下がった。
「何をお望みですか?」
「では、カードでドラゴンタイガーでお願いします」
「かしこまりました」
ドラゴンタイガーはドラゴンかタイガーのどちらかに勝敗を賭けるカードゲームで、Aが一番弱くKが一番強いカードになる。つまりは1~13の数字の高い方を競うものだけど、7だけは除外される。
7を出した時点で敗北。
トランプだから同じ数字もあり得る。その場合は勝敗無し。
これに関しては、客は一切カードに触らないゲームだ。
ディーラーがカードを場に伏せてから勝敗を言い当てるゲームなので、ディーラーも客もイカサマがしにくいゲームでもある。
カジノテーブルの左右からドラゴンとトラのクリスタルが現れ、真ん中で線が区切られる。
ドラゴンに賭ける時はドラゴンのテーブルのカードを指さし、タイガーの時はその逆だ。
「さあ、楽しいゲームのお時間といきましょう」
ディーラーの楽し気な声に、小さく息を呑んで手を小さく握りしめる。
勝っても負けても、俺達の作戦は変わらない。
専用の鍵でスタッフが開けると、中は薄暗く鼻につくような甘い香りが充満している。
部屋の中には四畳ほどの大きさをした鳥籠が幾つか並び、中に入れられた少年少女はまるで人形のように着飾られて、眠りについていた。
「悪趣味……」
ボソリと呟いて、ルカリオンの腕に手を回す。
密着しつつ様子を覗き込んでいるが、これはバッドエンドの最悪シナリオの序盤攻略地点。
ここで行われているのは、年端もいかない子供達の売買だ。
ヒロインはここでメダル集めを何回かすると、『特別室』へ連れて行かれる。
しかもこれがランダムなイベントなものだから、百回メダルゲームをしても出ない時は出ない。
諦めてシナリオを進めてしまうと、暗殺集団の出来上がり。
本来ならルカリオンは、この暗殺集団で深く関わる事になるけど、俺が子供の頃に関わってしまった事で暗殺集団には関わっていない。
今は俺の横で怒りを沸々と滾らせているわけだけどね。
どうどう。今はまだ、暴れる時じゃない。
ルカリオンが暗殺者になっていない為に、誰が悪役令嬢フェルミナを殺しに来るかもわからないし、来ないかもしれない。
ヒロインの方にも同じことがいえる。
本来なら、悪役令嬢の依頼で暗殺依頼が行われるのが本来のシナリオだ。
俺が暗殺依頼をするわけがないから、別の人物から依頼が出てしまう事がありうるかも? という不特定なシナリオに今はなっている。
しかし、無視するには危険すぎる案件なわけだ。
暗殺集団が既に出来上がっているのかいないのか……それを探らなくてはいけない。
そして、ここで行われている事案を解決することがバッドエンディング回避に繋がる。
「さぁ、ここからは貴方自身をチップにする事も、今まで稼いだメダルでも結構。最高の賭けをしましょう」
スタッフの男は金色に光るカジノテーブルの前で立ち止まり、そこに立っていたディーラーが声を発する。
金色のカジノテーブルのディーラーは、目元を黒いマスクで隠したアイスブルーの髪の男。
他のスタッフとは雰囲気も着ている物さえ格上。
マスク越しでも、このディーラーが美形なのは確かだ。
品の良い立ち振る舞いは、貴族のようであり、貴族を相手にディーラーをしているから身につけたものかは判別できない。
「ここでは……自分自身をチップに、と言いましたね? ここに居るのは子供達ばかりのようですが、チップにされた子供達ですか?」
「ええ。ご自分を掛け金に、身代わりも受け付けていますので」
ディーラーの口元が品よく笑い、ルカリオンは形だけ口元に笑みを浮かべる。
俺に目線を向けたディーラーに、俺は頭空っぽですよという笑顔を返す。
「じゃあ、ご主人様が勝ったら、あの子達も貰えるの?」
「それも良いですね」
「えー、僕以外が必要なの?」
「フェル君が一番ですよ」
手を回す振りをしてルカリオンの尻尾をギシッと握りしめ、そうじゃないだろ! と目で訴える。
あれだけ、二葉ちゃんに特訓させられたのにこいつは……
まぁ、主に俺が『もっと可愛く! しなをつくって! 媚びるのよ!』と、散々指導されたんだけどね。
本当に二葉ちゃんは……弟を玩具にしか思ってない。
コホンと咳払いをして、ルカリオンはディーラーに小さく片目をつぶってみせると、ディーラーも小さく頷く。
つまりは、俺に分からないように俺をチップに、勝ったら他の子をチップに貰うという事を示し合わせたわけだ。
「では、お座りください」
赤いベルベッドの椅子に腰を掛けるルカリオンに、横からスッとカクテルが運ばれる。
薄い水色のカクテル。
ブルーキュラソーだろうか? 柑橘系のフルーティーな味わいが特徴のお酒。
ルカリオンが獣人だと分かって香りの高い物を用意したのかが気になるところだけど、一応変装している人々も多く、獣人っぽくみせている人もいるから五分五分だろう。
まぁ、ここは俺が飲むべきか? 一応、大学生だったわけだし。
フェルミナとしてはまだ二十歳ではないけれど、この世界は十四歳過ぎれば飲酒は出来るんだよなぁ。
カクテルに手を伸ばしたところで、ルカリオンが俺の手に手を乗せて止めた。
「フェル君には、まだ早いです」
「えーっ、僕飲みたいなぁ~」
「駄目ですよ。後で何か買ってあげますから、ね?」
「仕方がないなぁ。今回は、諦めてあげる」
「ええ。いい子です」
ルカリオンが止めるという事は、何か混ぜ物がしてあるのかもしれない。
いざとなれば、俺が魔法でなんとかすればいいか……と、本来の俺の役目を思い出す。
俺のおでこにキスを落として、ルカリオンはカクテルを景気よく飲み干した。
潔いやつである。
俺はまたディーラーに文句を言われない為にも、半歩後ろに下がった。
「何をお望みですか?」
「では、カードでドラゴンタイガーでお願いします」
「かしこまりました」
ドラゴンタイガーはドラゴンかタイガーのどちらかに勝敗を賭けるカードゲームで、Aが一番弱くKが一番強いカードになる。つまりは1~13の数字の高い方を競うものだけど、7だけは除外される。
7を出した時点で敗北。
トランプだから同じ数字もあり得る。その場合は勝敗無し。
これに関しては、客は一切カードに触らないゲームだ。
ディーラーがカードを場に伏せてから勝敗を言い当てるゲームなので、ディーラーも客もイカサマがしにくいゲームでもある。
カジノテーブルの左右からドラゴンとトラのクリスタルが現れ、真ん中で線が区切られる。
ドラゴンに賭ける時はドラゴンのテーブルのカードを指さし、タイガーの時はその逆だ。
「さあ、楽しいゲームのお時間といきましょう」
ディーラーの楽し気な声に、小さく息を呑んで手を小さく握りしめる。
勝っても負けても、俺達の作戦は変わらない。
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