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25章
おヨメさまと九人目の子供
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産医さんとシルビアさんに私と赤ちゃんの二人は体をしっかり見て貰い、太鼓判を押された。
とりあえず、赤ちゃんの体は内臓等も二ヶ月という期間でもしっかり機能していて、他の赤ちゃんと大差は無いらしいのは一安心である。
私の体は子宮の収縮も治まっていて、悪露という出産後に排出されるものも無くなっていたので、女神様のサービスと言うのがこれなのかもしれない。クーポン券はわからないけど、多分、言葉の綾かな? 変な女神様だったし。
産医さんとシルビアが屋敷から帰っていき、家族に新しい家族のお披露目をする為に大広間に集まってもらった。
一番最初に赤ちゃんを見せる順番は決まっていた。
「ほら、スー。お前の妹だぞ」
「うー? スーの?」
「そうだよ。スーちゃんの妹だよ。スーちゃんは今日からお兄ちゃんだよ」
「にーぃ?」
リュエールとシュトラールを見て、コテンと首を傾げてリュエールとシュトラールに「スーが、にーぃになったんだよ」「スー、にーぃおめでとう」と二人に頭を撫でられる。
「スー、にーぃ?」
「そうだぞ。スーが、この子のお兄さんだ」
「スーちゃん、ほら触ってあげて」
赤ちゃんをスクルードの前に見せると、ちょんっと触ってはルーファスの後ろに隠れて、少し照れて目を瞑って口元を二―ッと笑ってみせるスクルードに、可愛いなぁとニマニマ顔が止まらない。
「見せてくださいまし~。可愛いのですわー」
「小さいのですわー。でも、個性的な髪色ですの」
ミルアとナルアは「女の子の姉妹ですのー」と「可愛いお洋服が必要ですわ!」とキャイキャイはしゃいでいる。
リュエールとシュトラールは自分達の子供がいるからか、今更、妹が増えたところで動じないようだ。
「姉上達ははしゃぎ過ぎだよ! もう、赤ちゃんがビックリしちゃうよ?」
「まぁ、エルは生意気ですわ」
「エルこそ、その尻尾ははしゃぎ過ぎですわよ?」
「そりゃあ、妹が出来たんだしね。ルーシーは妹だけど、三つ子だし、妹って感じじゃないしね」
最近までギルさんの所で貴族の勉強をしていたエルシオンも、屋敷に戻って来て、お兄さんの顔でスクルードを撫でて「スーもお兄さんだね」と笑い、赤ちゃんを覗き込む。
キリンちゃんとレーネルくんも「見せてください」と「可愛い」と声を掛けてくれる。
「うちのシャルの遊び相手になってね」
「ふふっ、こちらこそ。レーネルくん、シャルちゃん、良い遊び相手になってあげてね」
「はい。おばあさま」
「お義母さん、お名前はどうするんですか?」
「考え中なんだけど、春生まれだし、可愛い名前がいいかなーって」
「春の花の名前とかですか?」
「ルンルンパンダ子ちゃ……もがっ!!」
ハガネが「アカリはなんか食って、体を休めとけ」と口にバナナ饅頭を詰め込まれた。
いきなり何をするのか? この従者は……でも、バナナ饅頭美味しい。
今まであまり見向きもされなかったミシリマーフ国のバナナが、最近は温泉大陸の温泉水のビニール農園で作られるようになって年中採れるようになったとかで、ちょっとしたバナナブームが温泉大陸に起きているらしい。
うまうま。
「ふぃー。まぁ、花の名前で「ル」が付くもんなら、変な名前はねぇんじゃねえのか?」
「そうだな。後で少し調べてみるか」
ハガネとルーファスが花の名前で固まりそうなので、私も一応参加しておこう。
バナナ饅頭を飲み込んで、手を上げる。
「はいはい! 3月の花、ツルニチソウ! 花言葉は楽しき思いで! 旅行中だったし、ツルちゃんでどうでしょう!」
「アカリ、饅頭食って落ち着け」
「他に3月や春の花は無いのか?」
ツルちゃん可愛いと思うんだけどなぁ……花言葉もピッタリだし。
「んーっ、他はアルメリアとか? 花言葉は思いやり。後はー……ユーフォルビア、ルピナス、アスペルラ、とか色々あるけど……やっぱりツルちゃん!!」
「うっ!」
「うっ」って、今、うって言ったのは誰なのやら?
「ルーファス。可愛い娘に可愛い名前でしょ?」
「ああ、そうなんだが……アカリは自分が「ツル」と呼ばれて、嬉しいか?」
「んー、つーちゃん呼びだね!」
「愛称呼びではなく、ツルと呼ばれるんだぞ?」
「んー、少しお婆ちゃんっぽいかなぁ? でも今は古い名前も流行って聞くし」
「それなら、ツルニチソウにアカリのアを入れて、ルチアとかはどうだ?」
「でも、我が家ルから始まる名前多いし……」
「だーっ、アカリは少し落ち着けって」
ハガネに止められて、「だって、名前早く決めてあげたいし」と言ったら、家族総出で紙を用意して赤ちゃんの名前候補を書き始める。
私はツルちゃんに一票である。紙に書いて、ハガネが持っている空き箱に入れていく。
ついでに、学園に居るティルナールとルーシーにも候補の名前を聞いたところ「ハルカ」「ハルシラ」とハルを入れるようだ。
ハガネが二人の候補の名前も書き、アクエレインとグリムレインも参加するかを聞いたら参加をするというので、暫く待っていると旧女将亭から飛んできて、紙に二人も名前を書いていく。
「良いか……恨みっこ無しだからな?」
「いや、流石に変な名前は却下するぞ?」
「ハガネ! 私の念を感じ取って!」
「あー、アカリのは何となくわかるから大丈夫だ」
流石、私の一番の従者!!
「んじゃ、アカリ、悪ぃな。ここは公平にいくかんな」
「えーっ!」
ハガネが空き箱から紙を出す。
『コハル』
「コハルになったけどよ……意義のある奴は挙手するよーに」
「コハル、小春ちゃんかー。小さい春……この季節なら、丁度いい名前だねぇ」
「まぁ、多少、東国風ではあるが、コハル・トリニアなら呼び辛くはないな」
「んじゃ、コハルで良いのか?」
ルーファスを見れば、赤ちゃんを見ながら「コハルか……」とふむふむ言っているので、良さそうだ。
「では、我がトリニア家の九番目の子供はコハルだ」
九番目の子供の名前は、コハル・トリニアに決定しました!
和風な名前ではあるけれど、東国の近いここら辺では変な名前では無いし、良いかな?
「やった! ボクの付けた名前だー!」
エルシオンが親指をピッと立てて笑うと、ティルナール達にも腕輪で報告をして、名前会議は無事に終了した。
ツルちゃんでも可愛かったのにねー? と、思わなくもないけど。
とりあえず、赤ちゃんの体は内臓等も二ヶ月という期間でもしっかり機能していて、他の赤ちゃんと大差は無いらしいのは一安心である。
私の体は子宮の収縮も治まっていて、悪露という出産後に排出されるものも無くなっていたので、女神様のサービスと言うのがこれなのかもしれない。クーポン券はわからないけど、多分、言葉の綾かな? 変な女神様だったし。
産医さんとシルビアが屋敷から帰っていき、家族に新しい家族のお披露目をする為に大広間に集まってもらった。
一番最初に赤ちゃんを見せる順番は決まっていた。
「ほら、スー。お前の妹だぞ」
「うー? スーの?」
「そうだよ。スーちゃんの妹だよ。スーちゃんは今日からお兄ちゃんだよ」
「にーぃ?」
リュエールとシュトラールを見て、コテンと首を傾げてリュエールとシュトラールに「スーが、にーぃになったんだよ」「スー、にーぃおめでとう」と二人に頭を撫でられる。
「スー、にーぃ?」
「そうだぞ。スーが、この子のお兄さんだ」
「スーちゃん、ほら触ってあげて」
赤ちゃんをスクルードの前に見せると、ちょんっと触ってはルーファスの後ろに隠れて、少し照れて目を瞑って口元を二―ッと笑ってみせるスクルードに、可愛いなぁとニマニマ顔が止まらない。
「見せてくださいまし~。可愛いのですわー」
「小さいのですわー。でも、個性的な髪色ですの」
ミルアとナルアは「女の子の姉妹ですのー」と「可愛いお洋服が必要ですわ!」とキャイキャイはしゃいでいる。
リュエールとシュトラールは自分達の子供がいるからか、今更、妹が増えたところで動じないようだ。
「姉上達ははしゃぎ過ぎだよ! もう、赤ちゃんがビックリしちゃうよ?」
「まぁ、エルは生意気ですわ」
「エルこそ、その尻尾ははしゃぎ過ぎですわよ?」
「そりゃあ、妹が出来たんだしね。ルーシーは妹だけど、三つ子だし、妹って感じじゃないしね」
最近までギルさんの所で貴族の勉強をしていたエルシオンも、屋敷に戻って来て、お兄さんの顔でスクルードを撫でて「スーもお兄さんだね」と笑い、赤ちゃんを覗き込む。
キリンちゃんとレーネルくんも「見せてください」と「可愛い」と声を掛けてくれる。
「うちのシャルの遊び相手になってね」
「ふふっ、こちらこそ。レーネルくん、シャルちゃん、良い遊び相手になってあげてね」
「はい。おばあさま」
「お義母さん、お名前はどうするんですか?」
「考え中なんだけど、春生まれだし、可愛い名前がいいかなーって」
「春の花の名前とかですか?」
「ルンルンパンダ子ちゃ……もがっ!!」
ハガネが「アカリはなんか食って、体を休めとけ」と口にバナナ饅頭を詰め込まれた。
いきなり何をするのか? この従者は……でも、バナナ饅頭美味しい。
今まであまり見向きもされなかったミシリマーフ国のバナナが、最近は温泉大陸の温泉水のビニール農園で作られるようになって年中採れるようになったとかで、ちょっとしたバナナブームが温泉大陸に起きているらしい。
うまうま。
「ふぃー。まぁ、花の名前で「ル」が付くもんなら、変な名前はねぇんじゃねえのか?」
「そうだな。後で少し調べてみるか」
ハガネとルーファスが花の名前で固まりそうなので、私も一応参加しておこう。
バナナ饅頭を飲み込んで、手を上げる。
「はいはい! 3月の花、ツルニチソウ! 花言葉は楽しき思いで! 旅行中だったし、ツルちゃんでどうでしょう!」
「アカリ、饅頭食って落ち着け」
「他に3月や春の花は無いのか?」
ツルちゃん可愛いと思うんだけどなぁ……花言葉もピッタリだし。
「んーっ、他はアルメリアとか? 花言葉は思いやり。後はー……ユーフォルビア、ルピナス、アスペルラ、とか色々あるけど……やっぱりツルちゃん!!」
「うっ!」
「うっ」って、今、うって言ったのは誰なのやら?
「ルーファス。可愛い娘に可愛い名前でしょ?」
「ああ、そうなんだが……アカリは自分が「ツル」と呼ばれて、嬉しいか?」
「んー、つーちゃん呼びだね!」
「愛称呼びではなく、ツルと呼ばれるんだぞ?」
「んー、少しお婆ちゃんっぽいかなぁ? でも今は古い名前も流行って聞くし」
「それなら、ツルニチソウにアカリのアを入れて、ルチアとかはどうだ?」
「でも、我が家ルから始まる名前多いし……」
「だーっ、アカリは少し落ち着けって」
ハガネに止められて、「だって、名前早く決めてあげたいし」と言ったら、家族総出で紙を用意して赤ちゃんの名前候補を書き始める。
私はツルちゃんに一票である。紙に書いて、ハガネが持っている空き箱に入れていく。
ついでに、学園に居るティルナールとルーシーにも候補の名前を聞いたところ「ハルカ」「ハルシラ」とハルを入れるようだ。
ハガネが二人の候補の名前も書き、アクエレインとグリムレインも参加するかを聞いたら参加をするというので、暫く待っていると旧女将亭から飛んできて、紙に二人も名前を書いていく。
「良いか……恨みっこ無しだからな?」
「いや、流石に変な名前は却下するぞ?」
「ハガネ! 私の念を感じ取って!」
「あー、アカリのは何となくわかるから大丈夫だ」
流石、私の一番の従者!!
「んじゃ、アカリ、悪ぃな。ここは公平にいくかんな」
「えーっ!」
ハガネが空き箱から紙を出す。
『コハル』
「コハルになったけどよ……意義のある奴は挙手するよーに」
「コハル、小春ちゃんかー。小さい春……この季節なら、丁度いい名前だねぇ」
「まぁ、多少、東国風ではあるが、コハル・トリニアなら呼び辛くはないな」
「んじゃ、コハルで良いのか?」
ルーファスを見れば、赤ちゃんを見ながら「コハルか……」とふむふむ言っているので、良さそうだ。
「では、我がトリニア家の九番目の子供はコハルだ」
九番目の子供の名前は、コハル・トリニアに決定しました!
和風な名前ではあるけれど、東国の近いここら辺では変な名前では無いし、良いかな?
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ツルちゃんでも可愛かったのにねー? と、思わなくもないけど。
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