狼兵は運命の番を逃がさない

ろいず

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誘拐パニック

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 確かに、嫌がる美羽を車に押し込むように入れたけど、誘惑香が外で漏れるより車の中で充満させてた方がマシだったのもある。
 って、言い訳をここでしていても仕方がない。
 仕方が無いけど、親切にしたら食料と抑制剤と服にカバンを盗まれた被害者は俺なんだけど?
 ああ、これ本当にどうするんだ? 警察に行った方がいいのか……でも、俺の今の戸籍関係は滅茶苦茶だからなぁ。
 痛い腹は探られたくないのが本心だ。

「シズクの言う通り、拾うんじゃなかった……」

 はて? シズクはどこで俺が美羽を拾ったのを見たのだろう? あの時は発情期が始まって、抑制剤も飲んでいなかったから、頭がぼんやりして深くは考えなかったけど、タイミングの良さからして監視されているような気がする。でも、シズクが俺を監視しする必要が何処にあるのかも疑問だ。

「考え過ぎかな?」

 道で偶然見ただけかもしれないし、シズクの事だから街の監視カメラを見ていて偶然という事もある。
 なんでもやっていそうなのがシズクなのだ。
 前はアルファに負けないぐらいに知識を付けて、色々やっているのかと思ったけど、アルファだからこそ全てを自分の手で網羅もうらしようとしていたのだろう。

「どうしたら、一番いいんだろう……」

 とりあえず、色々考えたところで、抑制剤の利いている体と頭では、これ以上考えても答えは出ない。
 仕方なくテーブルに零したラザニアを拭いて、再び食べ始める。
 こうのんびりしているところに、テレビとかだと警察がいきなり押し寄せるとかあるよなぁ……
 不意にそんな事を思って、窓の外を覗くとマンションの下の方で白い車が数台と、警察と思わしき人が野次馬のような人々に下がるように、手振りで伝えていた。

「あー、これ完全に俺、包囲されてる?」

 流石に、まだ任意同行ぐらいだと思うんだけど? ここまでやられると誘拐犯確定な気がする。
 ガタリと、ベランダから音がして、ベランダの方へ行ってみれば、隣の部屋のベランダからカメラを持った人物がうちのベランダに侵入しようとしていた。
 素早くシャッとカーテンを閉めて、こめかみを手で押さえる。

「本当に、勘弁してくれよ……」

 キンコーンと、チャイムが鳴り、モニターを覗けば警察と刑事らしきコートの男が写っている。
 一瞬、無視して逃げようかとも思ったが、そうもいかないだろう。
 
「はーい」
『警察のものですが……』

 仕方なくオートロックを外し、気怠い体を動かしながら、警察に連れていかれても大丈夫なようにパジャマを速攻で脱ぎ捨てる。
 シャツとジーンズに上着、そして財布と抑制剤をカバンに入れる。
 数分もしないうちに警察が来て、令状まで持っている為に家の中を引っ掻き回された。
 普通、監視カメラだけで令状まで出るものか? と、考えてしまうところだ。

「蓬生美羽さんを何処に隠した?」
「隠すも何も、隠してませんし……」

 ただ、俺もすっかり頭から抜けていたけれど、未成年者を保護者の許可なく連れ去る行為は、未成年者略取という警察に捕まる行為に該当する。
 おかげで俺は警察にご厄介になることになった。
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