平和への使者

Daisaku

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フランス犯罪組織編

124話 施設からの脱出

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「イブ、車2台、用意できました。これで1台軽く15名は乗れますから」

「よ~し、いいぞ、ダイスケ~」

「はい」

「お前はこの車2台をここでクラーク達と見てろ。奴らを連れ出してきたら、連絡するから、会社本部にはクラーク、居住棟にはダイスケがこの車を運転して入り口前につけろ」

「わかりました」

「よ~し、17時が過ぎたよ。中に入るよ、イブ準備どう?」

「あ~大丈夫だ。居住棟はここからだいぶ奥の方だから、とりあえず先にオリビアと一緒に
マリとドニーズは向かってくれ」

「わかった、イブ、ユウキも一緒に行くからね」

「ユウキ?いらないだろ、あいつは、マリがどうしてもと言うならしょうがないけどな、
ユウキ、お前はマリの迷惑にならないようにしろよ。私だって、本当はマリと離れたくないが、今回は私がこちら側にいないと、どうしようもないからな」

「はい、はい、わかってるよ」

「ブラッドリー、カール、このボディーガード3人と役員室へ向かうぞ、都合のいいことに
普段こいつらは、役員のボディーガードもしているからな、簡単に中に入れるぞ」

「わかりました」

マリは少し心配そうな顔をしているクラーク達に

「それじゃあ、レナードとクラークはこのバスいてね。もし、なにかあったら大介さんが守ってくれるから」

「マリ簡単そうな仕事だと思い、油断しないように気をつけてください」

「大丈夫よ。レナード心配しないで」

「大介さん、たぶんここならだいぶ離れているから、特に危険はないと思うけど、何かあったら、二人を守ってあげてください」

「承知しました。マリさんも気を付けて」

そして、マリ達は施設内に向かって行った。

「オリビア、誘拐された10人がいる居住棟に案内して」

「わかりました。ご案内します」

オリビアはイブの洗脳によりロボットのようにマリ達を居住棟まで案内した。

スダンリーコンサルタント会社、ここは表向きはコンサルタント会社になっているが、実際は民間軍事兵器開発会社、アメリカ軍が主な取引先で、毎年、軍からの天下り先にもなっており、その取引額は会社設立からわずか10年で1兆円を超えるほどの大会社に急成長していた。
施設は広大な敷地にあり、本部ビルや研究開発棟、試作機格納庫、滑走路や車路など
ありとあらゆる設備が完備されていた。イブ達は本部ビルに向かい、マリ達は施設の中心付近にある、居住棟向かう。
社長のスタンリーは今日も幹部達とご機嫌で仕事の話をしていた。

「今年も、また、売り上げが増えたな」

「そうですね。例の協力者の新しいスパイソフトや生物兵器など、高値で取引きできる物がありましたからね」

「とにかく、あいつらは外には出せないが、待遇だけはよくしてやってくれ、これ以上、わがままを言われても困るからな」

「わかっています。ここでの待遇も残された家族への送金もしっかりと行っていますから、大丈夫です」
「オリビアが戻ったみたいですよ」

「特に、連絡もなかったから、今回も無事に任務を達成できたようだな」

「また、新人くんには、しっかりと教育とサポートを頼むぞ、間違っても外部との連絡をさせないようにな」

「はい、わかっています」

「それじゃあ、解散だ」

社長のスタンリーがそう言った瞬間、役員のボディーガード兼運転手の3名も戻ってきた。

「コンコン、失礼します。本日のご報告に参りました」

「おう、入れ、ちょうどいい、報告を聞こう」

そう言って、役員室の扉が開いた瞬間、ボディーガードの後ろに隠れていたイブの体から赤い光を発して、社長と幹部達の体めがけて、光の触覚のような物が伸び、それが体に巻き付いた。
しばらくして、まるで、ロボットのように顔に表情がなくなり、イブに洗脳された。

「お前達、これから、FBIと近くの警察に向かう。全員、我々に同行しろ」

「はい、わかりました」

同行していたFBIの2人もイブの不思議な力を目の当たりにして、非常に驚いた。
そして、イブ達は問題なく、主犯である連中を連れ去ることに成功した。

「こちらが居住棟になります」

「誘拐された人たちはどの部屋にいるの?」

「5・10・15・20・25・30・35・40・45・50の番号の部屋にいます」

「じゃあ、すべての部屋の鍵を開けてくれる」

「了解」

「マリ、ここに来るまで、外のゲート、建物入り口の2カ所に守衛がいた。こんな10人以上がまとまって出たら、すぐに見つかってしまう。バラバラで出た方がいいね」

「そうか、じゃあ、オリビア、誘拐された10名を外に出したいけど、どうすればいい?」

「はい、17時30分にこの建物で働く者は帰宅するため、大人数が一斉に外に出ます。その時に合わせて出ればいいです。出る時は、守衛のチェックはありません」

「わかったわ。あと15分あるから、この10人には、それぞれ話を事前にしたほうがいいね」

「オリビア5番の部屋から順番に鍵を開けて、一人ずつ説明するから」

「わかりました」

オリビアはイブに、マリの言葉にだけ従順になるように洗脳されていた。

「ユウキ、中尉、時間がないから、分担して中の人に説明しよう。私は5~15、ユウキは20~35、中尉は40~50ね、部屋がだいぶ離れているから、それぞれの担当の人達を連れて、外部ゲートの外で待ち合わせね」

「了解」

オリビアは扉に手をかざした。するとすぐに扉は開いた。5番から順番に鍵をどんどん開けていった。
マリはまず5番の部屋に入った。室内は思ったより広く、リビングのような部屋に年配の男性が立っていた。

「ハロー」

「誰だ、今日の仕事はもうすんだろ、用もないのに入ってくるな」

「あの~これから、ここを脱出します。17時30分になったら、この扉から外に一緒に出ましょう」

「出る?まさか、出られるわけないだろ。また、違う施設にでも移動か?」

「いいえ、あなたを助けにきました。とにかく時間になったら、この扉を開けて、外の通路に出てください」

「本当か、本当にここから出れるのか」

「そうです。ですから、17時30分に必ず外の通路に出てください」

「わかった」

そうして、マリ達は時間までに10人全員に脱出の説明をした。見たこともない人からの説明だったが、皆、ここから脱出して、自由になりたいため、ワラにもすがりたいような気持ちで、マリ達の話を真剣に聞き、10人は時間通り、全員外の通路に出た。

「みなさん、私達に付いてきてください、外に車がありますから、絶対に勝手な行動しないでください。はぐれてしまうと、また、この施設に逆戻りですよ」

ユウキ、中尉とマリ・オリビアは、別々に従業員の帰宅者達に紛れて、無事にゲートの外に出れた。

「マリさ~ん」

大きい声でダイスケが車の前で手を振っていた。マリは大きい声で

「では、あそこの車に乗ってください。急いで」

ダイスケも一生懸命、脱出してきた人達を車内に誘導をした。

「すみません。奥から順番に座ってください。あとから、まだ人が来ますから」

マリのグループが最初に乗り込み、ドニーズ中尉とユウキのグループも順番にたどり着き、皆、車に乗り込んだ。

「オリビア、あなたも乗りなさい」

「はい、わかりました」

全員が車に乗り込んだ。皆がシートに座った途端、慌てて車は発進した。
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