黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
162 / 960
7章

竜と木

しおりを挟む
 温泉大陸に桜色の花びらが舞う。
桜の木の下で白金のドラゴンが首を伸ばしながら、鼻をスンスンと動かす。

「アルビー、もう体は大丈夫なの?」

 白い着物に桜色の帯をした朱里が屋敷から庭に出て、桜の下に居るアルビーに声を掛ける。
アルビーが金色の目を朱里に向けて瞬きをすると、首をゆらゆらと揺らしながら「クルル」と喉を鳴らす。

「うん。冬眠明けで体がなまってるけど、平気だよ」
「それなら良かった。ガラスハウスでアルビーの白い木を育ててるけど見る?」

一瞬、アルビーが「なんだっけそれ?」と首をひねるが、途中で思い出したのか尻尾をパタパタ左右に振り始める。

「見るよ。大きくなった?」
「それなりに大きくなったよ」

 ガラスハウスの前でアルビーが体のサイズを朱里と同じくらいに縮めると2人でガラスハウスの中へ入る。
アルビーの白い木は冬の間でも成長をぐんぐんと続け、氷竜から貰った時は小さな手の平に乗せられるほどの苗木だった物が、今では1メートル程の大きさに成長している。

「アカリお世話してくれてたんだね。ありがとー」
「ううん。それより、アルビーこの白い木は何の木なの?」
「この木はね『竜の癒し木』だよ」
「竜の癒し木・・・どんな木なの?」
「この木に成る実は竜の好物なんだよ。だから竜の癒し木」
「なるほど。早く美味しい実が成ると良いね」

 朱里がアルビーの鼻先を撫でるとアルビーが嬉しそうに目を細めながら、朱里にすり寄って「実が収穫出来たら一緒に食べようね」と楽しそうに声を出す。

「アカリ、そろそろ出掛けるぞ」
「あ、はーい。アルビーまた帰ってきたらね」

 革のトランクを持ったルーファスに声を掛けられ、朱里がアルビーに手を振るとアルビーも手を振り返す。

「いってらっしゃい!ルーファス、アカリ」
「行ってくる。留守は頼んだぞアルビー」
「いってきます!アルビーお土産買って帰るね!」

仲良く手を繋ぎながら出掛けて行くルーファスと朱里を見送りながら、ガラスハウスの中でアルビーが白い木を眺める。

「アカリに水やり頼んで正解だった。毒も無くなって聖属性の木になってる」

『竜の癒し木』の美味しい実は竜が卵になる前に食べる最後の実。
猛毒の実ではあるけれど、古い体を捨てて新しい体になる為に一度死ななければいけない為になくてはならない実。
美味しさのあまり、何度か卵孵りしてしまった事がある竜も居るぐらい美味しい。
死ぬほど美味しい。
文字通り死んでしまうけど。

 アルビーは植物を調べる事が好きな竜なので『竜の癒し木』の実を死なずに食べれない物かと昔から考えていた。実験的に自分の聖属性で作った水を苗木に与えていたところ、猛毒が薄まった為に育てていたのだが、毎年、冬眠で育てられずに実験は頓挫していた。

 今回も懲りずに実験するつもりで氷竜に小さな苗木を頼んでいた。
幸運な事に、冬眠をしない聖属性の朱里が居る事と、ギルと違って植物が好きな事でアルビーの冬眠の間の実験は成功した。

ギルに冬眠中の水やりを頼んで何度枯らされた事か・・・。

「でも、私の水やりではここまで毒が消える事無かったんだけどなぁ」

 聖属性ではアルビーの方が朱里よりも上位ではあるが、朱里の能力の【聖域】は浄化能力に関してはアルビーより優秀らしい。

「これで美味しい実がいっぱい食べれたら嬉しいなぁ」

 何度か食べた事のある美味しい実にアルビーが尻尾を振りながら、舌なめずりする。
万が一、死んでしまっても卵になるだけなので1個目は自分で実験として食べて大丈夫なら他の仲間や朱里達にもおすそ分けしようと、アルビーは思いながら、ガラスハウスを出ていく。



「アカリ、アルビーの白い木が何か解って良かったな」
「うん。ずっと何か気になってたから」

 カラコロと下駄の音をさせながらルーファスと朱里は温泉街を抜けて港の方へ歩いていく。
春になったとはいえ、まだ少し肌寒くはあるけれど、温泉街を歩く人々は春らしい色合いの着物を着ていて目を楽しませてくれる。
港に着くまで人々の着物で目を楽しませてから、ルーファスと朱里は魔国エグザドル行きの定期船に乗り込む。

「ありすさん達に会うの楽しみだね」
「そうだな。久々のシノノメの賑やかさに今から耳が下がりそうだ」
「ふふ。ルーファスったら」
「半分冗談だが半分は本気だぞ?」

 魔国の【聖女】東雲ありすと【魔王】リロノスからの正式な招待状が届き、ルーファスと朱里は温泉大陸を出て魔国エグザドルへ向かう事になった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。