【完結】異世界転生したら女になっていました!

しぇいく

文字の大きさ
423 / 643
第6章 アオイパーティー開幕

魔王『ロビン』

しおりを挟む

 「ん、ん~~にゃ……よく寝た~……」

 今って何時だろ?
 なんだかんだこの世界、ゲームも漫画もないし……依頼がない時ってやること無さすぎてすぐ寝ちゃうんだよね。

 結果――

 「10時か……」

 壁に掛けられた魔法の時計針は、10時6分を指していた。

 ……昨日21時には寝た気がするから、え、13時間睡眠?
 ヨシ!健康優良児!!

 「おはようございますですぞ、我が君」

 「?……って、ほんとに縛ってたんだ……」

 ベッドの上からは見えなかったけど、ムラサメさんは自分で手足を魔皮紙でぐるぐるにして、床に転がっていた。

 なんでそんなことになってるかというと――
 本人曰く、「紳士たる者、男女が同じ部屋に泊まる時は、絶対の安心を相手に与えねばならんのですぞ!」……らしい。

 うん、理屈は立派だけど……俺、元は男だから、その理論に素直に頷けなかったんだよな。

 身体は女だけど、心は男だし……まぁ、そんなこんなで。

 「好きにしてていいよ」って伝えた。

 ――例えるなら、「自販機行くけど何かいる?」って聞かれて「なんでもいい」って答えるくらい卑怯な丸投げで。

 「当然ですぞ。ちなみにこれは自分では解けないので、どうか解いて欲しいのですぞ」

 「紳士だねぇ……えーっと、これがこうで……はい、解除っと」

 「ありがとうございますですぞ!」

 ちなみにこの世界の仮面って、寝る時もそんなに窮屈じゃない。
 元の世界で例えるなら、マスクして寝たら息苦しいとかあるけど――
 こっちの仮面は魔法で呼吸の邪魔にもならないし、装着感ゼロ。寝る用仮面、意外と快適。

 「ところでさ、アイさんって呼びに来てた?」

 「来てませんですぞ。我が君が安心して眠れるように、昨夜この部屋には“侵入感知用”の魔皮紙をあちこちに貼っておいたのですぞ。でも反応は一切なかったですぞ」

 「へぇ~、じゃあアイさんもそろそろ起きる頃かな?」

 「それはどうですかな。我が君……可能性は、限りなく低いですぞ」

 「なんで?」

 「……昨晩、アイという獣人は、“キング”という男と朝まで夜の営みに耽っていたのですぞ。つまり、まだ寝始めたばかりと推測されるのですぞ」

 「……って、なんで知ってるの?」

 「ふふ、昨夜、この屋敷の防音魔法はしっかり機能していたのですが……建築様式がグリード王国の形式に酷似していたのですぞ。
 だからピンと来たのですぞ。“あれ?もしかして?”と。
 それで、盗聴用の魔皮紙を使ったら――案の定、行けたのですぞ」

 「なるほど……」

 ――アバレーの代表騎士がそんなことして大丈夫なのか?
 ってツッコミたいけど……ここ、獣人の国だからな。人間の法律が通じるとも限らないし……うん、セーフ……?

 「っていうかさ……アイさん、妊娠してるって言ってたよね? それで夜の営みって……すごいな、ほんとにお盛んだよ」

 「その件ですが――エス殿からの連絡で、興味深いことが一つ分かったのですぞ」

 「ん?」

 「どうやら、この村では……全戸で、それが行われているようなのですぞ。一軒残らず、例外なしに」

 「……マジで?」

 その話を聞いて、俺はピンときた。

 ――やっぱり、今回の魔族は“サキュバス”だ。

 「サキュバス族と、何か関係がありそうだね」

 「その可能性は高いですぞ。私たちはこれは“繁栄”と捉えてますが……」

 「繁栄……確かに、そうも言えるか」

 だけど、ちょっと気になる。

 サキュバス族と他種族のハーフって、どうなるんだろう?
 例えば――今回のケース。

 キングの偽物は、十中八九サキュバス族。
 一方で、アイさんはずっとアバレーで普通に暮らしてた獣人だって聞いてる。

 ……でも、そもそもアイさんがどうしてこの村に来たのか、まだ聞いてなかったな。

 今日あたり、うまく話を切り出して聞いてみようか。

 「しかし、ここで吾輩たちは――一つ、疑問が浮かんできたのですぞ」

 「……ん?」

 「“繁栄”と言えば聞こえはいいですが……この村、小さすぎるのですぞ。住人の数も、あまりに少ない」

 「……確かに」

 今までの魔王の拠点――【スコーピオル】や【ライブラグス】と比べると、まるで規模が違う。
 数にして、おそらく1000分の1にも満たない。

 昨日の夕食中に、「他の村もあるのか」と何気なく聞いたが、返ってきた答えは「ここだけ」だった。

 「ですぞ……仮にも、世界を牛耳っていた魔族の拠点。どうにも――腑に落ちんのですぞ」

 「うん……それに、サキュバスって言えば――」

 「シッ……!」

 ムラサメさんが口の前で人差し指を立て、目を細める。

 ピタリ、と空気が凍った直後。

 ――ガチャッ。

 「おはよう! よく眠れたか? ガッハッハ!」

 キング偽物がノックもせず、やけに陽気に部屋へ入ってきた。

 「おはようございます、キングさん」

 「おう! 今日は儀式だったな? まあ、説明より見たほうが早い!」

 「えっ? アイさんが案内してくれるんじゃ……?」

 「そのつもりだったが、今回は……」

 そこで、キング偽物の声が止まる。

 ――まるで、電池が切れた人形のように。

 ピクリとも動かなくなり、その場に立ち尽くしたまま、異様な静けさに包まれる。

 「!」

 「我が君! 下がっていてくださいですぞ!」

 ムラサメさんが即座に俺の前に出て、魔法陣を構えた。

 そして――

 キング偽物は、まるでスピーカーのように、別人の“声”を響かせた。

 

 「ようこそ、【勇者】。
  私は魔王――ロビン。
  邪魔者抜きで……少し、お話をしましょうか」

 

 外見はキングのまま。
 けれど、そこにいたのは――まったくの“別人”だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。 人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。 最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。 おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。 だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。 俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。 これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。 ……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう? そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。 ※他サイト様にも同時掲載しています。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

処理中です...