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暗躍組織 〈中東編〉
86話 命がけの任務
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「もう、のんびりしている時間はないよね」
治安情報局に戻り、ミーティングルームで急ぎ、打ち合わせを行った。
「でも、マリ、この任務はかなり危険だと思うよ。あの国に行くこともそうだけど、今度の敵は得体がしれない、へたをしたら、我々だって、ただではすまないかもしれない」
ユウキは心配そうにマリに話しかけた。
なにか、いい方法はないものかとしばらく、皆はだまって考えこんだ。
「あの~局長、諜報部のメンバーは何人、むこうに行っているんですか?」
「え~と、トニーも含めて5人かな、ダニエル中尉、モニターに出してくれる」
「了解」
壁に取り付けてある大きなモニーターにトニー少尉のほか4名の顔と経歴が写し出された。
「これがムセビアに入り込んでいるチームになります」
皆は顔と名前や特徴などを頭に叩き込んだ。
そんな中、イブが思いついたように
「おい、ユウキ、ここから、ムセビアはだいぶ遠いが、核兵器や化学兵器などを本当に装備しているか、サーチできないのか?」
ユウキはイブから指示されて、嫌そうな顔をしていたが、すぐにマリが
「ユウキ、サーチできる?」
「了解、おそらく、確認できると思う。しばらく、待ってくれ」
身に着けている球体が赤く光りだし、ユウキはサーチを始めた。そして、
「マリ、ムセビアには、核兵器も化学兵器もないな。通常兵器のみだ」
「え、本当!」
イブも
「何だよ。全然、危険な国じゃないじゃない。まるで、誰かが、変な噂をだして、あの国の資源を横取りできるように仕組んでいるみたい」
「これじゃあ、トニー少尉も何のために行っているか、わからないね」
マリもあきれたような思いだった。
「ドニーズ中尉、教えてくれないか。アハド大統領とは、いったいどんな人物なんだ」
「はい、私も直接会ったことはないんですが、不思議な人なんですよ。中東の指導者はだいたい、民衆からの絶大な宗教指導者や軍を統括できる者などが多いのですが、この人は科学者なんですよ。言語はもちろん、物理・生物・機械工学・ITにいたるまで、さまざまな博士号を取っており、その能力を生かして、貧しい人や困っている人たちを助けていた人で、国民から絶大の指示を得て、国の指導者までのし上がり、ムセビアは、みるみると国力をつけて、あの調子で行っていれば、先進国の仲間入りもできたのではないかと言われていました。しかし、アハド大統領の暗殺未遂事件が3年前に起こり、大統領はそれから、あまり、外に出ることがなくなったんですよ」
「それで、今のような状況になったということか」
「もしかしたら、大統領は暗殺未遂事件ではなく、本当に暗殺されてしまったんじゃないのか」
「それは、わかりません。ですが、今、その代わりに国を指導しているのが、副大統領のムサラという者でイスラム過激派に属しており、アハド大統領とは正反対の政治家です。この男が暴利をむさぼり、国を堕落させた張本人だと思います。ですが、なぜか、NATOや国連はアハド大統領を糾弾して、あわよくば、この国をつぶしてしまおうとしているんです」
マリはその話を聞いて
「ねえ、なんかさ、フランス諜報部や先進国が国民を想い、国を豊かにしたアハド大統領を
抹殺しようとしているけど、それを止めようとしている、暗躍組織は本当は悪い人達じゃ、ないかもしれないじゃない」
ユウキもマリと同調するように
「う~ん、なんか、僕たちが助けようとしているフランス諜報部は本当に正義の味方なのか、わからなくなってきたな」
アンナ軍曹も
「局長、いろいろなことが考えられるかも知れませんが、そうなら、なおさら、トニー達が任務を実行する前に助けるべきですよね」
「そうだね」
マリはアンナ軍曹に
「アンナ、今回のトニー少尉の救出の件だけど、あなたはこの任務から外れてもらうわ」
アンナはびっくりした顔で
「何でですか?」
「あなたはトニーと親しいんでしょ。不足の事態になった時に冷静な判断ができるとは
思えないからよ」
「大丈夫です。どんな状況になっても、私はチームに迷惑をかけません」
マリは少し考えて
「もし、トニーと大勢の人の命と選ばなければいけない時に、あなたは私の指示に従えるの?トニーが目の前で死ぬことになっても」
アンナは真剣な目で
「大丈夫です。トニーもそのことは十分理解できる男ですから」
マリはその答えを聞いて
「わかったわ、私達は治安情報局、ひとつのチームよ。絶対に勝手な行動は許さないからね」
「イエッサー」
「でも、カミーユ大尉、イブの様子がおかしい時は、あなた達がカバーして」
「わかっています。これでも、アンナとはもう4年も同じチームでやってきていますから、みんなも頼むぞ」
「そうですね。アンナは普段は男勝りのところがあるけど、どうやらトニー少尉には特別な思いがあるようだから、気を付けないとな」
「ドニーズ中尉、からかうのはやめてください。トニーとは、そんな仲じゃありませんよ」
「そうなのか、でも、顔が赤くなっているぞ」
マリはこんな、すばらしい仲間をこの任務で絶対に死なせないようにしなくてはと強く思った。
治安情報局に戻り、ミーティングルームで急ぎ、打ち合わせを行った。
「でも、マリ、この任務はかなり危険だと思うよ。あの国に行くこともそうだけど、今度の敵は得体がしれない、へたをしたら、我々だって、ただではすまないかもしれない」
ユウキは心配そうにマリに話しかけた。
なにか、いい方法はないものかとしばらく、皆はだまって考えこんだ。
「あの~局長、諜報部のメンバーは何人、むこうに行っているんですか?」
「え~と、トニーも含めて5人かな、ダニエル中尉、モニターに出してくれる」
「了解」
壁に取り付けてある大きなモニーターにトニー少尉のほか4名の顔と経歴が写し出された。
「これがムセビアに入り込んでいるチームになります」
皆は顔と名前や特徴などを頭に叩き込んだ。
そんな中、イブが思いついたように
「おい、ユウキ、ここから、ムセビアはだいぶ遠いが、核兵器や化学兵器などを本当に装備しているか、サーチできないのか?」
ユウキはイブから指示されて、嫌そうな顔をしていたが、すぐにマリが
「ユウキ、サーチできる?」
「了解、おそらく、確認できると思う。しばらく、待ってくれ」
身に着けている球体が赤く光りだし、ユウキはサーチを始めた。そして、
「マリ、ムセビアには、核兵器も化学兵器もないな。通常兵器のみだ」
「え、本当!」
イブも
「何だよ。全然、危険な国じゃないじゃない。まるで、誰かが、変な噂をだして、あの国の資源を横取りできるように仕組んでいるみたい」
「これじゃあ、トニー少尉も何のために行っているか、わからないね」
マリもあきれたような思いだった。
「ドニーズ中尉、教えてくれないか。アハド大統領とは、いったいどんな人物なんだ」
「はい、私も直接会ったことはないんですが、不思議な人なんですよ。中東の指導者はだいたい、民衆からの絶大な宗教指導者や軍を統括できる者などが多いのですが、この人は科学者なんですよ。言語はもちろん、物理・生物・機械工学・ITにいたるまで、さまざまな博士号を取っており、その能力を生かして、貧しい人や困っている人たちを助けていた人で、国民から絶大の指示を得て、国の指導者までのし上がり、ムセビアは、みるみると国力をつけて、あの調子で行っていれば、先進国の仲間入りもできたのではないかと言われていました。しかし、アハド大統領の暗殺未遂事件が3年前に起こり、大統領はそれから、あまり、外に出ることがなくなったんですよ」
「それで、今のような状況になったということか」
「もしかしたら、大統領は暗殺未遂事件ではなく、本当に暗殺されてしまったんじゃないのか」
「それは、わかりません。ですが、今、その代わりに国を指導しているのが、副大統領のムサラという者でイスラム過激派に属しており、アハド大統領とは正反対の政治家です。この男が暴利をむさぼり、国を堕落させた張本人だと思います。ですが、なぜか、NATOや国連はアハド大統領を糾弾して、あわよくば、この国をつぶしてしまおうとしているんです」
マリはその話を聞いて
「ねえ、なんかさ、フランス諜報部や先進国が国民を想い、国を豊かにしたアハド大統領を
抹殺しようとしているけど、それを止めようとしている、暗躍組織は本当は悪い人達じゃ、ないかもしれないじゃない」
ユウキもマリと同調するように
「う~ん、なんか、僕たちが助けようとしているフランス諜報部は本当に正義の味方なのか、わからなくなってきたな」
アンナ軍曹も
「局長、いろいろなことが考えられるかも知れませんが、そうなら、なおさら、トニー達が任務を実行する前に助けるべきですよね」
「そうだね」
マリはアンナ軍曹に
「アンナ、今回のトニー少尉の救出の件だけど、あなたはこの任務から外れてもらうわ」
アンナはびっくりした顔で
「何でですか?」
「あなたはトニーと親しいんでしょ。不足の事態になった時に冷静な判断ができるとは
思えないからよ」
「大丈夫です。どんな状況になっても、私はチームに迷惑をかけません」
マリは少し考えて
「もし、トニーと大勢の人の命と選ばなければいけない時に、あなたは私の指示に従えるの?トニーが目の前で死ぬことになっても」
アンナは真剣な目で
「大丈夫です。トニーもそのことは十分理解できる男ですから」
マリはその答えを聞いて
「わかったわ、私達は治安情報局、ひとつのチームよ。絶対に勝手な行動は許さないからね」
「イエッサー」
「でも、カミーユ大尉、イブの様子がおかしい時は、あなた達がカバーして」
「わかっています。これでも、アンナとはもう4年も同じチームでやってきていますから、みんなも頼むぞ」
「そうですね。アンナは普段は男勝りのところがあるけど、どうやらトニー少尉には特別な思いがあるようだから、気を付けないとな」
「ドニーズ中尉、からかうのはやめてください。トニーとは、そんな仲じゃありませんよ」
「そうなのか、でも、顔が赤くなっているぞ」
マリはこんな、すばらしい仲間をこの任務で絶対に死なせないようにしなくてはと強く思った。
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