おおかみ宿舎の食堂でいただきます

ろいず

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二章 

めめさんとアイスを②

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 厨房の冷凍庫にアイスを詰め込み、泉田さんにアイスは一人一個を厳守させるようにお願いしてから、めめさんと一緒に食堂を出る。
 他の久我さんと尾瀬さんの幽霊二人は、最後の一人を説得する為に担当の妖の人と一緒に出掛けている。

「めめさん、車借りましょうか!」
「麻乃ちゃんって、車運転出来るの?」
「いいえ。ここの車は妖なので、運転しなくても大丈夫なんですよ」
「便利ねぇ」

 駐車場へ行くと、車は木陰に移動しているようで、木の陰や建物の影の下に入り込んでいた。
 ほとんどの車は、それぞれが幽霊回収に出掛けている為に出払っているが、都会は車より電車の方が移動は便利という事もあり、今置いてある車はそうした、居残り組だ。

「誰か、車に乗せて下さーい」
『ここら辺の地図は入ってないから無理』
『アンタはアスファルトの上を歩きたく無いだけだろ!』
『今時、カーナビも無い奴が要るかよ』

 車たちは賑やかに押し付け合いをし、私達を載せてくれることになったのは、パールピンクの小さな車。偽汽車という妖で、鉄道の走っていない線路などに現れる妖で、狸が化けていると言われている物である。
 まぁ、本人曰く、いつの間にか狸にも汽車にもなれず、車という形を現在はとっているらしい。

「すみません。私用で暑い中を動かせてしまって」
『いいの。いいの。あそこに居たら、皆が暑いってうるさくブツブツ言うだけだからもの』

 偽汽車のみゐやさんは、上機嫌なオネエな妖のようだ。
 私達が向かっているのは、めめさんの生前住んでいたマンションに向かっている。
 もしかすると、彼氏さんが来ているかもしれないし、もし来ていないようなら、めめさんと彼氏さんのアパートへ行ってみるつもりだ。

『でも、ロマンチックよねぇ。車のダッシュボードにプレゼントなんて』
「でもそれでアタシ、死んじゃったわ」
「それが無ければ、パーフェクトでしたよね!」
『ねー。ほんとソレよねー』

 乙女トークに花を咲かせて、めめさんのマンションに着くと、めめさんから暗証番号を聞きエレベーターに乗ってめめさんの部屋の前へ辿り着く。
 めめさんの部屋はすでに空き家になっていて、部屋の前には小さな花と、何故か盛り塩がしてあった。

「なんで盛り塩?」
「超失礼なんだけど……」

 めめさんがブスッとした顔をして頬を膨らませ、私は流石に中へは入れない為に外で待っていると、同じ階の人が声を掛けてきた。

「こんにちはー。ここへ引っ越してくるつもり? 大きな声じゃ言えないけど、ここの前の借主、亡くなったのよ」
「それは、聞いていますが……彼女は、ここでは無く事故で亡くなったのですから、事故物件じゃないでしょう?」
「それなんだけね」

 ズイッと近寄って、その人は「出るのよ」と、手を前にぶらんと下げてみせる。

「幽霊……ですか?」
「そうよ。大きな声じゃ言えないけどね」

 大きな声じゃ言えないと強調しつつも、聞いてほしいようである。

「夜中になると、すすり泣く声や、不審火があるのよ」
「不審火って、危ないというか……普通に警察か消防に連絡すべきじゃ?」
「それがねぇ。そこの窓から火が見えたのに、管理人さんが中に入ると何も燃えてないのよ」
「不思議……ですね」
「それにね。車が激しくぶつかる音もしているらしいのよ」

 不審火、車のぶつかる音……それだけ聞けば、めめさんの事件が連想されて住民が目目産の幽霊が出たと思ってしまうかも?
 
「あの、この部屋に男性は尋ね来たりしませんでしたか?」
「どんな? ココにはしょっちゅう出入り業者が出入りするからね。管理会社の人が色々してるから」
「この花を置いたのは?」
「それは管理会社の人よ。そこの盛り塩も。ここの前の住民の蒼井さんとは挨拶ぐらいだったんだけど、すっごく派手な人でね。人付き合いも派手にやっていたのに、花を持ってきてくれているのは、管理会社の人だけよ」
「そうですか……」

 ガチャッと中のドアが開き、めめさんが「うるさいおばさんねぇ」と言って出てくると、「ギャー!」と声を上げて噂好きのおばさんは白目を剥いて倒れた。

「意外……視える人だったみたい」
「うーん。多分、おおかみ宿舎でめめさんの力が上がっているからじゃないかな?」
「あー、そういう事もあるわよね」
「何か部屋にありましたか?」
「無いわー。全部持ち出された後ね。せめて、彼の写真ぐらいは回収したかったんだけど」
「そうですか。彼氏さんの家に行きましょうか」
「そうね」
「おばさんは、どうします?」
「放置しときましょ」

 それは流石にいかがなものかと思う……
 他の同じ階の人の玄関を叩き、オバサンが倒れている事を伝えて、私達はそそくさとマンションを後にした。
 みゐやさんにその話をしたら、微妙な返事を貰った。

『それって、気を付けないと新しい妖が生まれちゃうわよ?』
「ああ、そう言えばそうですよね」
「やだ。アタシが妖になるの!?」
『めめちゃんがって言うよりも、噂と事実の入り混じった新種の妖の誕生よ』
「それは、不味いですか?」
『不味いわよ。悪意や悲しみ、そういったものを面白おかしく付属された妖は、噂のあるうちはそれに縛り付けられて、自我は噂だけを頼りに作られて、暴れるしかないもの。うちの会社の討伐対象になってしまうわよ』
「どうしたらいいでしょう?」
『早めに、この怪奇現象を会社に報告して、調べてもらうしかないわね。早めに蹴りをつけて噂を塗り替えて、新しい妖を生まれないようにするの』

 確かに、あのおばさんの様に面白おかしく言われていたら、生まれてくる妖は、最悪な印象の女性が事故で死んで今もマンションの自室ですすり泣いて、自分の死んだ瞬間を繰り返しているだけのイメージかも?

「あっ、めめさん。めめさんの事故の時、火が車から出たんですか?」
「火? いいえ。車で即死な上、気付いたら自分の働いてた職場のビルに居たから……」
「じゃあ、何で部屋の中で火が見えたんだろう?」

 これは、少し何かがあるのかもしれない。
 私はスマートフォンを片手にめめさんの事故を検索し始めた。
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