世界の色

スイレン

文字の大きさ
1 / 2

知らない世界にいらない自分

しおりを挟む
 毎度目が覚めて一番初めに考えるのは自分が生きている意味について。
まだ生きてる。また今日がきた。ベットから起きる気もおきない。俺が生きている意味は何だ。それは俺が前世の時から自分自身に問いかけ続けているが未だに答えが出ていない。

 交通事故により死んでしまった俺は地獄でもなくもちろん天国でもなく、異世界へ転生してきた。生憎元来の性格に拍車がかかりコミュ障陰キャより上級の人間不信社会不適合者になってしまった。

 無理もないだろ?漫画やアニメがおかしいだけであって俺は至って正常なはず。だっておかしいだろ生まれ変わって、『あ、俺異世界に転生してきたわ。だから赤ちゃんなんだ。』なんて思えるわけがない。そういうやつはごくわずかな主人公属性なやつか、頭の狂ったやつだけだ。あの安全である世界でも事故で突然死んでショックなのに知り合いが一人もいないわからない世界でいつ死ぬかわからない人生をもう一度生きるなんてやってられない。

 俺は狂ったように泣いた。どのくらい泣いたのかもわからない。どうせなら、このまま脱水症状で死んでしまいたかった。

 俺の知らない世界に、日本人とは思えない褐色な肌に緋色の瞳の見慣れない自分の姿、前世とは違うアーナブという名前。何一つ違う。そして日本にはなかった身分制度。どうやら自分はそこそこの部族長の息子らしい。だけどこの世界では赤い瞳が気色悪いらしくこの根暗な性格も相まって誰も近づいてこない。この世界では赤は悪魔的な色らしい。おかしいよな。人間に流れている血も赤なのにな。俺の瞳が悪魔の瞳なら、赤い血が流れている人間も悪魔なはずなのに。だけど人間不信な俺には人が寄り付かなくて丁度いい。いっそのこと気持ち悪いと言って殺してくれればよかったのに。そう思っても自分で死ねない俺は余程の臆病ものだ。

 まるでずっと夢を見ているようで胡蝶の夢と言われたほうがしっくりくる。

そんな俺だが一人だけ俺に話しかけてくるがいる。

「おはようございます。アーナブ様」

そう言った、ノアは俺の部屋のカーテンを開けた。

「ああ」

話しかけてくるといっても従者だからしょうがない。
ノアは奴隷として幼い頃から連れてこられた獣人だ。普段は魔法の耳飾りで獣の耳を隠しているらしい。まあ、俺には知ったこっちゃない。魔法なんてのも実際あるのかは知らないが奴が獣人だというのはまあ納得した。一回だけその連れてこられた時に獣の耳を見た。人間とは違う狼のような黒い耳。少しだけ触ってみたいと思ったのは内緒だ。まあ何年も前のことだし。

この世界には普通に奴隷制度があるみたいだった。主に獣人が弱い立場なのか獣人が奴隷として連れてこられる。やっぱり、こんなクソみたいな世界生きる意味がない。意外性もクソもない、漫画みたいな展開はここに求めてなかった。俺が奴隷なわけではないがいるだけで不愉快だ。
しかし、ノア自体が悪いわけではないから、邪険にはできない。ノアは奴隷として幼いころに連れてこられたらしい。俺が12歳の誕生日の日に8歳であるノアが連れてこられた。何故そこそこえらい部族長の息子である俺に奴隷の従者があてがわれたかというとこの性格と瞳の色、まあ容姿が相まって気味の悪さが倍増して誰も従者になりたがらなかったからである。青い瞳を持っていて珍しいとのことで部族長の息子である俺に献上され従者になった。この世界では青は貴重なものだという。赤い瞳を持つ俺とは身分と色とで正反対らしい。しかも4つも年が違うはずなのに18歳の時には、14歳のノアに発達症状が負けてしまっていた。身長はとうに追い越された。ああ、本当に全てがうまくいかないくそくらえだ。
皮肉なことにこんなひねくれてべこべこになっている俺との性格も間反対らしく性格もよく奴隷だというのに人からは好かれ、そんな淡泊な返事をするような俺でもノアはかいがいしく世話をしてくれる。

「朝食の用意ができましたよ」

「…いらない。今日は食べる気分じゃない」

「今日はって、貴方様はいつもでしょう?全く…食べないと力になりませんよ。」

別に力になったところで何もすることのない俺には無駄なだけだ。このまま餓死でもしてしまいたい。
「いらない。」

「しかし…」ノアは言いよどんだ。だがいつもは部屋に軽めのサンドイッチを置くだけで引き下がるのに今日はやけにしつこい。

「しつこいな。お前が食べて片付けとけ。」と吐き捨てるように言い毛布にくるまりこむ。

「それが今日は旦那様がお呼びなのです「断っとけ」」即答した。

「そうもいきません。」ノアは困ったように眉を下げる。

だよなぁ。わかってはいる。でも行きたくないのは行きたくないのだ。

ノアに当たるのはお門違いなのもわかってはいる。でも今更どう接していいのかわからないのだ。昔は普通に使用人がいて話しかけてきもしたが、それはゴマすっているだけで俺の事なんか心中では気色悪いと思っている。これは思い込みとかそんなことはなく、実際に陰口を聞いてしまった為どうしようもない。最初からこんな拒絶していたわけではないないんだよ俺だって。こんなクソみたいな世界にクソみたいな人間しかいないのなら、最初から突っぱねた方が楽なのだ。

「はぁ、わかった。」

溜息でしかない。いつも通りノアに着替えを手伝ってもらう。着る服はアラビアン衣装的な感じでそれに俺は頭にベールを被る。瞳もそうだが髪も珍しい白のため、奇抜な色の頭だらけのここの民族では悪目立ちし放題だ。
何から何まで俺は他とは違うわけだ。馴染めないのも普通だろう。
まあ、白い髪に赤い瞳で肌の色は違うが似非アルビノみたいなものだ。そのため頭にベールを被らなければならなかった。何度も言うが人間不信になった俺には全くもって問題ないし、むしろ安心するので手放したくないものだ。そうして着替えを終えて、一人で父親と朝食をとるため部屋を移動する。無言で部屋に入り、無言で朝食を食べる。食べ終わってさっさと席から離れようとしたところで話しかけられる。

「お前の婚約が決まった」

話しかけられるなんてもんじゃない。ただ言葉を発せられた。相手は話をしようとなんか思っていない。俺を人間だと微塵も思っていない野郎だ。でも一応俺はこの男の嫡男だ。そういうことは頭に入っているのだろうか。いや、たぶんそんなことは考えてないんだろう。こいつは世間体を気にしてここに俺を置いているだけでそんなものがなかったらすぐに追い出していただろう。たぶん嫡男だからといって跡継ぎというわけではなくただの厄介払いとして婿入り、言わば変な爺とかに売りつけるんだろう。俺の赤い目は気持ち悪がられるぐらい珍しいが反対にいえば、それだけ希少種の瞳と言えるそれに絹のような髪もある。
この年まで無駄に生きてきたがやっと死ぬ踏ん切りがつくといったところだ。これはめでたいことだな。だって死ぬには十分な理由だろう。

朝食が終わり部屋に帰る廊下でほんの少しだけ笑みが溢れた。

部屋に帰るとノアが花瓶の花を変えて待っていた。

「お食事はどうでしたか?」
俺のかぶっていたベールを外し問いかける。

「まあまあだった。」
適当返事をしたが、ノアはにこにこと顔をほころばせた。

「なんだよ。」眉を潜めてそう言うと意外な答えが帰ってきた。

「何だかアーナブ様が喜んでいるようで私も嬉しいのです」

俺は知らない間に顔がにやけていたらしい。ここ最近いや、もうどのくらい笑うという行為をしたのか覚えていないため気付かなかったのだ。

だからいっそのこと満面の笑みをした。
「俺の婚約が決まったらしい」この世界での初めての満面の笑み。やっと死ねる。どうやって死んでやろうと。

ノアは驚愕した様子で俺のベールを落とした。

どうしたのだろうか。俺のいなくなった後の自身の身が心配なのだろうか?
これでノアは自由になる。俺という重たい世話係のお役目から。婚約先にまで奴隷のお供は連れていけないからな。

ああ。

「お前の事なら、獣人の奴隷という身分をどうにかしていいところの職場を探してやるよ。ここまで連れ添ってくれたんだからな。そんぐらいは最後まで面倒を見てやるよ。」
そう言っても微塵も動かない。

「おい?」と呼びかけるとやっと動き出す。

「あ…ありがとう、ございます。」そういって落とした俺のベールを広い足早に部屋を出て行ってしまった。

もしかして俺がどうにかするっていうのを信じてないのか?失礼な奴だな。まあ、こんな気持ち悪い奴のいうこと信じられるわけないか。

…やるなら最後まで猫かぶっていてほしかったな。あいつにまで信用されていないことにどこか胸の奥が痛くなった。

まあ、一応俺の直属なので最後にあいつのことを何とかしてやってから死ぬことにしよう。そこはけじめとして何としてもやらなければ。いつに婚約となるかわからない。聞かされていない。最悪逃げないようにと明日かもしれない。今すぐにでも何とかしますか。婚約先に行ったが最後だと思うしな。

俺は俺に出来る最後の事をしなければ。そう思いこの世界で生まれて21年間居続けた部屋を飛び出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

第2王子は断罪役を放棄します!

木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。 前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。 それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。 記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる! ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる! スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します! この話は小説家になろうにも投稿しています。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

異世界転生した悪役令息にざまぁされて断罪ルートに入った元主人公の僕がオメガバースBLゲームの世界から逃げるまで

0take
BL
ふとひらめいたオメガバースもの短編です。 登場人物はネームレス。 きっと似たような話が沢山あると思いますが、ご容赦下さい。 内容はタイトル通りです。 ※2025/08/04追記 お気に入りやしおり、イイねやエールをありがとうございます! 嬉しいです!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...