神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

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子犬の王子

26・戦いの風

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「シエル!久しぶり!遠征から帰ったんだね!」
城にある広大な東の庭園。
その隅に忘れられたようにひっそりと作られた東屋が、シエルとシリウスのいつもの待ち合わせ場所だった。
シエルの砂色の髪が差し込む日差しに輝いている。
真っ黒な瞳はいつもの優し気な瞳だったが、その笑顔はほんの少し影があるように見えた。

「王子!しばらく見ない内に大きくなられましたね!」
今シエルの目の前に立っているシリウスは背がぐんと高くなって、もう立派な少年だ。
紫の瞳が精悍に輝いて大人びた雰囲気を出していたが、尻尾が楽しそうにフルフルして表情もまだまだ可愛いままだ。

「うん、最近声変りが始まったんだ!
まだ声が慣れないよ。」
耳がむず痒そうにピコピコ動き、ほんの少し低くなった声で照れくさそうに笑う。

シエルはぐんぐんと成長するシリウスを眩しそうに見て笑った。
シリウスにはそのシエルの顔に陰りが見え、椅子に座り早速本題に入ることにした。
「今回の遠征、長かったね。
西方は今まで安全な地とされていたけど、なにか、異変があったの?」

シエルはシリウスに付いてきたメイドと護衛に目をやる。

「ここからは内密の話だ、少し離れよ。」
そう言うとシリウスは東屋全体に、防護魔法と遮音遮光魔法をかける。

魔法陣が展開されると東屋全体が、ぐにゃりとした光の膜に包まれ中が見えなくなった。

「王子、魔法の勉強進んでいるようですね。」
出来の良い生徒の成長にシエルの頬が緩む。

「ふふ。先生が居ない間も勉強頑張りましたから!」
子供らしくふわふわな尻尾を振って得意になって見せる。

「王子、今2歳と少し経ったところでしたか?」
世間話のように切り出してはいたが、黒の目が先の未来を見つめるようにシリウスを捉える。

「うん、まだそんなものだね。
あと半年もすればだいぶ変わるのだろうけど。」

同じ月に生まれた子供よりは頭一つ分とびぬけて大きかったが、体のつくりがまだまだ子供だ。
手を伸ばして、剣のタコができた手を握って見せるが、やはりまだ十分と言えない成長だった。

「今回の遠征が長引いたの、西方で何か厄介ごとが起きていたんだね?」

シリウスの紫の瞳が為政者のそれになる。
可愛らしさの残る顔に、迫力のある大きな瞳が神秘的で、シエルは成長した小さかった生徒に気圧されるほどの迫力を感じた。

「ええ。西方は今酷い有様です・・・。
地獄と言ってもいい。」
シエルの顔が苦しく歪み、脂汗が滲む。

「魔窟が開かれたんです・・・!」

「・・・っな!
・・・まさか!そんな予兆は!」
シリウスが弾かれた様に立ち上がる。
顔から血の気が引いていく。

「・・・!
・・・規模は。
どの程度なんだ。」

込み上げる不穏な予感を飲み組むように喉が鳴った。
固く握られた拳がじっとりと汗ばむ。

「もって、あと一年で完全にそこにゲートが出来ます。
そうなれば、この世界は・・・。」
蒼白なシエルが震える声で伝える。

「現在の時点で西方は殆どが戦地です。
悪魔が村々を焼き、虐殺が繰り広げられています。」
酷い光景が脳裏をよぎり、シエルは口を覆う。

「現状魔窟を抑えるために、近づく事さえも困難を極め、悪魔の進行を止めるので手一杯な状況・・・。
私は戦況の立て直しのため、一時応援を求め帰ってまいりました。」

戦地に残してきた仲間のことを思い、シエルは自分では抑えられないほど小刻みに震える。

「事がこの世界の命運と言ってもいい事なので、まだ、上層部だけに留め至急対応策を練らねばなりません。」
シエルの黒い瞳が信念をもってシリウスの目を捉える。

「王子にも、ご協力願いたい。」

シリウスの紫の瞳はもう決意に満ちていた。
戦わなければいけない時が今なのだ。
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