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22章
お嫁さまの氷竜
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ズシーン……ズシーン……重厚な音と振動が響き渡る___
「何? え、え? 何事!?」
「落ち着け、見て来る」
「ル、ルーファス、気を付けてね! 私、スーちゃんを見てきます!」
夜遅く、おそらくはこの夜空の色合いからして、深夜の三時四時というところだろうか? 突然の大きな音に跳び起きて、ルーファスが庭を見に行き、私は隣りの子供部屋のスクルードの所へ行く。
「ぷぅ……んきゅー」
ベビーベッドで小さくキューと声を出して、眠るスクルードは物音や振動には我関せず、という感じでホッと息を付いて、他の子供達の部屋を覗きに行くと振動ではなく、私が部屋のドアを開けた事で目を開けた。
「母上? どうしたの?」
「庭から凄い音がしたから、あなた達を心配して見に来たんだけど、寝ていたのならいいのよ」
「んー……凄い音?」
「えー、なに?」
ティルナールとエルシオンが目をこすりながら起き、窓から庭を見下ろす。
私も窓の方へ行くと、庭にはルーファスと氷の塊……グリムレインが立っていた。
「ふぁっ!? えぇええええ!!!!」
「えー……こんなに大きかったっけ?」
「うわー……」
私達三人が大きな声を出したのは仕方がないと思う。
だって、グリムレインの大きさが少し、いや、かなり大きくなっていて、よく庭に降りてこれたなぁという感じだ。
グリムレインの最大の大きさは六・五メートルだったと思うのだけど、十メートルではきかない大きさになっている。
「グリムレインどうしちゃったの!?」
「嫁! 嫁、助けて欲しいのだ! 体の大きさの制御が利かない」
助かったとばかりの声でグリムレインが困っているのがわかる。少しグリムレインが身動きするだけで、ズシンと地面が揺れ、「ひぇっ」と言って私と子供達が床に手をつく。
「グリムレイン、主君命令! サイズを小さくしなさい!」
大声で命令を下すと、主君命令の絶対的効果でジワジワとグリムレインの体は小さくなっていく。
まぁ、多少まだ大きいけれど、先程までの大きさに比べればマシ……ではあるんだけど……全体的に大きくなったというか、なんというか……まん丸?
「助かったのだ。制御が利かんとは……」
「えっと……グリムレイン、大丈夫なの?」
あの魚のタンタンを彷彿させる丸い姿……グリムレインってば、毒素を吸い取る魚にでもクラスチェンジをはたしてしまったのだろうか? しかし、それを本人に聞くのもなぁ……と、思っていると、ティルナールとエルシオンが声を上げる。
「うわっ! グリムレインが水餅みたい!」
「どっちかっていうと、水風船!」
「___っ!!!!?」
グリムレインがパカンと口を開ける。
あれはショックを受けた顔だなぁ……うーん。本当に北の方に涼みに行って、何があったんだろう?
パタパタと飛びながら私の所までグリムレインが飛んできて、いつもの定位置__頭の上に伸し掛かる。
ゴキッ___ブチッ。
鈍い音と共に、私は死の縁でたまに見る、あの白いモヤの掛かった世界を垣間見た、気がする。
ズキズキと鈍い痛みが頭でして、目をパチパチすると、いつの間にかルーファスが顔を覗き込んでいた。
「……あふぇ……?」
「大丈夫か!? ああ、頭を上げなくていい。そのままにしていろ」
「母上、おかしなところある? この手が何本に見える?」
「舌が回らない感じですか?」
少し、舌が痺れている感じがする。しかし、何でだろう? シュトラールとシルビアさんまで居る。
とりあえず、シュトラールが目の前で振る指は「二本」と指でチョキを作る。
ホッとした表情で三人に顔を覗かれ、小さく首をひねる。
「舌、ひびえふ……」
「ああ、舌がかなり切れていたからな。シュー、もう少し治せるか?」
「うん。頭の方に問題が無くて良かったよ。母上、口開けて……【回復】」
「アカリさん、ビックリしましたよ」
口を開けると、シュトラールが指を入れて回復魔法を施してくれる。
少しくすぐったいけど、舌の痺れが治まっていくのを感じて、ふぅと息を吐く。
「あの、えーと……あっ、グリムレインは?」
「アイツならショックを受けて海の中で大泣きしている」
それは、大変だ。水餅とか水風船とか……グリムレインを子供達が傷つけてしまった!!
ガバッと起き上がろうとすると、ルーファスにおでこを押されてそのまま寝た状態にさせられる。
「ルーファス、グリムレインに謝らなきゃ! きっと傷ついてる!」
「それは後だ。とにかく今は自分の体を回復させておけ」
「もう大丈夫だよ? って、いうか……何があったの?」
何となく、嫌な予感もするけど、今心配なのはグリムレインだ。あのドラゴンはああ見えて、意外と傷つきやすい繊細なところもある。
ルーファスが眉間にしわを寄せ、シュトラールは困った顔をし、シルビアさんは私に小さな手鏡を渡す。
手鏡の中の自分を見て、少し状況を察した。
ナイトガウンは首から下が血だらけ、目は白目の部分が血で染まっていて真っ赤、血は止まっているけれど、鼻血の跡と耳からも血の跡が見える。
これは派手にやらかしたみたいだ……回復魔法前の状態は少し想像したくない。
「えっと……、グリムレインが私の頭に乗った時に押しつぶされた感じ……かな?」
「大方そんなところだ。一応、アルビー達がグリムレインを慰めに海に行っているから、アカリはもう少し休んで、完全に大丈夫になったらグリムレインに腕輪で連絡をとってやるといい」
「いやいや、大丈夫だよ。それにこういうのは時間が開くほど、こじれるからすぐに連絡するよ」
「ハァ……それなら、せめて着替えて顔も洗ってからの方が良いだろう」
おお、それもそうだ。
このままじゃグリムレインに罪悪感を持たせてしまう。それはいけない。
「母上、でも本当によく休んでなよ? 少し頭の中身出てたんだから」
「……はい?」
「アカリさん、頭蓋骨割ってしまっていたんです」
「ふぇぇぇ!?」
聞いてはいけない事を聞いてしまった様な?
え? 頭の中身って出たらヤバくない? これは聞かなかった事にしよう。うん。
もしかして、蘇生魔法させられたりしたんじゃ……?
チラリとシュトラールを見れば、困った顔をしているし、手っ取り早く手鏡をもう一度見る。
何十年と見慣れた自分の顔……うーん。
元々、一度、蘇生魔法で若くなっているから自分が若くなっているかどうか分からない。
「シューちゃん、蘇生した?」
「ううん。その一歩手前だったよ。父上が風魔法の回復魔法で応急処置が早かったから」
「良かった……蘇生でまた若くなったら、また怪物扱いされちゃうとこだった」
「まぁ、ティルとエルが母上の姿をバッチリ見ちゃってるから、少し安心させてあげてよ」
「はうっ、それは大変!」
それから、シュトラールとシルビアさんが帰っていき、ルーファスに何かあると怖いからと入浴を手伝ってもらって着替えを終えて、子供達に元気になった姿を見せて、それからグリムレインに連絡をした。
グリムレインは終始泣き続けていて、自分を責めていたから慰めるのに時間が掛かった。
どうも、グリムレインの体のサイズは小さくなっていたのだけれど、重さまでは変りなくて、いつもの調子で頭に乗ったら、私が重さに潰れてしまったらしい。
軽く乗っただけだったので、圧死は無かったけど、一歩手前までいってしまったので、罪悪感でいっぱいのようだ。
怒ってないし、大丈夫。ようやく帰ってきたんだから顔をちゃんと見せてと、説得してグリムレインはようやく屋敷に帰ってきた。
「嫁……我のせいで悪かった……すまん……」
「気にしてないって言っているでしょう? もう、困ったドラゴンね」
しゅんっとしょげて、目から氷の涙をポロポロ溢れさせているグリムレインは小さな子供の様だ。
「ふふっ、氷の涙で部屋が埋まっちゃうよ? 泣き止んで。私達、家族じゃない。家族なんだから気にしないの」
「嫁ぇ……すまんかった」
「でも、ダイエットしなきゃねぇ。少し太りすぎね」
グリムレインの丸い体をつんつんとつつくと、アルビー達他のドラゴンがうんうんと頷いた。
どうもグリムレインは魔獣の王の落とした魔石の少し大きな欠片が落ちた冷たい湖で、欠片がまだ消えずに残っていたのを食べてしまったらしく、魔力の栄養過多で太ってしまって、自分でも制御出来なくなってしまったらしい。
食いしん坊なんだから、困ったドラゴンだ。
「何? え、え? 何事!?」
「落ち着け、見て来る」
「ル、ルーファス、気を付けてね! 私、スーちゃんを見てきます!」
夜遅く、おそらくはこの夜空の色合いからして、深夜の三時四時というところだろうか? 突然の大きな音に跳び起きて、ルーファスが庭を見に行き、私は隣りの子供部屋のスクルードの所へ行く。
「ぷぅ……んきゅー」
ベビーベッドで小さくキューと声を出して、眠るスクルードは物音や振動には我関せず、という感じでホッと息を付いて、他の子供達の部屋を覗きに行くと振動ではなく、私が部屋のドアを開けた事で目を開けた。
「母上? どうしたの?」
「庭から凄い音がしたから、あなた達を心配して見に来たんだけど、寝ていたのならいいのよ」
「んー……凄い音?」
「えー、なに?」
ティルナールとエルシオンが目をこすりながら起き、窓から庭を見下ろす。
私も窓の方へ行くと、庭にはルーファスと氷の塊……グリムレインが立っていた。
「ふぁっ!? えぇええええ!!!!」
「えー……こんなに大きかったっけ?」
「うわー……」
私達三人が大きな声を出したのは仕方がないと思う。
だって、グリムレインの大きさが少し、いや、かなり大きくなっていて、よく庭に降りてこれたなぁという感じだ。
グリムレインの最大の大きさは六・五メートルだったと思うのだけど、十メートルではきかない大きさになっている。
「グリムレインどうしちゃったの!?」
「嫁! 嫁、助けて欲しいのだ! 体の大きさの制御が利かない」
助かったとばかりの声でグリムレインが困っているのがわかる。少しグリムレインが身動きするだけで、ズシンと地面が揺れ、「ひぇっ」と言って私と子供達が床に手をつく。
「グリムレイン、主君命令! サイズを小さくしなさい!」
大声で命令を下すと、主君命令の絶対的効果でジワジワとグリムレインの体は小さくなっていく。
まぁ、多少まだ大きいけれど、先程までの大きさに比べればマシ……ではあるんだけど……全体的に大きくなったというか、なんというか……まん丸?
「助かったのだ。制御が利かんとは……」
「えっと……グリムレイン、大丈夫なの?」
あの魚のタンタンを彷彿させる丸い姿……グリムレインってば、毒素を吸い取る魚にでもクラスチェンジをはたしてしまったのだろうか? しかし、それを本人に聞くのもなぁ……と、思っていると、ティルナールとエルシオンが声を上げる。
「うわっ! グリムレインが水餅みたい!」
「どっちかっていうと、水風船!」
「___っ!!!!?」
グリムレインがパカンと口を開ける。
あれはショックを受けた顔だなぁ……うーん。本当に北の方に涼みに行って、何があったんだろう?
パタパタと飛びながら私の所までグリムレインが飛んできて、いつもの定位置__頭の上に伸し掛かる。
ゴキッ___ブチッ。
鈍い音と共に、私は死の縁でたまに見る、あの白いモヤの掛かった世界を垣間見た、気がする。
ズキズキと鈍い痛みが頭でして、目をパチパチすると、いつの間にかルーファスが顔を覗き込んでいた。
「……あふぇ……?」
「大丈夫か!? ああ、頭を上げなくていい。そのままにしていろ」
「母上、おかしなところある? この手が何本に見える?」
「舌が回らない感じですか?」
少し、舌が痺れている感じがする。しかし、何でだろう? シュトラールとシルビアさんまで居る。
とりあえず、シュトラールが目の前で振る指は「二本」と指でチョキを作る。
ホッとした表情で三人に顔を覗かれ、小さく首をひねる。
「舌、ひびえふ……」
「ああ、舌がかなり切れていたからな。シュー、もう少し治せるか?」
「うん。頭の方に問題が無くて良かったよ。母上、口開けて……【回復】」
「アカリさん、ビックリしましたよ」
口を開けると、シュトラールが指を入れて回復魔法を施してくれる。
少しくすぐったいけど、舌の痺れが治まっていくのを感じて、ふぅと息を吐く。
「あの、えーと……あっ、グリムレインは?」
「アイツならショックを受けて海の中で大泣きしている」
それは、大変だ。水餅とか水風船とか……グリムレインを子供達が傷つけてしまった!!
ガバッと起き上がろうとすると、ルーファスにおでこを押されてそのまま寝た状態にさせられる。
「ルーファス、グリムレインに謝らなきゃ! きっと傷ついてる!」
「それは後だ。とにかく今は自分の体を回復させておけ」
「もう大丈夫だよ? って、いうか……何があったの?」
何となく、嫌な予感もするけど、今心配なのはグリムレインだ。あのドラゴンはああ見えて、意外と傷つきやすい繊細なところもある。
ルーファスが眉間にしわを寄せ、シュトラールは困った顔をし、シルビアさんは私に小さな手鏡を渡す。
手鏡の中の自分を見て、少し状況を察した。
ナイトガウンは首から下が血だらけ、目は白目の部分が血で染まっていて真っ赤、血は止まっているけれど、鼻血の跡と耳からも血の跡が見える。
これは派手にやらかしたみたいだ……回復魔法前の状態は少し想像したくない。
「えっと……、グリムレインが私の頭に乗った時に押しつぶされた感じ……かな?」
「大方そんなところだ。一応、アルビー達がグリムレインを慰めに海に行っているから、アカリはもう少し休んで、完全に大丈夫になったらグリムレインに腕輪で連絡をとってやるといい」
「いやいや、大丈夫だよ。それにこういうのは時間が開くほど、こじれるからすぐに連絡するよ」
「ハァ……それなら、せめて着替えて顔も洗ってからの方が良いだろう」
おお、それもそうだ。
このままじゃグリムレインに罪悪感を持たせてしまう。それはいけない。
「母上、でも本当によく休んでなよ? 少し頭の中身出てたんだから」
「……はい?」
「アカリさん、頭蓋骨割ってしまっていたんです」
「ふぇぇぇ!?」
聞いてはいけない事を聞いてしまった様な?
え? 頭の中身って出たらヤバくない? これは聞かなかった事にしよう。うん。
もしかして、蘇生魔法させられたりしたんじゃ……?
チラリとシュトラールを見れば、困った顔をしているし、手っ取り早く手鏡をもう一度見る。
何十年と見慣れた自分の顔……うーん。
元々、一度、蘇生魔法で若くなっているから自分が若くなっているかどうか分からない。
「シューちゃん、蘇生した?」
「ううん。その一歩手前だったよ。父上が風魔法の回復魔法で応急処置が早かったから」
「良かった……蘇生でまた若くなったら、また怪物扱いされちゃうとこだった」
「まぁ、ティルとエルが母上の姿をバッチリ見ちゃってるから、少し安心させてあげてよ」
「はうっ、それは大変!」
それから、シュトラールとシルビアさんが帰っていき、ルーファスに何かあると怖いからと入浴を手伝ってもらって着替えを終えて、子供達に元気になった姿を見せて、それからグリムレインに連絡をした。
グリムレインは終始泣き続けていて、自分を責めていたから慰めるのに時間が掛かった。
どうも、グリムレインの体のサイズは小さくなっていたのだけれど、重さまでは変りなくて、いつもの調子で頭に乗ったら、私が重さに潰れてしまったらしい。
軽く乗っただけだったので、圧死は無かったけど、一歩手前までいってしまったので、罪悪感でいっぱいのようだ。
怒ってないし、大丈夫。ようやく帰ってきたんだから顔をちゃんと見せてと、説得してグリムレインはようやく屋敷に帰ってきた。
「嫁……我のせいで悪かった……すまん……」
「気にしてないって言っているでしょう? もう、困ったドラゴンね」
しゅんっとしょげて、目から氷の涙をポロポロ溢れさせているグリムレインは小さな子供の様だ。
「ふふっ、氷の涙で部屋が埋まっちゃうよ? 泣き止んで。私達、家族じゃない。家族なんだから気にしないの」
「嫁ぇ……すまんかった」
「でも、ダイエットしなきゃねぇ。少し太りすぎね」
グリムレインの丸い体をつんつんとつつくと、アルビー達他のドラゴンがうんうんと頷いた。
どうもグリムレインは魔獣の王の落とした魔石の少し大きな欠片が落ちた冷たい湖で、欠片がまだ消えずに残っていたのを食べてしまったらしく、魔力の栄養過多で太ってしまって、自分でも制御出来なくなってしまったらしい。
食いしん坊なんだから、困ったドラゴンだ。
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