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一章
オニギリ戦争
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真っ暗な中で目を覚ます。
そこには何も無く、ああ、夢かと気付き、そのうち目覚めるだろうと私はさ迷う。
ガラスが目に移った。ショーウィンドーだと思う。
可愛いウサギの人形。白い毛並みに耳の当て布はピンクのチェック柄。
ショーウィンドーに人影が写り込む。
柔らかい栗色のふわふわとした流れるような長い髪の少女。
サイドを水色のリボンで結んだ、水色のワンピースに白いレースのエプロン。
歳は三、四歳と、いったところだろうか?
ショーウィンドーに写り込む少女と目が合う。
「……っ、はぁ……」
少女と目が合う、あと少しのところで目が覚めた。
肩が温かい。横を見れば、御守さんが居た。
私の肩を抱き寄せて、店の中のベンチに座っている状態だった。
「麻乃。気が付いたか?」
「……あ、はい。私、どうかしましたか?」
一瞬の間を置いて、御守さんは少し目を伏せる。
「少し気を失っていただけだ。寝不足だろう。十分程しか経っていないから、慌てなくてもいい」
私が直ぐに立ち上がろうとしたのを見越してか、御守さんの手は私の肩から離れてはいなかった。
気を失う前がおぼろげな記憶でしかない。何があっただろう?
頭を小さく振り、寝不足で気を失うなんて少し情けないな。と、御守さんの手を借りて立ち上がる。
「買い物の続きをするか? それとも店内で何か食べるなりして休むか?」
「えっと、買い物をしましょう。私、カーテンは絶対に今日中に欲しいですから」
「分かった。遮光カーテンの売り場に行こう」
流石に二階と言えど、私も二十代の女子なのでカーテンの無い丸出しの部屋を住民が大勢いるところでは晒せない。二人で並んで移動している最中、どこか心がスッキリしたような気もするのに、 釈然としない気持ちがあった。
しかし、買い物に折角来たのだし、楽しませてもらおう。と、気分を変える。
私は御守さんの背の高いことをいい事に、高い位置にあるカーテンの袋を取ってもらっては「もう少し色味が深い方がいいかもです」と、次々に取っては戻してもらっていた。
「麻乃。カーテンの次は?」
「えーと、カーテンに合わせたラグと……クッションも良いですか?」
「ああ。薄い緑色のカーテンだから、色々合わせやすいだろう」
「実はさっき良い白いラグを見付けたんですよ。染みが出来ても大丈夫な様に、木の絵が描いてある物なんです。クッションも緑と白のストライプの物が可愛いかなって思ってて」
「そうか。なら、行こう」
ラグとクッションを買い、大荷物になったところで会計を済ませて店を出ると、輪入道のアルフが店の出入り口まで来て乗り込ませてもらい帰宅となった。
『おおかみ宿舎』に帰り、御守さんが私の部屋に買ってきたばかりのラグを敷くのを手伝ってくれた。
そう、片手でヒョイッとベッドを持ち上げて……一瞬、ポカーンと口が開いたが、慌てて床を掃除し、ラグを敷いた。
「力持ちですね」
「ここの住民達は、大抵このぐらいの力はあるさ」
「えーと、流石、妖……ですか?」
「ああ。そのうち麻乃も慣れていけば、誰が何の妖かはわかっていくだろう」
「あの、襲ってきたりは……しないですよね?」
「それはない。ここは安全だ」
そうハッキリと宣言して御守さんはベッドをゆっくりと床に下ろした。
御守さんの言う事なら、きっと間違いは無いのだろう。すんなりと受け入れられるだけの安心感が彼にはある。
もし、私が『透明人間』になったとしても、この部屋を見て、誰かに私がここに居たことを思い出してもらえれば、それはきっと、私の足跡のような物になるはずだ。
こんな呪いみたいな状況……呪い? 何かが私の中で引っ掛かった。
何だっただろう? 思い出せそうで思い出せない……まぁ、気にする事でもないか。
「御守さん、カーテンを付けるのをお願い出来ますか?」
「それは構わないが?」
「お昼ご飯を作ってきます。何か苦手な物はありますか?」
「特に好き嫌いは無い。ああ、でもオニギリが一番好物だ」
「はい。オニギリですね! いっぱい作りますね」
「楽しみだ」
ご飯だったら、朝の分がまだ残っていたはずだから、オニギリをいっぱい作ろう。
二階から食堂に行くと、眠そうな椿木さんが「お腹減ったー」と騒いでいた。
「今から作りますから待っていてくださいねー」
「あー……泉田さんは、辞めたんだっけ。じゃあ、僕の好みを今から言うから覚えてね」
「え?」と、言った時には、椿木さんのマシンガントークが開始されていた。
「僕の好きな食べ物は、山菜類。特に山菜の天ぷらや山菜のおこわは特に好き。あと、それにうどんを付けるとなお良しだよ。山菜うどんのゼンマイの歯ごたえが堪らないんだよね。あーでもね、山菜うどんにニンジンを入れるのは邪道だからね。ニンジンは山菜じゃない。山菜に分類するなら高麗人参でも入れてくれていた方がマシ。あっ、でも言っておくけど、僕はニンジンが嫌いなわけじゃないから。山菜うどんにニンジンを入れる行為が許せないだけなんだよ。ああ、でも畑で採れたばかりのニンジンは別。あの薫り高いニンジンの匂いは全てを許せる匂いだよ。スーパーで売っているニンジンなんて匂いも何もありゃしないんだから、スーパーのニンジンはやめてよね」
要約すると……山菜が好き。ニンジンは畑の以外は許さない。
こういう事だろうか?
満足そうに「それからー……」と、言ったところで、「椿木うるさい!」「椿木は簡単な話を長くし過ぎ!」と双子の紫音くんと紫雨ちゃんが食堂に顔を出して、椿木さんに左右からわぁわぁと騒ぎ立てる。
紫音くんと紫雨ちゃんの頭の上に三角の耳とお尻には尻尾が見えた。
ああ、この二人も動物の妖なのか。椿木さんは特に変わった様子はない。少しボサッとした髪にシャツの上に白衣を羽織っている、だらしない保険医みたいな感じなだけだ。
「えーと、お昼はオニギリにします! 少々お待ちください!」
私は厨房へ入ると、双子の「やったー!」という声がした。
椿木さんは少々、不満がありそうだけれど、山菜は流石に用意出来ていない。
あとで夕飯の買い出しもしなくてはいけないだろう。
炊飯器を開けて、大きなボウルにお米を移し替えていく。
同じ様に大きなボウルにお米をまた移し替え、三つ程用意しておく。
戸棚を漁り、乾物や漬物を発見していく。
手に入ったのは 鰹節、梅干し、そして塩と出汁粉と海苔。
冷蔵庫からトマトケチャップと卵も出しておく。
一つは乾物の箱から鰹節を出し、お米の上に振りかけて、お醤油も一緒に入れて混ぜ込んでいく。
これを三角に握ってしまえば完成。簡単かつ混ぜ込むので手が火傷せずに握れる簡単オニギリのおかか!
もう一つのボウルのお米は梅干しを入れたオーソドックスな物を、塩を手にまぶして三角に握っていく。
オーソドックスが一番。一応、梅の種は先に取り出したから、食べる時に種を取り出す必要もない。
最後に海苔で巻けば完成。
ラストはお米に出汁粉を少しとトマトケチャップを混ぜ込む。
それを三角に握り、真ん中を窪ませてトマトケチャップを親指分くらい入れて並べていく。
卵を割って、溶き卵にしてフライパンで薄焼き卵をオニギリの数分焼いて、ケチャップオニギリに薄焼き卵を巻いて、なんちゃってオムライスオニギリの完成。
変わり種も用意出来たし、あとは卵焼きを甘くして焼いて、お味噌汁は朝の残りを温め直そう。
卵焼きを焼きつつ、お味噌汁を温めて、朝の残りの鰤の照り焼きもお皿に盛りつけておく。
うん。我ながら、卵焼きを巻くのは上手に巻けている。
包丁で卵焼きを切り分け、端を味見するとほんのり甘い卵焼きに満足して頷く。
「上出来」
オニギリをお皿に載せていると、いつの間にか食堂には人が増えていた。
人……というより、妖だろう。猫が二本足で立っているし、尻尾は二本あるから猫又という、猫が長い年月生きるとなるという妖怪なのだろう。
カラスも居るけれど、足が三本だから八咫烏だろう。
八咫烏は妖怪ではなく、導きの神、太陽の化身と言われるもので、三本の足には『天』『地』『人』と、神と自然と人は太陽から生まれた事を表すと言われている。
確かそんな感じの解釈だったと思う。
あとは犬の様な子もいるけれど、なんの妖かは分からない。
小さなタワシたちは付喪神だろうというぐらいかな?
「おまちどうさまですー。お昼ご飯になりますー……って! はわわっ!」
オニギリをテーブルに置いた瞬間伸びる手の数と、瞬殺されるオニギリ。
まだ厨房にオニギリとお味噌汁におかずもあるけれど……先にお味噌汁から出そう。
そそくさと厨房に戻って、お味噌汁をお盆に載せて次々に運び、卵焼きと鰤の照り焼きも置いておく。
皆がそっちへ夢中のうちに、オニギリを再び運ぶ。
「これで全部ですー……わぁぁぁ!」
「ちょっと、引っ掻いたの誰―!」
「あんた二個目でしょ!」
「まだ食べてないぃぃ!」
大騒ぎの彼等にもみくちゃにされて、抜け出た時にはお皿の上は空っぽ。
皆、元気にオニギリを頬張っていた。
「随分すごいな……」
「あ、御守さん。カーテンありがとうございました。御守さんの分は、ちゃんとこっちにありますよ」
「なんてことはない。いつでも頼ってくれ」
厨房の中から御守さんと自分用のオニギリと卵焼きをお皿に載せて出す。
「ズルーい!」と、声もするが、私だってお腹がぺこぺこなのだから仕方がない。
「いただきます」
「はい。召し上がって下さい」
御守さんがオニギリを食べて、「美味い」という言葉で私も笑顔で食べ始める。
少し邪道なオムライスオニギリは、足元を必死に擦りついてくる犬の様な妖におねだりされて、あげてしまったけれど、それなりに好評だった。
ちなみに、この犬は『すねこすり』という妖で、人の足にすりつくだけの妖怪。
そこには何も無く、ああ、夢かと気付き、そのうち目覚めるだろうと私はさ迷う。
ガラスが目に移った。ショーウィンドーだと思う。
可愛いウサギの人形。白い毛並みに耳の当て布はピンクのチェック柄。
ショーウィンドーに人影が写り込む。
柔らかい栗色のふわふわとした流れるような長い髪の少女。
サイドを水色のリボンで結んだ、水色のワンピースに白いレースのエプロン。
歳は三、四歳と、いったところだろうか?
ショーウィンドーに写り込む少女と目が合う。
「……っ、はぁ……」
少女と目が合う、あと少しのところで目が覚めた。
肩が温かい。横を見れば、御守さんが居た。
私の肩を抱き寄せて、店の中のベンチに座っている状態だった。
「麻乃。気が付いたか?」
「……あ、はい。私、どうかしましたか?」
一瞬の間を置いて、御守さんは少し目を伏せる。
「少し気を失っていただけだ。寝不足だろう。十分程しか経っていないから、慌てなくてもいい」
私が直ぐに立ち上がろうとしたのを見越してか、御守さんの手は私の肩から離れてはいなかった。
気を失う前がおぼろげな記憶でしかない。何があっただろう?
頭を小さく振り、寝不足で気を失うなんて少し情けないな。と、御守さんの手を借りて立ち上がる。
「買い物の続きをするか? それとも店内で何か食べるなりして休むか?」
「えっと、買い物をしましょう。私、カーテンは絶対に今日中に欲しいですから」
「分かった。遮光カーテンの売り場に行こう」
流石に二階と言えど、私も二十代の女子なのでカーテンの無い丸出しの部屋を住民が大勢いるところでは晒せない。二人で並んで移動している最中、どこか心がスッキリしたような気もするのに、 釈然としない気持ちがあった。
しかし、買い物に折角来たのだし、楽しませてもらおう。と、気分を変える。
私は御守さんの背の高いことをいい事に、高い位置にあるカーテンの袋を取ってもらっては「もう少し色味が深い方がいいかもです」と、次々に取っては戻してもらっていた。
「麻乃。カーテンの次は?」
「えーと、カーテンに合わせたラグと……クッションも良いですか?」
「ああ。薄い緑色のカーテンだから、色々合わせやすいだろう」
「実はさっき良い白いラグを見付けたんですよ。染みが出来ても大丈夫な様に、木の絵が描いてある物なんです。クッションも緑と白のストライプの物が可愛いかなって思ってて」
「そうか。なら、行こう」
ラグとクッションを買い、大荷物になったところで会計を済ませて店を出ると、輪入道のアルフが店の出入り口まで来て乗り込ませてもらい帰宅となった。
『おおかみ宿舎』に帰り、御守さんが私の部屋に買ってきたばかりのラグを敷くのを手伝ってくれた。
そう、片手でヒョイッとベッドを持ち上げて……一瞬、ポカーンと口が開いたが、慌てて床を掃除し、ラグを敷いた。
「力持ちですね」
「ここの住民達は、大抵このぐらいの力はあるさ」
「えーと、流石、妖……ですか?」
「ああ。そのうち麻乃も慣れていけば、誰が何の妖かはわかっていくだろう」
「あの、襲ってきたりは……しないですよね?」
「それはない。ここは安全だ」
そうハッキリと宣言して御守さんはベッドをゆっくりと床に下ろした。
御守さんの言う事なら、きっと間違いは無いのだろう。すんなりと受け入れられるだけの安心感が彼にはある。
もし、私が『透明人間』になったとしても、この部屋を見て、誰かに私がここに居たことを思い出してもらえれば、それはきっと、私の足跡のような物になるはずだ。
こんな呪いみたいな状況……呪い? 何かが私の中で引っ掛かった。
何だっただろう? 思い出せそうで思い出せない……まぁ、気にする事でもないか。
「御守さん、カーテンを付けるのをお願い出来ますか?」
「それは構わないが?」
「お昼ご飯を作ってきます。何か苦手な物はありますか?」
「特に好き嫌いは無い。ああ、でもオニギリが一番好物だ」
「はい。オニギリですね! いっぱい作りますね」
「楽しみだ」
ご飯だったら、朝の分がまだ残っていたはずだから、オニギリをいっぱい作ろう。
二階から食堂に行くと、眠そうな椿木さんが「お腹減ったー」と騒いでいた。
「今から作りますから待っていてくださいねー」
「あー……泉田さんは、辞めたんだっけ。じゃあ、僕の好みを今から言うから覚えてね」
「え?」と、言った時には、椿木さんのマシンガントークが開始されていた。
「僕の好きな食べ物は、山菜類。特に山菜の天ぷらや山菜のおこわは特に好き。あと、それにうどんを付けるとなお良しだよ。山菜うどんのゼンマイの歯ごたえが堪らないんだよね。あーでもね、山菜うどんにニンジンを入れるのは邪道だからね。ニンジンは山菜じゃない。山菜に分類するなら高麗人参でも入れてくれていた方がマシ。あっ、でも言っておくけど、僕はニンジンが嫌いなわけじゃないから。山菜うどんにニンジンを入れる行為が許せないだけなんだよ。ああ、でも畑で採れたばかりのニンジンは別。あの薫り高いニンジンの匂いは全てを許せる匂いだよ。スーパーで売っているニンジンなんて匂いも何もありゃしないんだから、スーパーのニンジンはやめてよね」
要約すると……山菜が好き。ニンジンは畑の以外は許さない。
こういう事だろうか?
満足そうに「それからー……」と、言ったところで、「椿木うるさい!」「椿木は簡単な話を長くし過ぎ!」と双子の紫音くんと紫雨ちゃんが食堂に顔を出して、椿木さんに左右からわぁわぁと騒ぎ立てる。
紫音くんと紫雨ちゃんの頭の上に三角の耳とお尻には尻尾が見えた。
ああ、この二人も動物の妖なのか。椿木さんは特に変わった様子はない。少しボサッとした髪にシャツの上に白衣を羽織っている、だらしない保険医みたいな感じなだけだ。
「えーと、お昼はオニギリにします! 少々お待ちください!」
私は厨房へ入ると、双子の「やったー!」という声がした。
椿木さんは少々、不満がありそうだけれど、山菜は流石に用意出来ていない。
あとで夕飯の買い出しもしなくてはいけないだろう。
炊飯器を開けて、大きなボウルにお米を移し替えていく。
同じ様に大きなボウルにお米をまた移し替え、三つ程用意しておく。
戸棚を漁り、乾物や漬物を発見していく。
手に入ったのは 鰹節、梅干し、そして塩と出汁粉と海苔。
冷蔵庫からトマトケチャップと卵も出しておく。
一つは乾物の箱から鰹節を出し、お米の上に振りかけて、お醤油も一緒に入れて混ぜ込んでいく。
これを三角に握ってしまえば完成。簡単かつ混ぜ込むので手が火傷せずに握れる簡単オニギリのおかか!
もう一つのボウルのお米は梅干しを入れたオーソドックスな物を、塩を手にまぶして三角に握っていく。
オーソドックスが一番。一応、梅の種は先に取り出したから、食べる時に種を取り出す必要もない。
最後に海苔で巻けば完成。
ラストはお米に出汁粉を少しとトマトケチャップを混ぜ込む。
それを三角に握り、真ん中を窪ませてトマトケチャップを親指分くらい入れて並べていく。
卵を割って、溶き卵にしてフライパンで薄焼き卵をオニギリの数分焼いて、ケチャップオニギリに薄焼き卵を巻いて、なんちゃってオムライスオニギリの完成。
変わり種も用意出来たし、あとは卵焼きを甘くして焼いて、お味噌汁は朝の残りを温め直そう。
卵焼きを焼きつつ、お味噌汁を温めて、朝の残りの鰤の照り焼きもお皿に盛りつけておく。
うん。我ながら、卵焼きを巻くのは上手に巻けている。
包丁で卵焼きを切り分け、端を味見するとほんのり甘い卵焼きに満足して頷く。
「上出来」
オニギリをお皿に載せていると、いつの間にか食堂には人が増えていた。
人……というより、妖だろう。猫が二本足で立っているし、尻尾は二本あるから猫又という、猫が長い年月生きるとなるという妖怪なのだろう。
カラスも居るけれど、足が三本だから八咫烏だろう。
八咫烏は妖怪ではなく、導きの神、太陽の化身と言われるもので、三本の足には『天』『地』『人』と、神と自然と人は太陽から生まれた事を表すと言われている。
確かそんな感じの解釈だったと思う。
あとは犬の様な子もいるけれど、なんの妖かは分からない。
小さなタワシたちは付喪神だろうというぐらいかな?
「おまちどうさまですー。お昼ご飯になりますー……って! はわわっ!」
オニギリをテーブルに置いた瞬間伸びる手の数と、瞬殺されるオニギリ。
まだ厨房にオニギリとお味噌汁におかずもあるけれど……先にお味噌汁から出そう。
そそくさと厨房に戻って、お味噌汁をお盆に載せて次々に運び、卵焼きと鰤の照り焼きも置いておく。
皆がそっちへ夢中のうちに、オニギリを再び運ぶ。
「これで全部ですー……わぁぁぁ!」
「ちょっと、引っ掻いたの誰―!」
「あんた二個目でしょ!」
「まだ食べてないぃぃ!」
大騒ぎの彼等にもみくちゃにされて、抜け出た時にはお皿の上は空っぽ。
皆、元気にオニギリを頬張っていた。
「随分すごいな……」
「あ、御守さん。カーテンありがとうございました。御守さんの分は、ちゃんとこっちにありますよ」
「なんてことはない。いつでも頼ってくれ」
厨房の中から御守さんと自分用のオニギリと卵焼きをお皿に載せて出す。
「ズルーい!」と、声もするが、私だってお腹がぺこぺこなのだから仕方がない。
「いただきます」
「はい。召し上がって下さい」
御守さんがオニギリを食べて、「美味い」という言葉で私も笑顔で食べ始める。
少し邪道なオムライスオニギリは、足元を必死に擦りついてくる犬の様な妖におねだりされて、あげてしまったけれど、それなりに好評だった。
ちなみに、この犬は『すねこすり』という妖で、人の足にすりつくだけの妖怪。
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