平和への使者

Daisaku

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フランスの友達

110話 底知れぬ力

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フランスに帰ったばかりのマリは部屋でコソコソ、出かける準備をした。
イブやユウキといつも一緒だったから、たまには、高校の同級生に会いに行くのは
1人で行きたかった。

『とりあえず、初めて行く空手の道場だから練習着で帯も白でいいかなあ、変な誤解されたくないし』

マリは葉子に電話した。

「もしもし、葉子さん」

「どうしました、マリさん、小さい声で」

「ちょっと、高校まで、車で送ってくれますか」

「はい、かまいませんよ」

「それと、イブとユウキには内緒で出かけたいから、30分後に西側裏口に車を回してくれますか」

「了解」

「よし、これでこの2階の窓から出れば絶対ばれないな」

マリは静かに自分の部屋の窓から外に出て、裏口に行き、葉子の車に乗り込んだ。
    
「本当にマリは来るんだろうな」

「当たり前だろ」

パスカルとジョセフは、運動も勉強も、たいしたことなく、夏休みをのんびりと過ごしているため、早めに来て、マリを待っていた。

そんな時に後ろから肩を叩かれた。

「パスカル、お前は何でオレの体を触るんだよ。気持ち悪いな」

「お前だって、触っただろ」

二人は目を合わせて後ろを振り向いた。

そこには、イブとユウキが立っていた。二人はびっくりした表情でイブとユウキを見た。

「なんだ~、わたしが優しく、触れたら、気持ち悪いのか」

イブはふくれた顔をして二人を見た。パスカルとジョセフはイブの顔が近くに来て、とてもいいにおいがして、うれしそうにニヤついた。

「お前達、気持ち悪いな、ムッツリというやつか。もう少し、男らしくしたらどうだ」

パスカルは近くにいるユウキを見て

「ユウキみたいにカッコよくなくて、悪かったね」

「ユウキ?こいつはダメだ。見た目が良くても性格がだめだからな」

「なに~、性格が悪いのはイブだろ、いつもいつも、マリとベタベタして、僕のことを悪く言うんだから」

「ふ~また、始まったな、ユウキの愚痴が、情けない男だ。お前達もこうなったら、おしまいだぞ」

「うらやましいよ。二人は、こんなに素直に言いあえて」

「たしか、こういうのは、そうだ、ケンカするほど仲がいいというやつですね」

「仲は良くない、絶対に」

「そんなことより、イブとユウキは何でここにいるの?」

「フフフ、マリがコソコソ葉子と出かけたから、ちょっと先回りしただけだよ」

「でも、マリと二人はいつも一緒だよね。本当に仲がいいんだね」

「そうだな、マリとは切っても切れない仲というか、同じ目標に向かって戦う同志というか」

「ふ~ん、ユウキはマリと恋人なの?」

「え、違うよ、同志と言ったほうがいいかな」

「イブもそんな感じなの?」

「私か、う~ん、ここだけの話、従者かな」

「従者?イブが?」

「ハハハ、冗談ばっかし、この時代にそんな人いるわけないよ」

「まあ、お前達がそう思うなら、そう思えばいい、私は、自分の認めた主を決して裏切らないし、常にお供をする。それが私だ」

「イブも変わってるね」

「イブ、どうやら、マリが来たようだ。どうする、このまま、ここにいるか。こっそり隠れて、後をつけるか」

「おい、ユウキ、私をこいつらと一緒にするんじゃない。私はコソコソするのが大嫌いなんだ。堂々と会えばいいだろうが」

「そうだな。マリは僕たちを置いて行ったんだからな」

葉子の車に乗って開放感にあふれたマリが高校の前で車を降りた。ご機嫌な様子で

「ごめ~ん、待たせちゃった」

笑顔で話してきたマリにパスカルとジョセフの後ろからイブとユウキが顔を出した。
マリは楽しそうな顔が急に固まり、

「イブ、ユウキどうしたのこんなところに来て」

「マリ、置いてけぼりはないんじゃない。僕らは一蓮托生の同志だろ」

「そうだけど、たまにはいいじゃない、私一人でも」

「それなら、我々に一言いえばいいじゃない」

「だって、一言いったら、私一人で行動できるの?」

「それは、無理だけど」

「でしょ~、だから、こっそり出て来たんだよ。まあ、いいよ、もう、早くカトリーヌのところに行きましょう。パスカル、案内して」

「わかった。ジョセフ案内して」

「おう、こっちだ」

高校の近くにある、体育施設には歩いてすぐだった。

「どうしようかな、いきなりカトリーヌに話しかけても無視されそうだな」

マリはニコニコして、

「平気よ、ほら、ここに空手募集の紙があるじゃない、体験もできるって書いてあるもの、カトリーヌが来たら、少し話をして、紹介してもらうわ。それから、折を見て、パーティに誘ってみるわ」

ユウキも笑いながら

「マリが空手を習う新人の体験者か~なんか面白くなりそうじゃない」

「そお?私、たくさんの人と空手をするのは初めてだから、うまくやれるか心配なんだけど」

「大丈夫、マリなら問題ない、問題があるとしたら、ここに通っている奴だろ」

「あっ、マリ、来たよ。カトリーヌだ」

小学生から、大人まで、色々な年齢の人が空手をしに歩いている中にカトリーヌを見つけた。

「カトリーヌ!」

マリは大きい声で名前を呼んだ。

「マリ、どうしたの、こんなところで」

「あのね、私、ここの空手道場の新人体験募集を見てきたんだ」

「あら、そうなの、そういえば、あなた日本人だから、多少、経験もあるんでしょう」

「うん、あるよ」

「でも、ここは結構、厳しいし、強い人がゴロゴロいるから、大変よ、体験で来た人はあまり長続きする人少ないから」

「そうなんだ。でも、わたしは大丈夫だと思う。悪いけど、案内してくれるとうれしいけど」

「フフフ、いいわ、師範にも、知り合いをできるだけ、呼んでほしいといつも言われてるから」

「ありがとう」

「じゃあ、マリこっちよ」

マリは少し離れたユウキ達4人に軽く手を振って、うれしそうに館内に入っていった。

「ふ~、マリはうまく入れたみたいだな、ここは総合体育館のようだな、
2階に客席みたいのがあるから、そこから、様子を見ることにするか」
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