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4章
祭壇
しおりを挟む黒い光沢のある床板が一面に広がり、壁には猿の形をした【夜】がそのまま張り付いたような黒い鉄光したモチーフで覆われている。
中央に青白い石碑があり、そこにヨルンとネルフィームが立っていた。
合流したギルとマグノリア製薬組みにシュテンとタマホメが青白い石碑まで来るとネルフィームが、石碑に手をかざす。
石碑から文字が浮き上がり、マグノリアが丸メガネを上げながら声を出す。
【 盗人を許すな 】
我らは■■■を守る【死】の【兵士】
遺跡に眠りし■■■に手を出せば【死】を持ちかえる事になる
財宝を手にした者は等しく【死】を持ちかえる
【死】は【死】を運ぶまで止まることは無し
■■■が■■る その日まで我らは遺跡の守り人
45の周期で遺跡は開き閉じる
45の年月を■■■の■■■の為に
我ら兵士はこの土地から出る事は叶わぬ
■■■の眠りが覚める時 我ら兵士は眠りにつく
「何のことかは解からないところもあるが、大体はこの遺跡から何かを持ち出せば死ぬぞって事らしいな」
マグノリアが石碑をマジマジと見ながら顎に手をやり考え込んでいる。
「この遺跡から盗んだ物っていうのが、もしかしたら【病魔】なのかもしれないな」
「わざわざ自分から死にに行くもの盗むか普通?」
「でも、盗んだ物を商人が買い取って広まったって考えれば商人ルートで死者が多かった理由に行き当たるだろ?」
製薬弟子3人組が自分達の意見を言い合いながら、あーでもない。こーでもない。と騒いぐ。
「それって『コレ』じゃないでしょうか?」
ギルが小さな金色の粒を手に持ち上げてマグノリアに見せる。
マグノリアがその金の粒を受け取り、丸メガネを頭の上にあげて裸眼で金の粒を見ながら眉間にしわを寄せる。
「【鑑定】【分解】・・・これは純金に見せかけた【病魔】だね」
マグノリアの手の中で金色の砂粒と黒い結晶が出来上がる。
マグノリアは金の砂と黒い結晶を床に捨てて、手を叩くと3人の弟子が一斉に飛んでくる。
「マグノリア室長危ない事しないでくださいよ!」
「ポーション飲んでください!」
「何してんだよ!手の平で分解すんなよ!」
ロタルスとウェイトとピルマーが騒ぎながらマグノリアにポーションを差し出し聖水で手を洗い流す。
マグノリアは騒ぎ立てる弟子達の勢いに飲まれながら3人に苦笑いをする。
「主は何処であの金の粒を見つけたんです?」
「アレかい?【夜】を倒してたら結構落ちたから1個拾っておいたのさ」
「何でも拾わないでください」
「そうだねー。危うく私が【病魔】を連れて回るところだったよ」
ギルにネルフィームが腰に手を当てて首を振ると、ギルが両手を上げて降参ポーズをしておどけて見せる。
「あの、この部屋の壁際に沿って金の粒が結構落ちてて、拾い集められた跡があるんですが」
ヨルンが壁際を指さすと、確かにゴッソリと持ち去られた跡が残っていた。
「盗人を許すな・・・財宝。【死】の兵士。金の粒が財宝ならば、【病魔】の蔓延した原因でしょうか?」
「だとしたら、金の粒を加工した時点で火を通せば【病魔】は死滅しますから加工されていないモノが【病魔】として出回り広まった・・・というところでしょうかね?」
「【黄土病】は壁画に掛かれてたし【病魔】な事は間違いないけど【夜】も【病魔】ってなんかゴチャゴチャしてわかんねぇな」
「この石碑にある【死】の兵士は【夜】で、【夜】を倒したら出てくる金の粒が【病魔】で・・・」
「とにかく、この遺跡の物は【病魔】って事だろ?持ちかえり厳禁!!」
全員で固まり意見を出し合い、情報を出し合っていく。
●遺跡が45年に1度開き盗掘出来るようになる→商人が買い付けに来る→金の粒が病魔として出回る→病魔の蔓延。
●遺跡の盗難防止システム【夜】はこの大陸のみ。おそらく遺跡を離れすぎると【夜】は動けない。ただし、金の粒として【病魔】は感染を広める。ただし金を溶かせば問題ない。
●【夜】は【黄土病】としてこの地に蔓延するが外に行けば行くほど進化し【病魔】になる?
●45年後にまた遺跡が開けばまた盗掘騒ぎで【病魔】の蔓延・・・イタチごっこ?
「まぁ、これ以上は我々の手ではどうしようもないですね」
製薬外の問題だと見切りをつけマグノリアが肩をすくめて首を振る。
製薬組みの3人はマグノリアの意見に頷きあう。
ガコン・・・ガコン・・・ゴト・・・
小さな物音が響き、奥にある壁から四角い光が漏れる
四角い光から白く小さな手が伸びると、フワッと白い粒子の様な物で構成された少女が出てくる。
後ろの壁が透き通り現れたのは立体映像の少女だった。
シルバーホワイトの長く波打つ髪にオパール色の瞳の中にアメジストの様な輝きがある可愛らしい顔立ちの少女。
『この映像を見ている方へ申し上げます。私は亡き王国の姫■■■』
「亡国の姫君・・・ああ、お伽噺にありましたね」
「主、黙って下さい。聞こえません」
ギルがネルフィームに口を両手でふさがれ不満な顔で押し黙る。
『この映像の後ろにある四角い壁の中に居る私を殺して兵士を止めて下さい』
『私を永久に葬り去る事で【死】は消し去れます』
『どうか私を眠らせて下さい』
ハラハラと涙を零しながら姫と名乗る少女の映像はそこで終わり消えてしまう。
「四角い壁ってこれですよね?」
ヨルンが指をさし、一同が頷きギルが足で壁を蹴る。
ゴウンと音が響き、四角い壁の奥に白い花に囲まれた6畳程の部屋が現れる。
「・・・これは、どうすれば良いんでしょうね?」
ギルが部屋の中央で四角い台座の上で眠る少女を見ながら眉を下げる。
眠る少女は言葉のごとく、永遠の眠りについていた。
胸には短剣が突き刺さり、体はミイラ化している。
「兵士止まってねぇな」
「予想外の出来事って事なんじゃない?」
「もしくは目覚めるはずの姫が死んで暴走状態とか?」
製薬組みの3人が「うへぇー」と声を上げながら、少女の遺体を調べて回る。
「とりあえず、この少女を鎮魂してあげましょうか」
マグノリアが少女の胸から短剣を抜き聖水を掛け、ヨルンが鎮魂歌を歌い、少女の魂がより良い場所へ逝ける様に祈りながら歌う。
最後に朱里のポーションを少しだけ少女の遺体にかけて浄化を行う。
少女の遺体がほんのりと輝き、サラサラと遺体は形を崩し砂の様に消えていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
地鳴りが響き地面が揺れ始めると壁が音を立ててヒビを入れ始める。
「ちょっ!!えええええっ!!」
「皆、逃げますよ!」
「早く逃げるぞ!」
全員一目散に入ってきた四角い壁を通り抜けると、大広間の黒い床もひびが入り、壁も崩壊を始めている。
床の揺れも止まらず、壁は崩壊の一途を辿り、脱出時間はほぼ無くなっている。
「ネルフィーム壁をぶち破れ!」
ギルの声にネルフィームが黒いドラゴンに戻ると息を吸い込み口から黒いブレスを吐き出し遺跡の壁に大穴を開ける。
「皆、私の背に乗れ!」
シュテンがタマホメを抱き上げながら跳躍して飛び乗り、ギルがヨルンを抱き上げて飛び乗り、製薬組みはネルフィームの尻尾から乗り込み、途中でギルが手を貸して背中に押し上げていく。
全員乗るのを確認してネルフィームが大穴から飛び立つ。
砂煙を上げながら遺跡が砂漠の中へ消えて、外に居た黒い猿の様な【夜】もサラサラと砂の様に崩れていく。
「もしかして、姫の言っていた『私を殺して』は鎮魂し遺体を消す事までが条件だったのでしょうかね?」
マグノリアが小さく手を合わせて祈り、弟子の3人も手を合わせる。
「まさかとは思うけど、これで【病魔】が終息したとか言います?」
ギルが少し不満そうに声を上げる。
「感染者が多かった港街で患者を診て見ましょう。そうすればわかります」
マグノリアがネルフィームに港街に行くように伝え、一行が港街に到着すると黒ずんだ肌をしていた感染患者達が何事も無かったかのように呆然と自分達の体を見ていた。
マグノリアが患者を診て回ったが【病魔】で体力が落ちて痩せ細った栄養状態の悪い人々の集まりになっていた。
「・・・なんというか・・・こんな終わり方があるんでしょうか?」
少しマグノリアがガクリとした感じでため息を吐くと、弟子3人は「何だよこれー」と口々に騒ぎ立てる。
「さて、リトル・レディ。足を回復魔法で蘇生させましょうか?もう流石に帰れると思いますから」
ギルがタマホメの頭を撫でながら、タマホメのふくらはぎの包帯を取り、聖水で流し、朱里のポーションで効果を上げてから回復魔法を口にして再生魔法を行使していく。
ビリビリとした肉の引き連れる感覚にタマホメが悲鳴を上げ、シュテンの腕に血を滲ませるほど握りしめながら再生魔法に耐える。
回復魔法が終了すると、タマホメもぐったりしていたが、ギルもだるそうにして「ふぅー」と息を吐くと薄く笑ってネルフィームに回収されていた。
「さて、【刻狼亭】に帰りましょうか」
マグノリアが弟子3人に言うと3人は「テッチが心配してるからな!早く帰ろうぜ」と笑って親指を立てる。
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