平和への使者

Daisaku

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フランス政府の仕事

102話 凱旋

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建物前には正装した、執事のような者が中に案内をしてくれた。
建物内はベルサイユ宮殿を思わせるほどの造りで、驚くほど豪華だった。
そのまま、晩餐会などをする、大広間に案内されると思ったが、庭近くのサロンに案内された、
そこにはアベル大臣とフレデリック大統領、それと、フィルマン外務大臣が待機していた。

「お~これは、これは、フランスの誇る、治安情報局の皆さん、
わざわざお越しいただきありがとうございます」

「ボンソワール、フレデリック大統領、今日はお招きいただき、ありがとうございます。
私はともかく、皆が今日この日、エリゼ宮殿に来れることを大変喜ばしく思っています」

「いえいえ、大変なご活躍で我々もうれしく思っていますよ」

「それにしても、ここで、食事をするには、ずいぶん狭いような気もしますが」

「マリさん、失礼しました。このサロンで食事の前にどうしても話をしておきたいことがありまして、
皆さん、席にお座りください。フィルマン、皆さんに説明を頼む」

「はい、大統領、治安情報局の皆さん、外務大臣のフィルマンです。
今回のご活躍、大変ご苦労様でした。ケガした人も無事回復されて良かったです」

「あの~フィルマン外務大臣、何か、大変顔色が悪いようですが、大丈夫ですか」

「・・・はい、大丈夫です」

イブをはじめ、なにやら、うさんくさい話が始まるような気がして、
皆、フィルマンの話を聞き逃さないようにした。

「まず、先に謝罪いたします。申し訳ございません。皆さんの活躍をさも、自分がしたように
フランス国の外交上の優位性を図るため、私は、主要国に必要以上に今回の件を話してしまい、
クレームが発生してしまいました」

マリは首をかしげて

「クレーム?」

「はい、マリさんはフランスの他にアメリカ・ロシア・イギリス・ドイツでの国籍をお持ちで、
マリさんの力をこのフランスだけが利用しているということになってしまいました」

「私は好きで、この国にいるんだから、そんなことありませんよ。今回の事件だって、
任務をする時に偶然、起きたことですから」

「マリさんがそう言っても、なかなか信じてもらえないんですよ」

「そうなんですか?」

「それで、マリさんに相談なのですが、パートタイマーで、主要国の犯罪等の案件を解決するために、
出張していただけないでしょうか?」

「パートタイマーって、外国で事件解決などのアルバイトをしろということですか」

「はい」

その話を聞いていたエマは

「何を言っているんだい。我々は独立組織とはいえフランス国の組織で働く普通で言う公務員なんだよ。だから、アルバイトみたいな副業は禁止されているでしょう」

それを聞いていた、アベル大臣が、

「アルバイトではなく、フランス国治安情報局に出張で言ってもらいたいということですよ」

「ちょっと待ってください。私は、ふだん、フランスの高校にも通っているし、
とても、そんな、あちこちの国には行けませんよ」

ユウキもそれを聞いていて

「政府の事情はわかりますが、マリはこの国に滞在を希望しています。
今は夏休みだから、数日程度の出張ならできるかもしれませんが、基本的には無理です。
だから、カミーユ大尉のチームを派遣して、マリと私とイブはフランスから指示を出すことしか、
できません」

フィルマン外務大臣は少し考えて

「わかりました。しかし、初日だけでも良いので、マリさんに主要国任務の時に、
顔だけは出してもらえませんか?」

マリはそれぐらいならと思い

「はい、任務初日にあいさつ程度なら、いいですけど」

フィルマンはホッとして

「ありがとうございます。これで、問題は解決できそうです」

話が付いたところで

「さて、マリさん、そして治安情報局のみなさん、大広間にて食事の用意ができています。
今日は思い切り、楽しんでいってください」

そして、アベル大臣を先頭に大広間に案内され、豪勢な食事が用意され、至福の時間を皆、共有した。

「マリさん、さきほどは大変失礼しました。これからも、治安情報局、よろしくお願いします。
もしよければ、この間の任務について、色々とお聞かせ願いますか」

大統領はニコニコして、マリに話しかけた。それを見ていたイブが

「大統領、私が、細かく話してあげよう。なにしろ、今回はマリの次に活躍したのはわたしだからな」

勢いよく酒を飲みすぎて、少々酔っぱらっているイブが話に割り込んできた。

「イブさんですか。見た目はだいぶ、お若い様ですか、そんなにお酒を飲んで大丈夫ですか?」

大統領は心配そうな顔でイブを見た。

「大統領、アベルから何も聞いていないのか?」

「何をですか?」

「我々のことだ!」

アベルはビクっとした態度で

「イブさん、酔いが進みましたね。あまり大統領におかしな話はだめですよ」

イブはアベルにバカにされたと思い、

「アベル、お前の上官は大統領なのに、隠し事をして、大丈夫なのか?」

「やだなあ、イブさんなにを言っているんですか」

大統領はそれを聞いてアベル大臣をにらみ

「アベル!何を隠しているんだ。正直に話せ」

アベルは困った様子でマリを見て

「マリさん、大統領に話してもよいですか、ユウキさんやイブさんのことを」

マリはおいしい食事をほおばりながら

「え、アベルさん、大統領にまだ、話していないんですか。てっきり、すぐに報告していると思いました。アベルさんから見て、大統領って、結構軽い存在なんですね」

マリは人ごとのように笑って答えた。それを聞いて大統領はかなりイライラしてきた。

「アベル!お前は何を隠しているんだ」

あまりの大声で離れて、エマと話していたフィルマンも近づいてきて

「大統領、どうかしましたか」

「フィルマン!お前もアベルとグルなのか」

「何の話ですか?」

アベルはもう正直に話すしかないと思い、ウェイターなど、関係者以外は人払いをして、
静かに話はじめた。

「いいですか。これから話すことは口外しないと約束してください」

「そんなことは、私が決める、早く話せ」

「ふ~、わかりました。まず、そこにいるイブさんとユウキさんは宇宙人です。
年齢も不老不死なので、何千・何万年生きているかわかりませんが」

「宇宙人?」

「どうみても、普通の少年・少女じゃないか」

「彼らは、いくつの年齢にも自在に変化できるんです。今は、マリさんと行動をともにするためにマリさんの年齢に合わせてはいますが」

「そんなこと、とても信じられないな」

「まず、そこにいるユウキさんは、私がまだ10歳でフランス諜報部のお手伝いをしていた時からの知り合いです。かつての大戦からヤエ・トビシマの元で働いていました」

「ヤエ・トビシマ?」

「そうです。マリさんの祖母です。かつてこの国を征服者から、守り、この国の復興に尽力された方です。あそこにいるエマも私もマリさんがヤエさんの後継者だから、従っているのです」

大統領とフィルマンはアベルの話を真剣に聞いていた。

「それと、イブさんですが、この間の考古学の大発見と言われた棺の件はご存じだと思いますが、
あの棺から1万年以上の眠りから、目覚めたのがイブさんです。母星では最高位にあたる、
執政官をされていたそうで、少々、言葉使いが変わっていますが、あまり、気にしないでください」

「おいおい、大統領である私をだまそうとしているのか」

「まさか」

「ちょっと、待てよ。この件は外国や主要国に話してはいないよな」

「もちろん、話してませんよ。フィルマンのように私は口が軽くありませんから」

大統領は少し、目をつむって考えて

「そうすると、当然、科学力や特殊な能力があるんだろうな」

「もちろんです。とても、地球人では太刀打ちできないほど」

「すごいな、まあ、直接、その力を見ていないから、なんとも言えんが」

「とにかく、マリさんはすごいんです。ユウキさんの星から平和への使者として認められた
地球でただ一人の人で、イブさんと数名もマリさんの従者として働くことを
自分からお願いしたぐらいです」

「マリさんはそんなにすごいのか」

「私も知り合って数か月ですが、この世界ではマリさんに体力的なことで勝てる地球人は
いないと断言できます。武術やスポーツはもちろん、銃火器から戦闘機まで使いこなす
スペシャリストでもあります。祖母のヤエさんも半端じゃないほどすごかったですが、
そのヤエさんに物心着く頃から、教育されてきましたので」

大統領やフィルマンは話に驚きもしたが、政治家としての考えがすぐに働き、
マリさんにず~とフランスに滞在してもらえば、我がフランスは世界で最も偉大な国に
することができると考えてしまった。そんなことを考えている者達の横で、
マリはおいしいごはんを食べるのに夢中になっていた。
アベルを含め、この3人はマリをとても気持ち悪い目で見つめていた。
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