黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
806 / 960
24章

恋仙人

しおりを挟む
 ハガネの作ってくれたもち米たっぷりのタケノコと角煮にワルドというシャクシャクした食感の慈姑くわいみたいな球根っぽい食材を使ったちまきを食べつつ、ハガネに足湯でお饅頭まんじゅう餡子あんこをアリクイみたいな獣人に食べられたことを話すと、珍しくハガネが糸目を開いていた。

「んー、いやぁー、まさかなぁ……」
「ハガネ知ってる人?」
「あー、知り合いってわけじゃねぇんだけどよ。『恋仙人』って言われてるアリクイ族の爺かもしれねぇなーって」
「なにそのメルヘンな名前」
「その爺の特殊能力からきてんだよ。番を見付ける能力」
「ふぁー! それ凄い能力だね」

 番が見つけられるなんて、結婚相手に悩んでいる人達には喉から手が出るくらいの能力な気がする。
でも、そんな人がどうして温泉大陸に来たんだろう? いや、ただの観光とか温泉を楽しみに来たのかもしれないけど。

「うーっ、スーはイーヤーにゃぁぁぁ!」
「あはは、お饅頭取られたの、根に持ってるねぇ」
「食いもんの恨みは恐ろしいかんなー。スーもやり返せるようになろうな」

 ぷくぅと、ふくふく頬っぺたをぷっくりさせてスクルードが隠すようにちまきをもちもち食べている。
食べている姿がリスみたいで可愛い。でも、お行儀が悪いから隠さずに食べて欲しいかも? 注意すべきが悩んでいると、「アカリの子供の頃に頬張っていた写真に似ているな」と声がして、ルーファスが屋敷に戻って来ていた。

「もぅ、私はこんなに頬張ってないよ?」
「そうか? 元祖、食いしん坊アカリちゃんだからなぁ」
「もぅ~っ、ルーファス~っ」
「クククッ、まぁこうした日常を撮っておくべきなんだろうな」

 ルーファスが着物のふところからカメラを出して、スクルードの粽に夢中な姿を写真に撮って、私とハガネも一緒に写るように撮ってくれる。
交替とばかりにハガネがルーファスと一緒の写真も撮ってくれて、これでアルバムに新しい写真が増えそうだ。
私のアルバムを見てから、ルーファスはこうしてカメラを持ち歩いてよく子供達を撮るようになった。
孫のレーネルくんやルビスちゃん達も良く撮っているけど。
こういうところを見ると、田舎のお爺ちゃんお婆ちゃんが孫の写真を撮りたがるのが分かる気がする。

「しかし、スーは随分、ご機嫌斜めだな」
「さっきね、街中でお饅頭を食べていたら、中の餡子だけ後ろから知らない獣人の人に食べられちゃったの。それも二個も」
「それはスーの機嫌が悪くなるわけだな」

 ルーファスがスクルードを抱っこして膝の上に乗せると、スクルードが粽を上に持ち上げると「あい!」と言って、ルーファスが一口食べるとにへらっと笑って、私にも「あい!」とすすめてくる。
全部食べて良いのに、分けることを覚えてくれたのは良いことだ。

 スクルードは一人っ子のようなところがあるから、他人と分けるというのはあまりなく、用意されて目の前に出された物を一人で食べるという感じだったんだけど、レーネルくんやルビスちゃん達のおかげで、『他の人にも分け与える』を覚えたところだったりする。

 他の兄姉は双子や三つ子だから分けるのは当たり前だったから、スクルードは心配していたけど、やはり年齢の近い子が側に居ると成長するみたいである。
まぁ、流石に、いきなり後ろから餡子を盗られたのは怒っているけどね。

「んーっ、スーちゃん美味しい。分けてくれてありがとう」
「んふーっ」
「スーも、これでお兄さんになっても大丈夫だな」
「んふーっ」

 スクルードが良い顔しているからとりあえずツッコミは止めておくけど、スクルードにあまり期待させないであげて欲しい。
まだ出来てないですよー。まぁ、次の子が出来そうなくらい今回の蜜籠りは凄いけど……冬を乗り切る前に私の腰が持つだろうか?
私も子供の頃は「朱里はこれでいつでもお姉ちゃんだね」を何度聞いたか……妹が生まれるまでの涙ぐましい私の『お姉ちゃん』行動の数々……良い様に両親とお祖母ちゃんに教育されていたなぁと、大人になってわかる……。

「しかし、幼子の饅頭を餡だけ盗むとは随分な奴がいる者だな」
「あっ、うん。『恋仙人』じゃないかってハガネが……」

 肩眉を上げてルーファスがハガネを見て、ハガネは粽の竹の皮を取りながら、「かもしれねぇっつーだけだよ」と、もしゃっと食べる。

「ルーファスも『恋仙人』知ってるの?」
「ああ、昔、オレの番が現れないのを心配した年寄り連中がこの大陸に勝手に呼び寄せたことがある」
「へぇー。で、どうなったの?」
「散々、我が儘放題の好き勝手に飲み食いして、オレの番は居ないと告げて帰っていった」
「あらら。偽物だったんだね。うふふふっ」
「そそ、んで、そいつアリクイの獣人だったから、そうじゃねぇーかな?って思っただけなんだけどよ。顔見てねぇから判んねぇけど、まぁ、会いたくもねぇーけどよ」

 ルーファスは眉間にしわを寄せているし、ハガネも首を振っている。
あまり会いたくない人の様だ。

「ハガネはあのアリクイに散々コキ使われたからな……」
「あの爺さん、何気に何処にでも現れて、あれ食いたいアレ持ってこいうるさかったしな」
「あらまぁ……ハガネが振り回されるのって珍しいね」
「そんだけ、あの爺さんは食わせ者なんだよ」

 ブスッとした顔のハガネにスクルードが粽を「あい!」と渡して、「あんがと」とハガネが粽に齧りついて、自分の粽をスクルードに向けて、食べ合いっこ状態でニィッと二人で笑っている。
仲良しの二人に、ほっこりしつつ、これでスクルードがお饅頭を盗られたことを忘れてくれれば万々歳である。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。