黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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14章

海辺のBBQ

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 温泉大陸に夏が来るとトリニア家の長男次男は12歳になる。
もう我慢できないとばかりに、2人は飛び出しては自分の実力を付けようと、苦手な海での戦闘までするようになり、最近、温泉大陸の海域の海で海獣を見る事が無くなった。
 
 今日も2人が海に狩りに行くと息巻いて、浜辺にレジャーシートとパラソルを差し、ドラゴン達と一緒にピクニック気分で海辺でバーベキューをしに来ている。

 ドラゴン達は海で魚や貝を獲っては浜辺に戻り、バーベキューの具材を集めている。

「ローランドいきますよ!」
「おっきなお花!!!」
「ちょっ!ミルア、ナルア!危ないから火の威力下げなってば!」

 セーラーワンピースを着たミルアとナルアが火竜ローランドにダメ出しをされながら火魔法を練習しているのだが、2人は5月頃に見た花火を火魔法で再現できないかと試行錯誤している最中なのである。
自分達に弟か妹が出来ると判ってからはミルアとナルアは、前にも増してお手伝いをする様になり、魔法の勉強も頑張っていて、花火は弟か妹が生まれた時に祝砲として打ち上げたいのだそうだ。

 ただ、2人共張り切り過ぎて毎回威力が強い火が出てしまう為に駄目だし回数は増えているばかりなのである。

 ルーファスがそんなミルアとナルアを見ながら目を細め、沖の方で適当な海獣が居ない為に兄弟喧嘩ならぬ兄弟稽古を始めているリュエールとシュトラールに元気な事だと年寄りくさい事を思う。

「んー・・・お肉ぅ・・・」

 薄いラベンダー色のパプ袖のワンピースを着て、黒く長い髪を三つ編みにした朱里がブランケットをお腹に掛けてスヤスヤと寝息を立てながら寝言を言っている。
 あと3ヶ月程で新しい家族が増えるが、朱里はほとんど安静状態が続いている為によく寝ている。
まだ予定日までは3ヶ月あるが、いつ生まれてもおかしくはない大きさをしていて、今回ばかりは帝王切開だろうと言われている。

 今回もというより、今回は子供の数が少しばかり多かった。
三つ子である。獣人には双子など珍しくはないが、それは同じ種族の獣人故なのだが、他種族同士でここまで多産が続くのは、朱里の家系が双子が生まれやすい家系だからでは?と、言われたが、残念ながら双子の親戚は居ない。
ルーファスにしても今までトリニア家に双子は居ない。
 産医も相性がいいんでしょうかね?と苦笑いしていた。
 
 ちなみに朱里が枕にしているのは獣化したルーファスのお腹で朱里の頭の上にはグリムレインが朱里が暑くないように温度を調節している。
お腹の上にはエデンが丸くなって朱里と一緒に寝ている。

「アカリはまだ寝てんのか?」
「ああ、先にバーベキューをしといてくれ。そのうち匂いで起きるだろうからな」
「ほいほい。ササマキ、クロ行くぞ」
 ハガネがササマキとクロを引き連れてバーベキューの用意を始める。
土竜ニクストローブが砂浜の土を固めてブロックを作り、その上に金網を置くと木竜ケルチャが木を投げ入れて火をおこし風竜スピナがリュエールとシュトラールが捕まえた魚と貝を持ち帰って来る。

「ハガネ!オクトパも焼く?」
「んーっ、塩揉みしてぬめり取るのが面倒くせぇーから海に捨てとけ」
「はーい。飛んでけー!」
 スピナの風でタコ型魔獣オクトパが沖の方まで飛ばされて行った。

「ハガネ、お肉は?」
「ハガネ、ソーセージ焼こー」
 ミルアとナルアがハガネの服を引っ張りながら肉の合唱団と化している。
「そういうところアカリにそっくりだよな」
「母上は肉食系女子だから」
「母上、肉食系~」
「お前等・・・それ意味違ぇと思うぞ?」
 少し呆れた顔をしてミルアとナルアのおでこを指でツンツンと突きながら金網の上に野菜を串に刺したものを並べていく。

「お肉付いてる!」
「野菜も食えよー」
「お肉食べるからトゥートはハガネにあげるー」
「トゥートも食え。焼いたら違った味になって美味ぇから」
「ぶぅー!」
「ぶぅー!」

 トゥート嫌いな2人が頬を膨らませてハガネに「お姉ちゃんになんだろー?」と言われて「ぐぅ」とイヤな顔をしていた。

 海から上がって来たリュエールとシュトラールもバーベキューの周りで「ハガネ、肉まだー?」と騒ぎ、ハガネが「アカリの子供だよな、本当にお前等は・・・」と肉祭りな子供達にハァーと息をつく。

「リュー、シュー、はい。飲み物」
「ありがとうアルビー」
「ありがと、アルビー。これ何?」
「花の蜜とレモーネと桃と魔力水」
 アルビーが飲み物を持って2人の周りを飛び回ると、ミルアとナルアが「私達のは?」とアルビーの尻尾を掴む。

「もぉー、尻尾はやめて。ミルアとナルアはさっきミッカジュース飲んでたでしょ?お腹チャポンチャポンになってお肉入らなくなるよ?」
「むぅー・・・」
「お肉ぅ・・・」

 ハガネが鉄板も出して上で焼きそばを作り始めると辺りにソースの匂いが立ち込めて、寝ていた朱里の鼻がヒクヒクと動き出す。

「んー・・・美味しい匂いがするー・・・」
「アカリ、起きたか?丁度バーベキューが始まったところだ」
 目を眠そうにぱちぱちさせて朱里がふにゃと笑う。

「嫁、冷たい飲み物はいるか?」
「んー、欲しいかもー」
「エデン、主様に美味しい物持ってきてあげる!」
「エデン、ありがとー」

 グリムレインとエデンがハガネの方へ飛んで行って直ぐに飲み物とお肉を山盛りにして朱里の元へ帰って来る。
ルーファスが人型に戻って朱里を抱き起して自分の膝に大きなクッションを置くと朱里をクッションの上に乗せる。

「嫁、今日は食べれそうか?」
「主様、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよー。相変わらず胃が持ち上げられて苦しいけど」
 心配そうなグリムレインとエデンに朱里が心配ないよーと手を振る。

「まだ眠そうだな」
「んー。自分でも起きてるのか寝てるのかわかんない。ふわふわしてる」
 ルーファスに持たれながら、チューとグリムレインに渡された麦茶をストローで飲みながら、朱里がふぃーと、息を吐く。
ようやく喉に水分を通すと少しだけ意識がハッキリする。

「今回はどのくらい?」
「ん、前回起きた時からそう日数は経っていないが、3日経ったところだ」
「そっかー・・・ならまだ、リューちゃん達は11歳だね。12歳のお誕生日に起きれると良いんだけど」
「まぁ、無理はするな。あの2人もそこら辺は解っているから」
 
 お皿に盛られたお肉の山に朱里がくすくす笑って、口を開けるとルーファスが朱里の口に肉を入れてくる。

「んふーっ、お肉ぅー」
「相変わらず妊娠中は肉好きだな」
「お腹の子供達がお肉好きみたいです。これはリューちゃん達も変わらないから皆お肉好きな家族なんですよ」
「まぁ、黒狼族はそんなものだな」
「ルーファスの子供達だものね」
 朱里の頭にスリっと顔を摺り寄せてルーファスが愛おし気に朱里を見つめていると、朱里がまた眠そうな顔になって、電池が切れた様にすぅーと、眠りに入ってしまう。

「また寝てしまったか・・・」
 寝息を立て始めた朱里にルーファスは手に持った箸と肉の盛られた皿を脇に置く。

 『祝福』があっても朱里の状態はほとんど眠ったままで、『祝福』が無ければ早い段階で子供を2人間引くか、3人共諦めるしかなかった。
しかし、安静の為に朱里の体が睡眠状態に直ぐになってしまうので、朱里の体の負担は大きいのだと思うと申し訳ない気持ちでルーファスは朱里の額にキスを落として顔を撫でる。
 長い時は1週間、目を覚ます事が無い時もある。
目が覚めても起きている時間は少なく直ぐに眠りに落ちる為に、朱里にはスケジュールカレンダーを渡して家族の動きを教えている。
 今回のバーベキューも朱里が「行きたい。寝てても連れて行ってね」と言っていたので連れて来ている。
産院に入院状態で過ごしているので、朱里は少しでも家族と過ごしたいとたまにこうして外出許可を貰っている。
ほとんど寝ている状態なので朱里本人が楽しめているかは分からないが。

 ルーファスが朱里を抱き上げて「アカリを産院に戻してくる」と声を掛け、サクサクと砂浜を歩くとグリムレインとエデンもルーファスについていく。

 残された子供達は「仕方がないね」という顔でバーベキューの続きをする。
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