黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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18章

母と子

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 蜜籠りをしていたリュエールに呼び出しがあったのは朝早くの事だった。
母親の朱里が記憶が無くなり子供の頃の記憶にまで戻っているという話で、にわかには信じがたいが自分の父親がそういった冗談をいう人物では無い為にキリンの側を離れるのは後ろ髪を引かれる物があったものの何とか気力を振り絞って【刻狼亭】の料亭まで足を運んだ。

「悪いなリュエール」
「流石に母上の一大事に駆けつけない訳にもいかないでしょ。で、母上は?」
「森で寝ていたせいか少し熱が出て今は寝かせている」
「そう。それで状況的にはどうなってるの?」

 掻い摘んでリュエールに説明をしながら、リュエールも話を聞いて片眉を上げて渋い顔をする。
一番の問題は三つ子だろうとルーファスもリュエールも考える。ミルアやナルアは説明すれば判るが、三つ子は説明して判る年齢では無い。

「まぁ、従業員にも説明をしてなるべく母上の状況を理解してもらわないとね」
「ティル達には難しいだろうが、アカリに会わせない訳にもいかないからな」
「母上が元に戻るまで・・・落ち着くまで、僕もシューも手伝いに出るよ」
「お前達には迷惑ばかり掛けて本当にすまない・・・」
「僕はともかくシューは中々動かないだろうからフィリアをご飯炊きにでも屋敷に呼んでシューを動かした方が良いだろうね。キリンも手伝うだろうし」
「初めての蜜籠りなのに邪魔して悪い・・・」
「んーっ、まぁ、蜜籠りは1回きりじゃないから別にいいよ」

 寝室のドアが開くと朱里が目をこすりながら出てきてリュエールを見て「あ、リューちゃんだ」と言ってそのまま洗面所へ行ってしまう。
ルーファスが「ん?」という顔をしてリュエールがルーファスの顔を見る。

「母上、普通に僕の事分かってたね」
「記憶が戻ったのか?」

 少しして朱里がまた出てきて欠伸をしながらルーファスの横にやってくる。
顔の赤い朱里のおでこに手をあててまだ熱がありそうだと眉を下げてルーファスが「おはようアカリ」と声を掛ける。

「おはようございます・・・ルーファスさん、お友達?」

 その一言にルーファスとリュエールが顔を見合わせて小さく溜め息を吐く。

「オレの息子のリュエールだ。さっきリューちゃんと呼んでいただろう?」
 朱里が「わかんない」と首を傾げる。
焦っても仕方がないと、朱里の頭を撫でながら膝の上に乗せるといつもなら恥ずかしがる朱里が大人しくルーファスの胸に寄り掛かって、ぼぅとした顔をしている。

「えーと、母上・・・覚えてないかもしれないけど、息子のリュエールだよ」
「母上・・・?」
「うん。母上、焦らなくてもいいけど、早く思い出してね」

 目をパチパチさせながら、少し困った顔して朱里がルーファスを見上げる。
ルーファスが少し物悲し気な顔で笑って髪を撫でて「ゆっくり思い出そうな」と朱里のおでこにキスをすると、朱里がキスされた場所を手で押さえながら顔を赤くしてルーファスの胸に顔を埋めてしまう。

「この様子だと少し時間がかかりそうだね。僕が今日は仕事を回すから父上は屋敷の方に戻ってミルア達を安心させてあげてよ。きっと心配して寝てないだろうからさ」
「ああ、そうさせてもらう。何かあれば連絡をする」
「うん。そうして。時間があれば僕も様子を見に行くから」

 リュエールに後の事を任せて、朱里に毛布を被せてから抱き上げて【刻狼亭】を出る。
気温の低い朝の寒さに身震いすると、朱里が毛布から手を出してルーファスの頬に手をあててくる。

「温かい?」
「ああ。アカリの手は温かいな」
「今日はお家帰れるかな?」
「残念だが、まだかかりそうだな」
「良い子にしてたら帰れるかな?」
「アカリは十分いい子だよ。ただ、アカリは頭を打ってしまったからな。それがキチンと治るまでは帰れないだけだ」
「もう痛くないよ?」
「痛くなくても頭の怪我は怖いんだぞ?もうしばらく様子を見ような」
「はーい・・・」

 手を毛布に再び入れて朱里が頭まで毛布を被るとすんすんと小さく泣き声を押し殺す朱里の声が耳に届き、どうしたものかと思いつつ朱里の頭の上に頬を乗せながら屋敷に向かって歩いていく。
朱里が思い出す時また家族がもう居ないのだと泣かなくて済む様にと願う事しか出来ない。

 屋敷に戻ると玄関を開けた途端にミルアとナルアが飛んで来る。

「父上ー!おかえりなさいまし!」
「母上!どこに行っていたのですか?!」
「ああ、待て待て。お前達少し落ち着け、説明をするから」
 ワッと騒ぐミルアとナルアにルーファスが事前に連絡をすべきだったと眉を下げる。
2人には朱里を見つけたが医者に寄るから先に寝ていろとしか伝えていなかったのである。

 一先ず、朱里を部屋に連れて行き風呂と着替えを用意して、着替えが終わったらリビングに来るように言って部屋を出て行き、ミルアとナルアに説明をする。
2人はお互いに目で会話をして、少し見つめ合った後で胸を張る。

「わたくし達に任せて欲しいのです!」
「母上が記憶が戻るまではバッチリ母上の代わりをするのです!」

 言葉は頼もしい限りではあるが、一抹の不安が拭えないのもまた事実で、ルーファスは「程々に頼む」と声を絞り出すのが精一杯だった。
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