悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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三章 悪の華

悪の仲間 ※

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 部屋に残された俺は、頭の中でゲームと現実の違いを思い起こす。
 暗殺集団だと決めつけて潜入したけれど、どうも違うような口ぶりだったし……悪役令嬢が令息の時点でこのゲームは色々ズレている。
 それは分かってはいたけれど、一体なんの目的で彼等はこのカジノを運営しているのか、それを探らないといけないだろう。

「まぁ、ディーラーが戻って来る前に、着替えるか」

 二葉ちゃんは怒るだろうけど、流石に俺はヒラヒラの服にハーフパンツは嫌だよ。
 ドレッシングルームに入ると、化粧室にしては、風呂場もトイレも完備されているホテルみたいな構造で、こんな場所にこれから売り買いされる少年少女を放り込むには、お客さんのような扱いだと思う。

『……探せ!』
『あの、……貴族め!』

 かすかに部屋の外が騒がしく、ドレッシングルームの小窓から外を見ようと鍵を開ける。
 黒いものがバサッと垂れてきて、「ヒッ」と小さく悲鳴が出そうになるが、それがルカリオンだと気が付いて、心臓をバクバクいわせながらも安堵の溜め息を漏らした。
 
「窓を開けてくれて助かりました」
「いや、それは良いんだけどさ……お前、何しているんだよ?」
「坊ちゃんが心配でしたので、匂いを追って屋根の上から部屋を覗き込んで探っていました」

 なるほど。とは思うけど、逆さまで顔を覗かせてくるあたり、心臓に悪い奴だ。
 ルカリオンが小窓からスルリと入ってきて、小さく頭を振る。
 こうした仕草はどこか犬っぽい。

「騒がしいけど、ルカリオンが何かしたのか?」
「いえ私は何も。どうやら、貴族が負けてチップを取り戻そうと暴れて魔銃マジックガンを撃ちまわっているようです」
「魔銃って、相当ヤバい状態じゃないか?」
「このカジノの用心棒は、それなりに名の知れた者ですから大丈夫でしょう」
「強いヤツ?」
「ええ。新人ですが、魔法の腕はこの国で一番と名高いですね」
「あー……誰だか分かった」
 
 もしかしてもしかしなくてもヤツだろう。
 俺の子供のころから知っているヤツで、同級生なうえに、元姉だった人の義兄セイン・バード。
 セインなら魔銃ぐらいどうとでもなるだろう。ベンガル特製の魔銃なら話は、別かもしれないけど。

「ついてくるなと言ったのですが、坊ちゃんだけでは不安だと、潜入していたようです」
「あいつ……まさか、他の奴等も居るとか……言わないよな?」

 笑顔で肯定するんじゃない。
 まったくあいつ等ときたら、心配症がすぎる。
 目の前のルカリオンほどでは無いけどな。
 俺に腕を回して抱きしめると、匂いをスンスン嗅いで尻尾を振る姿は過保護なのか溺愛ぶりなのか……
 
「洋服を着替えたのですか?」
「うん。さっきのヤツが、俺には似合ってないみたいなこと言ってたしな。俺も同意」
「可愛いと思いましたけどね」
「ルカリオンも、二葉ちゃんと同類だな」
「いえいえ。私はあそこまでは危険人物ではないと思っていますよ」

 チュッと音を立てておでこにキスを落として、スキンシップ過剰なスリスリ攻撃をされるがままに受け入れる。
 なすが儘の俺に気をよくしたのか、腰を両手で掴むと少しだけ持ち上げて唇にもキスをしてきた。

「ん、こら。ルカリオン、まだ潜入中なんだけど?」
「当分は彼らが騒いでいるでしょうから、大丈夫ですよ」

 耳をピクピクと小刻みに動かして目をうっそりと細め、許可を求めるように見つめてくる。
 このイケメン狼~っ! どうしてこうした表情が様になるのか。
 キスとそれ以上のことを拒否する選択肢が見当たらない。顔の良い奴はこれだから、困る。
 ルカリオンの頬に手を添えて、軽く唇を押し当ててすぐに顔を離した。
 やっぱり恥ずかしさもある。
 
「可愛い人ですね。本当に、坊ちゃんは」
「可愛いって言うな。俺だって男なんだからな」
「ふふっ。少しツリ目なところも、元気が良くて向こう見ずなところも、こうしてすぐに恥ずかしがってしまうところも含めて、存在全てが可愛いですからね」
「うぐぐ……ルカリオン。お前なぁ……~っ」

 口説き落とすような台詞に嬉しそうな表情。
 どうしてこいつは俺が好きだということに、素直に口に出して態度で示すのか。
 本当、俺の従者兼恋人は激甘なのだから、どうしようもない。
 惚れたのはどっちなのか、俺なのかこいつなのか。
 こんなことをしている場合ではないはずなのに、ルカリオンが求めてくれば応えてしまう。
 折角着替えたシャツのボタンをはずして、露わになった鎖骨に吸い付き痕を残す。
 赤く肌に残るキスマークがドレッシングルームの鏡に映る。

「ルカリオン。ちょっとここでやるのは、恥ずかしいんだけど」
「ん? どうしてですか?」
「いや、それは……なんていうか、ほら」
「ああ、鏡ですか。ほら、鏡越しなら後ろから坊ちゃんと繋がっても、表情が見えて良いと思いますけど」
「~っ! ルカリオン!?」

 この変態狼め! 
 軽く殴ろうとして手を上げると、その手を取られて後ろに回り込まれる。
 流石獣人、動きが素早い! って、感心している場合じゃない。
 後ろから顎を手で持ち上げられて固定され、鏡に映る自分に向き合わされた。
 緑の目に薄紫の髪をした少しつり目がちの少年……一応、青年なんだけど、どうもまだ子供っぽい顔立ちは抜けない。
 口うるさい従者のせいで健康的な肌色より少しだけ白く、運動はほぼしないものだから筋肉の薄い体躯。
 後ろの狼獣人なんて、どこで鍛えているんだ? と疑問をぶつけたい無駄のない筋肉をつけているというのに、この差はなんなんだか? というところだ。
 鏡越しにルカリオンと目が合う。

「向き合うのも直に表情が見えて良いですけど、こうして目が合うのも良いですよね」
「変な性癖の扉を開くなよ」
「性癖とは違うと思いますが、坊ちゃんの表情を観察できるのは良いですね」
「性癖じゃんか!?」
「いえいえ。性癖ではないです」
「どこが!?」

 ニッとルカリオンが良い事を思いついたような表情をして、背筋が粟立つ。
 シャツの中に手が伸びてきて胸の上を撫でつけた。
 薄い胸板にある突起を指で摘ままれる。
 先端から痛さとは違う、ビリビリとした小さい電流に似た感覚が走った。

「んっ……っ」

 弄られるたびに声が漏れそうになって、唇を小さく前歯で噛みしめてやり過ごせば、首筋を軽く甘噛みされる。

「我慢している表情がそそります」
「何……言って……んっ」
「鏡に映っていますからね。反応が見れるのも、鏡の良いところです」
「んくっ、あっ!」

 文句を言おうと口を開くと、強めに摘まみ上げられて大きめの艶声をあげる。
 鏡には頬を上気させた自分の姿に、やたらと性欲強めな雄狼の顔をした従者の姿が映っていた。
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