黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

ロデミック・アロアイの独白

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 セルボーノの街の片隅にある倉庫で機嫌よく酒を飲んで寝ている男を倉庫の窓から確認して頷くと「全員突撃!」と合図の声が上がり、倉庫を取り囲んだ冒険者ギルドの機動部隊と冒険者達が一斉に入っていく。
呑気に酒瓶を床に転がして寝ていた男は物音に驚く前に捕らえられていた。

「ロデミック・アロアイ、詐欺容疑及び窃盗容疑で逮捕する!」

 そう告げられて元新聞社の編集長ロデミック・アロアイは酒のまわった頭で「これで終わりかー・・・」と思った。

 ロデミックが人生の歯車が狂ってしまったのは何処からなのか?
態度の悪い【転写】能力使いの男を『カメラ』1台分に金を払った方がマシだとクビにした知り合いの編集者から押し付けられた新聞記者を雇った事からか?
昔馴染みの新聞社だからと信用してみれば・・・その記者のせいで自分の新聞社は【魔果】事件の犯人とつながりがあるかの様な他社の新聞の見出しに、今まで自分の新聞社と契約してくれていた人々は一気に去って行った。
カメラ1台で10年以上の毎月の支払いがあるのに、自分の新聞社では10台購入していた為その支払いも滞り、雇っていた記者たちにも給与が払えず、気付けばカメラごと記者たちは姿を消していた。

 新聞社は倒産。
しかし、カメラの支払いは残っている。【風雷商】の取り立てはそこら辺の高利貸しより性質が悪く、高利貸しに金を借りてカメラの支払いを済ませたが、次は高利貸しに追われる生活。
【風雷商】の取り立ても嫌な物だったが、高利貸しの取り立ても苦しい物があった。
妻には縁を切られ、親戚にも縁を切られた。

 ほとんどの家財が高利貸しに売り払われ、その中で『ロックヘル』に亡くなった父親が残した遺産の一部がある事が書かれた書類を見つけてロックヘルへ藁にも縋る思いで出向いた。
小人に『解約』すると告げ、父親の残した遺産のある部屋を小鬼に開けてもらうと、部屋にあったのは子供の頃に自分が着ていた服や玩具で溢れ返っていた。
父親の自分への愛情は解ったが、何の助けにもならないゴミだと悲嘆した。

 その部屋で項垂れていた時、岩喰虫が部屋を食い荒らし、穴の開いた隣りの部屋へ逃げ込むと綺麗な着物や壺が並んでいた。そこで頭を過ったのが『金目の物を盗んでも今なら岩喰虫が食い荒らした物とバレないのでは?』という物で頭で善悪を考えるより先に手は動いていた。

 父親の遺産を入れる為に持って来た大きめのカバンに次々と物を入れ込み、岩喰虫に気付いた小人達が騒ぎ出すと急いでロックヘルから逃げ出した。
10分もしない間にエフリの都市は岩喰虫に食い荒らされて廃墟と化していた。
他のエフリの都市に来ていた人間に紛れて逃げた。

 家に帰り盗んだ物を選別し、金になりそうな小さな宝石類は少し足を伸ばして別の街で売り払い金にした。
そして盗んだものの中に【刻狼】の印鑑を見つけた。
【刻狼】で該当するのは温泉大陸の【刻狼亭】だった。
そして、自分が雇った【魔果】事件の新聞記者は必要に【刻狼亭】の女将から金を強請り取ろうとして、逆に【刻狼亭】に犯行を暴かれ、【刻狼亭】は新聞でも称賛を受けていた。
ただし、【刻狼亭】の女将の写真は一切使わない様にと通達があり、使用した場合は訴えられると言われていた為に女将の写真は現像したまま何処かに仕舞い込んでいた筈だと頭の片隅で思い出す。
しかし、久々にまとまった金が手元にあったのでその事を忘れたのである。

 数日後に高利貸しが来て金を支払うと再び金に困る。
今、手元にある物は売り払うのが難しい物ばかりで闇市で流すしかなかった。
大した金にはならないと思っていたが、闇市でも高額の買取になり高利貸しに全ての借金を払い、それでも少しのゆとりがあった。

 しかし、それだけでは一生は生きてはいけない。
そこで再び【刻狼亭】の事を思い出す。なんとか利用できないか?と。
仕舞い込んだ女将の写真を取り出し、若い少女な事に驚き年齢を調べていくうちに子供が7人いる事がわかり、その子供の中に女の子が2人居る・・・これを女将の写真を使って何とかできないものか・・・と考えた末に、温泉大陸の遠縁にあたる親戚に話を持って行ったところ、名だたる名家などに釣書を送り込み上手くいけば【刻狼亭】との縁持ちを自分の手柄に出来るかもしれないという安易な考えを言われ、それでは無理があるのでは?と、その話は無かったことにした物の・・・。

 自分の新聞社をまた立ち上げる為に手元に残った金貨でもう一度やり直す為に倉庫を借りてそこを拠点に細々と新聞社としての仕事を開始し始めたが、一度ついて回った悪評はついて回り、すぐさままた借金地獄になっていた。
大白金貨6枚分の借金にもう身動きは取れない気がした。

 どうせ自棄になるなら!と、【刻狼亭】の女将の写真を釣書に付け、娘と婚約したかったら大白金貨6枚分を用意しろと貴族から商家から手広くばら撒き、動きのありそうな所には盗賊を潜り込ませて用意された大白金貨6枚分の金銭を奪いに行かせた。

 自分には悪党の才能でもあるのか?!と、いうほどに釣書に釣られた貴族や商家の多かった事に笑いが止まらなかった。しかし、そろそろ危ないか?と、思い数日後には拠点の倉庫から移動するつもりだったが、少しばかり遅すぎた様だ。

 取り囲まれ、罪状を挙げられ捕らえられて、ロデミックは思う。

「ああ、なんて運が無かったんだろうー・・・」

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