黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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24章

謝罪とチョコレート

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 従業員の宿舎の食堂にお土産のチョコレートを置き、食堂の人に挨拶をして旅館へ向かうとロビー前に明るい茶色の三つ編み頭を見付ける。

「ペテロピ」
「あ、ああ! ミヤ! どうしたの……って、も、申し訳ございません!! 大女将様! 大旦那様!」

 髪色が違ったことで少し私と判らなかったみたいだけど、やはり、萎縮いしゅくされてしまった。
頭を下げたまま耳まで赤くしているペテロピの頭をなでなでと撫でると、恐る恐るペテロピが顔を上げる。

「こんにちは。ミヤでいいんですよ? ふふっ、ペテロピに騙していたことを謝りたくて、そろそろお昼時間でしょ? 一緒に食事でもどう?」
「あの、その……」

 オロオロするペテロピに、従業員が「そろそろ昼飯なんだし、行っておいで」と笑ってくれる。
ペテロピの手を繋いで「お借りしますねー」と手を振って連れ出すと、ペテロピがあわあわしていたけど気にしないことにしておこう。

「あのね。この間の緊急招集の時は大女将ぶっていたけど、私はペテロピの見たままの私だから、なにも変わらないんだよ?」
「あの、……はい」
「もぅ、ペテロピ。私はペテロピがあの時、みんなの前でミヤを信じて声を上げてくれたこと嬉しかったんだよ? お友達だと思っているの」
「……友達?」
「うん。私すっごくオバサンだけど、仲良くしてくれたら嬉しいなって」

 ペテロピの足が止まって、うるっとしたサーモンピンクの目から涙が零れ落ちる。

「ウチ、ここに来て、知り合い居なくて、ミヤだけが友達で……でも、ミヤ、偉い人で……ウチ……」
「泣かないで。私は偉くないんだよ? 隠居した身だから、実際【刻狼亭】は息子のリューちゃんに引き継いでもらって、本来は口を挟むようなことは出来ないんだけど、あの時は流石に私も頭にきてて、つい出張りました! うん。私は小鬼ちゃん達の復讐をしたかったし!」

 ガッツポーズで笑うと、ペテロピもへにゃっと笑ってくれて、ルーファスがペテロピに布巾を渡して顔を拭かせていた。
意外とルーファス優しい……かな? 行きがけはあれだけ嫉妬するって騒いだのに。

「なんか、ミヤって大女将って感じじゃないね」
「ふふっ、がらじゃないしね。たまたま、【刻狼亭】の当主が番だっただけだから、元々庶民も庶民で一部屋しか無いようなボロ屋で生きてた人間だもの」

 ルーファスが「オレも一部屋しかない場所で暮らしていたが?」と言うけど、ルーファスのは【刻狼亭】付きの大きなお部屋で、私のボロアパートと比べちゃいけない。
そんなことを言い合っていたら、ペテロピが「やっぱりミヤだぁ~」とホッとしたように声を出してくれた。

 宿舎の食堂でチョコレートの箱をペテロピに渡す。

「騙してたお詫びです! お受け取り下さい!」
「いいの? うわぁ……可愛い箱。凄いね、綺麗……」
「はい。お納めください」

 薔薇の形をした飴細工の箱の中にチョコレートが入っているミルアとナルアおススメの女の子人気ナンバーワン商品らしく、これを男性が買って女性に渡す……というのが最近の流行らしい物をチョイスしました!
二人の意見を聞いて買って良かった! ペテロピが乙女の顔でうっとりですよ!

「あのね、凄く嬉しい……食べるのが勿体ない感じ」
「わかります! でも美味しいので食べてくださいね」
「うん。これ、ウチが前に宝石みたいって言ってたお店の?」
「はい。丁度、今うちの娘二人がそこでお店番していて、選んでもらったんです」
「え?」
「はい?」

 驚いた顔のペテロピに私は首を傾げる。

「娘……って、ミヤ、旦那様達以外に子供いたの!?」
「はい。ペテロピも知っているリュエールにシュトラールの双子二十三歳に、女の子の双子でミルア、ナルア十七歳でしょ、ティルナール、エルシオン、ルーシーの三つ子で男の子二人に女の子で十一歳ね。あとは男の子で二歳のスクルードがいるよ」
「……ミヤって、何歳なの……?」
「うふふー。今度、娘達を紹介するね。きっと年齢的に合うはずだし」
「あ、はい。ミヤって……親しみやすいなーって、思うのは『お母さん』だからなんだね」
「ふふっ。ペテロピも遠慮なく故郷のお母さんが恋しくなったら、甘えてくださいね! 【刻狼亭】の従業員は家族みたいなものですから!」

 胸を張って言うと、ペテロピに「えー、それはどうかなー? ミヤは妹って感じにも思えるよ」と言われてしまい、私の年齢が行方不明状態である。

「大旦那様も若いですよね。息子さんのお兄さんでも通りそう……」
「でしょー! ルーファスはシューちゃんと並ぶと兄弟みたいで……そこへ、ティルやエルも加わると、四兄弟って感じで、うふふー」

 思わず顔がニヤけていると、丁度良くシュトラールが食堂に入ってきた。

「シューちゃん! こっち来てー!」
「なぁーにー? どうしたの母上」

 シュトラールとルーファスを並べて「ねっ?」と、ペテロピに言えばコクコクとペテロピが頷く。
我が家のイケメンですよー! ここにアルビーの人型の姿を加えれば最強かも?

「えーと、母上なに?」
「シューちゃん、見習いのペテロピだよ。今、この間のことを謝ってたの」
「ああ、あの時に母上を庇ってた子かぁ。あの時はありがとうねー」
「いえいえ。ウチは、ただミヤを助けたくて……助けにもならなかったけど……」

 ペテロピはいい子だなぁ。うちの息子達が結婚して無きゃお勧めしたいくらい。むしろティル達……は流石に若すぎるかな? いつかいい人が居たらペテロピにおススメしよう。

「うちの番の助けになってくれたこと、改めて礼を言う」
「いいえ、大旦那様、滅相もありませんっ!!」

 ルーファスが頭を下げると、ヒィッと小さく声を上げて、ペテロピが青ざめている。
やっぱり、ルーファスは怖い感じなのかな? 冒険者でもヤバいタイプって怖がってたし。

「そういえば、シューちゃん、今日は診察所は?」
「今日は小鬼見習いのその後の目の様子を一応診に来たんだよ。んで、ついでにご飯を食べにきたの」
「そっかー。小鬼ちゃん達は大丈夫そう?」
「うん。みんな大丈夫。お礼にいっぱい飴もらったけど、母上もいる?」
「へぇーあの子達が。うん。頂戴~」

 シュトラールから丸いカラフルな飴を手に乗せてもらい、ペテロピの手にも飴を乗せて、自分の口に赤い飴を入れる。
イチゴ味……かと、思ったらサクランボ味だった。うん、ほんのり爽やかな酸味が美味しい。
小鬼ちゃん達の目も心配は無いようだし、良かった良かった。
うんうんと頷いていると、ルーファスが口を寄せてきて口の中に舌を入れてくると、ひと舐めして唇を離した。

「サクランボ味か」
「うん。イチゴかと思ったら、違ったみたい」

 ペテロピが顔に手を当てていて、シュトラールが半目で私達を見ている。

「うん? どうかしたの?」
「み、ミヤ、人前でそういうのは、ひ、控えた方がいいと思う……」
「ハッ、うわぁぁ! そうだね! うん、ごめんね」

 濃厚なキスじゃなくて直ぐに口が離れたから、気にしなくなってた辺り、私もヤバい。
軽いキスくらいなら、平気でやるようになっている自分が怖い……これは蜜籠りし過ぎたせいだと思いたい。

「父上、匂いでわかるでしょ?」
「さて、どうだかな?」

 そんな会話を父子でしていている二人に、私はまたポンチョを頭から被ってしまった。
穴があったら入りたい……。
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