黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
910 / 960
26章

ドラゴンの谷⑤

しおりを挟む
 グリムレインが「嫁~ッ!!」と、泣き言をピィピィ言い始めたので、杖で叩かれた所を撫でて「痛いの痛いの飛んでいけー」と、子供達にするようにやってあげると、ドラゴン達は自分も自分もと列を作って甘えてきた。
ここまで甘えるのも珍しいくて笑ってしまったのだけど、どうやらこのドラゴンの谷はドラゴン達にとって、童心に帰ってしまうような作用があるらしい。

 テーブルの上にルーファスが物珍しそうに眺めていたクリスタルが幾つか並べられ、これはなんなのか聞けば、このクリスタルは『魔法を閉じ込めたクリスタル』なのだそうだ。

「使うクリスタルは【探知サーチ】【目印マーク】【警報アラーム】の三つでいいかのぅ」
「爺様、警報は要らなくない?」
「突然、目印の魔法を付けられたら驚きゃせんか?」
「ドラゴンハーフに警報は要らないの!」

 エデンが頬をぷぅと膨らませて、ウォルベクスさんが並べた警報のクリスタルを壁際に戻してしまう。エデンもドラゴンハーフに関しては、割り切れていないようだ。

「でも、凄いですね。魔法を閉じ込めて自由に使えるなんて」
「アカリの【眠れる散華】も同じ物だっただろう?」
「そういえば、あの杖も魔法色々覚えさせたよねぇ」

 エルシオンの赤ちゃんの頃に散々魔法を放たせるのに使って……あれから何処に置いてしまったやらだけど……魔法が使えない人しか使えない物だから、放置してても大丈夫だけど、きっと三つ子の玩具にされて庭にでも転がってそうだわ。
今は魔法がコントロール出来るようになって、私も三つ子達も使わないから存在自体忘れてたわね。

「グリムレイン、地図を持ってこい」
「なんで我が……」

 コンッとウォルベクスさんに杖で叩かれ、グリムレインがむぅーと口を尖らせながらスピナと一緒に大きな巻物の世界地図を持って来てテーブルに広げる。

「随分と古い物だな」
「そりゃあ、儂はこの谷から出んからのぅ。この地図はドラゴン達の土産で貰った物じゃわ」
「なるほど。しかし、資料としてはとても良い物だとオレは思う」
「最新の地図を貰えるなら交換しても良いぞ」
「本当か! それなら直ぐに交換だ!」

 ルーファスが嬉々として異空間収納から大きい世界地図を出して、古い地図と交換してもらっていた。
ああ、これがトリニア家の収集癖だわ……まぁ、ルーファスが尻尾をブンブンさせて喜んでいるから、いいかな……? 私もルーファスに甘いけど、私が甘い分、リュエールが『父上―ッ!! また余計な物を蔵に置いて!!』と、怒るんだろうけどね。
リュエールの怒りっぽいところ誰に似たのかしら? 不思議だわ。あの子には収集癖は無くて、シュトラールが妙に収集癖がある気がするから、トリニア家の収集癖は次はシュトラールに受け継がれているかもしれない。
シュトラールが集めた物は、やはり【刻狼亭】の蔵にシレッと置いてあるから、リュエールの頭の痛い所かも?
時代が過ぎれば、16代目の収集した物とか思われたら、きっとリュエールは草葉の陰から吠えそうよ。
 ちなみにシュトラールは昔の手術器具や治療法の本を集めている感じかしらね。

「さて、世界地図の上にクリスタルを置いて、エデンは【探索】儂が【目印】を唱えるぞ」
「はいなのー!」

 エデンがクリスタルを持って【探索】魔法を放ち、地図に幾つか小さな光が出ると、ウォルベクスさんが【目印】魔法を放って地図には紫色の点がポツポツとある。
温泉大陸にも一つ。
これはエスタークさんに付いた目印なのだと思う。

「数が多いの……」
「エデン、子孫に引き継がれてばらけてしまった……と、いう事じゃろう」
「皆を、皆を助けたいの……爺様、分離しても、こんなに引き継がれてバラバラじゃ、どうなるか分からないの」

 ポロポロと泣き出したエデンの頭をウォルベクスさんが撫でて、エデンをウォルベクスさんに任せ、私達は地図の点のある場所を見る。
覚えのある場所に点が多く、そこは竜人の国、過去に私が召喚でさらわれ捕らえられた場所だった。

「竜人の国か……あのトカゲもどきの亜人共め、我らの同胞にまで手を出していたのか!!」
「竜人の国のこの数……十人以上はいるよ……最悪、あたしは許せない」
「兄者もスピナも落ち着け。ここまで多いという事は、かなり引き継がれているが、竜人は長生きだ。代替わりは早々無いかもしれない。そう思えば、少しは希望があるのではないか?」

 確かに……それに、あの沼がずっと竜人の遺体を沈めているとすれば、ドラゴンもその中に溶けだして分離出来ているかもしれない。それをどうにか集められたら……

「……カリ、アカリ。大丈夫か?」
「え? ああ、どうかしたの?」
「いや、アカリが心配になっただけだ。竜人の国はオレが何とかしよう。アカリは待ってくれれば良い」
「あ、ううん。大丈夫。少し怖いのは残っているけど、アクエレインとエデンが居れば、一気に分離させられるかもしれないし……」

 心配そうなルーファスに大丈夫と親指を立てて、ハガネ直伝の「とりあえず笑っとけ」で歯を見せて笑う。
他にも地図には十四ヵ所点があり、ドラゴンハーフの少なさに驚いてしまう。
でも、アルビーが昔「いつかドラゴンハーフは淘汰とうたされる」と言っていたけど、こう少ないと淘汰されてしまう前にどうにかしなくてはと焦りも出てくる。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。