平和への使者

Daisaku

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遺跡の発掘

169話 大平 まみの正体

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「ガチャ」


ミーティングルームの扉が開き、そこにいる発掘隊全員がこれから登場する大平まみに注目した。長い髪を三つ編みでまとめて、黒縁の眼鏡、服装は白いトレーナーにジーンズをはいていかにもどこにでもいそうな大学生といった若い女性が入って来た。松本はさっきここに入って来た時のバイトだと思った女の子が大平まみだと知って驚いた。


「みなさん、こんにちは、私が大平まみです。徳島大学2年生で歴史を専攻しています。

これから、よろしくお願いします」


勝畑教授もこんなに若い女性がこのプロジェクトの責任者なのかとびっくりして、すぐに質問をした。


「お話し中、申し訳ない、大平さん、恐らくここにいる者が全員、驚いていると思うが、

あなたは、沢山の研究者が発見する事もできなかった、この2000年も前の日本古王朝をどうやって、発見したか簡単でかまわないので説明して欲しい。我々はマツ会長に全面的にあなたの指示に従えと言われたがその若さで、これだけの遺跡を発見したことがどうしても信じられない。誰かの研究成果を盗んだとまでは言わないが、しっかりとした説明を聞くまでは皆、納得できないだろう。これからの遺跡発掘において良い信頼関係が構築できなければ私もそうだが、皆、良い仕事は出来ないと思う」


まみは勝畑教授の質問に驚いた様子で


「え~と、どうやって見つけたか話せば良いのですね。ふ~承知しました。それでは簡単にお話しします」


まみは後ろで映像の準備で待機している助手の佐藤とその部下3人に目を向けて小さい声で


「佐藤さん、しばらく待機していてください」


佐藤はだまってうなづいた。


「まず、なぜ若い私がこの場所を発見できたのか。それは、長年、考古学研究者の方が

日本古王朝を発見できなかったので、その研究者とは全く違う方法で捜したからです」


ミーティングルームに集まっている発掘隊はそのほとんどが考古学の研究者で大学や博物館、考古学協会などに普段は勤めていて、日本の歴史を心から愛している、いわば考古学のオタクとも言える集団でもあった。そのため、まみがこれから何を話しだすのか真剣にその声を聞いた。


「違う方法?」


研究者でもある松本も、まみの話し中に思わず声が出た。


「はい、確かに私はたくさんの研究者の方が出している歴史の本は参考にしました。ですが、さまざまな本を読みましたが、読んでいるうちにすぐにわかりました。この方達は過去に同じ様な研究をされている方たちの本を読みアサリ、それをみつくろって、自分なりの解釈で書いているだけだと、なぜ、遺跡を見つけるのに室内にある本だけ読んで、なにもかもわかっているような気持になるのか。大変不思議でした。だって、2000年以上も前のことをほとんどわかっていない方が、わかっていない方達の本を読みまくって、また同じようなことを書いているんですもの。失礼ですけど、笑ってしまいました。私は考古学オタクまみとよく学校などでバカにされましたけど、わたしは行動を起こす歴史オタクなんです」


まみは、テーブルに置いてある冷たいペットボトルのお茶をごくりと飲み、また話し始めた。


「私、小さい時に父に日本の神様の話を聞いて、大変興味を持ちました。父は普通のサラリーマンなのに、とても神様の話に詳しくて、どうしてそんなに詳しいの?って聞いたら、おじいちゃんから昔聞いたんだと言いました。父もおじいちゃんに同じ質問を小さい時に聞いたら、同じく親から聞いたそうです。私の親は広島の方の出身ですが、かつては平という名前、そう、皆様がご存じだと思いますが平家の血筋です。あの源氏との戦いに敗れてから身分を隠す為に大平と改名して難を逃れたようです。その関係で国家の秘密を知りえたのではないかと思っております。あっ、すみません、話が脱線しました。まあ、そんなこともありましたので、私、もう研究者の本をあまり読むのはやめて、直接、現場に行く事にしたんです。私の両親は私のことをとっても大事にしてくれて、小学校高学年ぐらいの時から、日本全国、わたしが神様の事をもっと知りたいからというと休日にはあちこちに連れって行ってくれました。特に私が着目したのは、古来からある神社です。たぶん、私、1000箇所ぐらいは行っているかもしれません。そこで、その地方の様々な伝承やら、神社と共に生活をされてきた周辺の方たちにも沢山話を聞きました。はっきり言って皆様、神社の信仰心が強く、そして、とても優しい方ばかりでした。なんていうのかな、身分とか貧富の差とか、そういう差別とかが全くなくて、みんなで神社と共に協力して生きて行こうという気持ちがあり、いつも、私、そのような方達の話を聞くのが、楽しくて、楽しくて、やみつきになってしまい、気が付いたら、信じられない様な膨大な誰も知らない情報を知る事ができました。

それをまとめて、検証を行い、ここ徳島に王宮がある事を確信して、東京から徳島の大学に通いながら、1人で遺跡の発掘をしていたんです」


「アハハハ・・・」

勝畑教授を始め、松本や松川、そこにいる発掘隊全員が笑いながら声を上げた。まみは私おかしなことを言ったかしらと首をかしげていると


「大平さん、大変失礼しました。フフフ、なるほど、歴史を知りたい者、現場にこそ

発見はあるということですな。その調子じゃ、大平さん、まだまだ、大変な秘密も持っていそうですな」


まみは笑いながら、


「はい、まだまだ、た~くさんありますよ。例えば、女王卑弥呼と5人の神様とか」


「たまりませんな~それは、今度、食事でもしながら、その話しも聞かせてくださいよ」


他の隊員達も


「リーダー、僕も聞きたいな~その話し、ついでに今、聞かせて下さいよ~」


松田葉子はさっきまで皆、まみを疑っていたのに、急に手のひらを返したようにまみの話に異常なほど興味を持ち始めた、この隊員達が今回の遺跡発掘のプロジェクトから脱線し始めたため大声で


「みなさ~ん、関係ない話はやめてください!今回、みなさんはここの遺跡の発掘にきたのです。それでは、ここにいる方は大平まみさんをリーダーとして認めますね。異議のある方は退出されてもかまいませんよ」


葉子はしばらく待って廻りを見渡して、誰も退出する者がいない事を確認して、まみを見つめてうなづき


「葉子さんありがとう、それでは、遺跡発掘に向けての話に入りますよ」


助手の佐藤にまみは合図を送り、室内は暗くなり、特殊映像をまじえて遺跡発掘に向けての説明が始まった。

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