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第二章 異世界からの侵略者
8人目 白騎士・ドワーフ・カラクリ・メイド 1
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「面倒くせえなあ……」
俺は幡ヶ谷の屋敷で居間のちゃぶ台に広げた書類と格闘していた。
理由は、民泊新法だ。この新法のせいで色々と申請する書類が増えたのだ。あと、消防法がどうたら、とかチェック項目も増えた。施設に常備するべき道具も増えたのだ。経費マシマシ、面倒増量、いっそ民泊なんて辞めてしまおうかと思ったが、カミルやエリアルさんに会える機会が無くなるのはちょっと嫌で、結局こうして書類と格闘している。
どうせ泊まる奴らは異種族であり、日本の消防法なんてまったく関係ないのだろうが、ルールは大事である。いかに意味がなかろうが、法は法なのだ。
「はぁ……面倒くさかった。次もっと面倒になったら、マジで辞めるの検討するわ」
トントン。
「ん?」
トントン。
裏手からの音――これは間違いなく異世界の扉が叩かれている音だ。
「今日は――予定にないぞ?」
掛けてあるカレンダーを見るが予定表に名はない。つまり来たのは――。
俺は書類の束を片付けると異世界の扉の前に立った。
「何の用だ、ドリスコル?」
ガチャっと扉を開けるとそこには例のシルクハットを被ったエルフ――。
「――ここは、異世界であるか?」
じゃなかった。そこに居たのは――どうみても『白騎士』だった。
巨躯、白いマント、白い鎧、フルフェイスの白い兜を身に着け、くぐもった声でそいつは答える。それにしても、よくこの巨体が通ったな……。
それは通路にパンパンに詰まるほどの大きさで、下手に動いたら壁を崩しかねないほど、大きかった。
「え、ええ……っと、どちら様で?」
「我はドリスコルの友人、ダイヤじゃ」
「は、はあ。それでそのダイヤさんが何の御用でしょうか?」
「うむ、頼まれたのだ。『リフォーム』を、な」
「リ、リフォームですか?」
「うむ。そちらにも民を泊まらせるためには法があるじゃろう?」
「え、ええ」
「こちらにも、当然あるのじゃ。施設を安全に保つためにどうするか、常日頃異世界との行き来は制度化されておる」
そういえばドリスコルがそんなことを言っていた気がする。
こちらのことはこちらで対処しますので、というから放っておいたが、そういうことなのだろう。
「なるほど。しかしええと、そんなに大仰な改造をされると困るかもしれないんですが?」
俺は疑問に思ったことを伝える。魔改造されてロボットに変形する屋敷が欲しいわけではない。
「心配はするな。仮に魔法を暴発されても、ブレスを吹かれても無傷を保つ程度のことをするまでじゃ。我に任せておけば特に問題なく民泊を安全かつ滞りなく進めることも叶おう」
「それは助かります。よろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げる。いやあ、ドリスコルもいいところあるじゃないか、いや、この民泊で稼いでいる以上、こういったサービスは当然なのだが。
「なあに、報酬を頂けるのだから問題はなかろう。『お主に』」
「――はい?」
「言ったろうが、報酬は、お主から貰う、と」
「ええ、とどうしてそうなるんですか?」
「当然じゃろう? この屋敷の持ち主から報酬を貰うことは」
「いや、一般的にはそうかもしれませんけど、私、別に頼んでないですよね? ドリスコルに頼まれたのならあいつが払うのが普通……」
「黙れ、小僧」
「――」
地の底まで響くような声で俺は凄まれた。
「我は生まれてからこのかた、代理の報酬など受け取ったことはない。その持ち主から直接受け取らぬ依頼はすべて断ってきたのだ。お主も例外などないわ」
困った。いや、払いはあとでドリスコルに回せばいいかもしれないが、どうもこの鎧の人物、嘘が通じない雰囲気があるのだ。武骨、実直、頑固、そう言ったオーラが鎧の隙間から漏れている。俺の経験上、嘘を吐いたりその場でごまかすと拗れるタイプだ。なら……。
「お断りするというのは?」
「それではルールを曲げることになる。それでも構わぬが、ここはもう、異世界民泊には使えぬな」
なるほど、詰んでる。やらない道はないわけか。
「では、おいくらでしょうか?」
「こちらの金だと――まあ平均的な値段では、一億ほどか」
「ねえよ、帰ってくれ」
値段を聞いてあほらしくなって俺は即断った。ドリスコルに泣きついた方がマシだ。
「いや、話は最後まで聞け。我は技師だ。それに見合う、技術的な報酬を貰えば、それで相殺してもよい」
「技術的な報酬?」
「ああ、異世界の技術、我も見てみたいのだ。それで我が満足する何かが得られるならそれで受けよう」
ああ、車とか、飛行機とか、そういうやつか?
「はぁ……まあそれでいいなら。つっても俺が知っている知識だと……」
「お主は、飯に詳しいらしいな?」
「え? は、はあ、まあ、多少?」
「ならば、飯で限定するとしよう。飯で我を驚かす技法を、教えてくれ」
「ええ!? ……いやあ、でも」
「何じゃ? ないのか? 所詮その程度の器か……」
「え、いや、紹介は出来ますけど、その格好だとどこの店にも行けないんで……」
「ああ、これか」
そう言うと白い鎧のつなぎ目が光り出し――。
パカッ。
鎧が、割れた。
「――え」
「これでいいか?」
鎧が割れ、中身が露出する。中から出てきたのは、操縦席らしき台に座る――小さな褐色肌のドワーフだった。
◆
「ほう、これがこちらの機構人形か……」
興味深そうにドワーフの技師ダイヤは眼前に広がる煌びやかなショーを眺めている。赤い短髪に水色の瞳、黒いタンクトップにぺったんな胸のそれはどうみても幼女のそれなのだが、どうやらこれで俺とタメ、らしい。
「むう、しかしこれ、女子が肌を出して躍る意味はあるのかのう?」
「ショーですからねえ、そちらにもあるでしょう?」
「あるが……ううむ、わからん」
彼女は電飾華やかなロボやら派手な衣装の女性ダンサーを見てぶつくさ何事かつぶやいている。
「しかし、絡繰りとしては普通だな。見た目は派手だが、人力による部分も多い。魔法で代用可能な、ゴーレムと同じでは、あまりそそられんな。それで『これに連れていくつもり』なのか?」
「いや、まあ後学のためくらいに、ですよ」
そう言って俺はノートPCをパタンと閉じた。
新宿歌舞伎町にある有名なロボットレストランの動画を屋敷の居間で再生して彼女に見せていた。
「外国人には人気があるんですよ。来場の9割がたが外国人の、一見さん向けの娯楽施設です。ショーとしては華やかかもしれませんが、こういったところに案内を期待されていると嫌なので、一応先に見せとこうかと」
「ふむ、しかし興味はあるぞ? 実際に見たら臨場感もあるじゃろう?」
「俺は嫌ですよ。ショーの出来自体をどうこうは言いませんけど、俺は『飯』が食いたいんですから」
この施設、飯はおまけだ。ショー自体が本体で樋口一葉が一枚軽く飛んでいく。そのうえでおまけのような飯を別料金で頼まなければならない。ショーだけなら物見遊山で金も払うが、腹ペコの俺は絶対に行きたくない。そのお金で俺は御苑のビストロを3回予約できると考えると尚更だ。
「それで、どこにするのじゃ?」
期待を込めた煌く水面の様な瞳で彼女は俺を見てくる。正直今回、自信がない。
「――もう少々お待ちください。まだ飯屋の開く時間じゃないので」
時刻はまだ11時前だ、今移動しても飯屋は開いてない。
「む、そうか。じゃあ我はちょっと作業でもしてようかの」
そう言うと彼女は履いているカーキ色のダボついたズボンから幾つかの銀色のドライバーのようなものを取り出し自身の脱いだ白騎士の鎧に張り付いた。
「ふむ、調子が悪い箇所がここか、それで、うむ……」
「どうしたんですか?」
「いや、機構が上手く動作しない箇所があってな、ずっと悩んでおる」
「どこが悪いんですか?」
「説明してわかるものか?」
「ああいや、興味ありますよ? 俺、そういうの好きですし。出来れば欲しいくらいです」
ちなみに俺の一番好きな装着系はテッカマンブレードだ。最後にヒロインに別れを告げて飛び立つシーンが好きすぎるので今でもたまに繰り返し見ている。
「ほう、では説明しようか」
彼女の話をかいつまんで言うと、つまりは機構同士の連結不具合、らしい。
「動作環境ごとにうまく繋がらぬのじゃ。腕と足、胴体と頭、お互いに微妙なラグがある。そのわずかな遅れがどうしても許せん」
「へえ、因みに素材は?」
「白銀鋼とミスリルを各所に使っておるな。あとは魔鋼と――」
うん、よくわからん。ここら辺から俺は聞き流した。
「素材同士の組み合わせなのか、ううむ、なんじゃろうなあ」
彼女はボヤキ手を止めて天を仰いだ。
「素材って沢山使うんですね。やっぱり」
「そりゃあそうじゃな。沢山の素材を扱えるようになって初めて一流じゃ。しかし、師匠に言わせれば、それでは『本物の一流』には成れぬ、らしい」
「――へぇ?」
「我はすべての素材を工作できる。『万の鋼』と呼ばれる二つ名はそこから戴いたものじゃ。それでも、今は亡きわが師は最後まで我を認めて下さらんかった。なぜじゃろうな」
寂しそうに彼女は、届かない相手に語りかける。なんとなく、その気持ちはわかる。俺だって、もう一度――。
「――行きましょうか」
「ん?」
「飯、食って元気出しに」
俺は幡ヶ谷の屋敷で居間のちゃぶ台に広げた書類と格闘していた。
理由は、民泊新法だ。この新法のせいで色々と申請する書類が増えたのだ。あと、消防法がどうたら、とかチェック項目も増えた。施設に常備するべき道具も増えたのだ。経費マシマシ、面倒増量、いっそ民泊なんて辞めてしまおうかと思ったが、カミルやエリアルさんに会える機会が無くなるのはちょっと嫌で、結局こうして書類と格闘している。
どうせ泊まる奴らは異種族であり、日本の消防法なんてまったく関係ないのだろうが、ルールは大事である。いかに意味がなかろうが、法は法なのだ。
「はぁ……面倒くさかった。次もっと面倒になったら、マジで辞めるの検討するわ」
トントン。
「ん?」
トントン。
裏手からの音――これは間違いなく異世界の扉が叩かれている音だ。
「今日は――予定にないぞ?」
掛けてあるカレンダーを見るが予定表に名はない。つまり来たのは――。
俺は書類の束を片付けると異世界の扉の前に立った。
「何の用だ、ドリスコル?」
ガチャっと扉を開けるとそこには例のシルクハットを被ったエルフ――。
「――ここは、異世界であるか?」
じゃなかった。そこに居たのは――どうみても『白騎士』だった。
巨躯、白いマント、白い鎧、フルフェイスの白い兜を身に着け、くぐもった声でそいつは答える。それにしても、よくこの巨体が通ったな……。
それは通路にパンパンに詰まるほどの大きさで、下手に動いたら壁を崩しかねないほど、大きかった。
「え、ええ……っと、どちら様で?」
「我はドリスコルの友人、ダイヤじゃ」
「は、はあ。それでそのダイヤさんが何の御用でしょうか?」
「うむ、頼まれたのだ。『リフォーム』を、な」
「リ、リフォームですか?」
「うむ。そちらにも民を泊まらせるためには法があるじゃろう?」
「え、ええ」
「こちらにも、当然あるのじゃ。施設を安全に保つためにどうするか、常日頃異世界との行き来は制度化されておる」
そういえばドリスコルがそんなことを言っていた気がする。
こちらのことはこちらで対処しますので、というから放っておいたが、そういうことなのだろう。
「なるほど。しかしええと、そんなに大仰な改造をされると困るかもしれないんですが?」
俺は疑問に思ったことを伝える。魔改造されてロボットに変形する屋敷が欲しいわけではない。
「心配はするな。仮に魔法を暴発されても、ブレスを吹かれても無傷を保つ程度のことをするまでじゃ。我に任せておけば特に問題なく民泊を安全かつ滞りなく進めることも叶おう」
「それは助かります。よろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げる。いやあ、ドリスコルもいいところあるじゃないか、いや、この民泊で稼いでいる以上、こういったサービスは当然なのだが。
「なあに、報酬を頂けるのだから問題はなかろう。『お主に』」
「――はい?」
「言ったろうが、報酬は、お主から貰う、と」
「ええ、とどうしてそうなるんですか?」
「当然じゃろう? この屋敷の持ち主から報酬を貰うことは」
「いや、一般的にはそうかもしれませんけど、私、別に頼んでないですよね? ドリスコルに頼まれたのならあいつが払うのが普通……」
「黙れ、小僧」
「――」
地の底まで響くような声で俺は凄まれた。
「我は生まれてからこのかた、代理の報酬など受け取ったことはない。その持ち主から直接受け取らぬ依頼はすべて断ってきたのだ。お主も例外などないわ」
困った。いや、払いはあとでドリスコルに回せばいいかもしれないが、どうもこの鎧の人物、嘘が通じない雰囲気があるのだ。武骨、実直、頑固、そう言ったオーラが鎧の隙間から漏れている。俺の経験上、嘘を吐いたりその場でごまかすと拗れるタイプだ。なら……。
「お断りするというのは?」
「それではルールを曲げることになる。それでも構わぬが、ここはもう、異世界民泊には使えぬな」
なるほど、詰んでる。やらない道はないわけか。
「では、おいくらでしょうか?」
「こちらの金だと――まあ平均的な値段では、一億ほどか」
「ねえよ、帰ってくれ」
値段を聞いてあほらしくなって俺は即断った。ドリスコルに泣きついた方がマシだ。
「いや、話は最後まで聞け。我は技師だ。それに見合う、技術的な報酬を貰えば、それで相殺してもよい」
「技術的な報酬?」
「ああ、異世界の技術、我も見てみたいのだ。それで我が満足する何かが得られるならそれで受けよう」
ああ、車とか、飛行機とか、そういうやつか?
「はぁ……まあそれでいいなら。つっても俺が知っている知識だと……」
「お主は、飯に詳しいらしいな?」
「え? は、はあ、まあ、多少?」
「ならば、飯で限定するとしよう。飯で我を驚かす技法を、教えてくれ」
「ええ!? ……いやあ、でも」
「何じゃ? ないのか? 所詮その程度の器か……」
「え、いや、紹介は出来ますけど、その格好だとどこの店にも行けないんで……」
「ああ、これか」
そう言うと白い鎧のつなぎ目が光り出し――。
パカッ。
鎧が、割れた。
「――え」
「これでいいか?」
鎧が割れ、中身が露出する。中から出てきたのは、操縦席らしき台に座る――小さな褐色肌のドワーフだった。
◆
「ほう、これがこちらの機構人形か……」
興味深そうにドワーフの技師ダイヤは眼前に広がる煌びやかなショーを眺めている。赤い短髪に水色の瞳、黒いタンクトップにぺったんな胸のそれはどうみても幼女のそれなのだが、どうやらこれで俺とタメ、らしい。
「むう、しかしこれ、女子が肌を出して躍る意味はあるのかのう?」
「ショーですからねえ、そちらにもあるでしょう?」
「あるが……ううむ、わからん」
彼女は電飾華やかなロボやら派手な衣装の女性ダンサーを見てぶつくさ何事かつぶやいている。
「しかし、絡繰りとしては普通だな。見た目は派手だが、人力による部分も多い。魔法で代用可能な、ゴーレムと同じでは、あまりそそられんな。それで『これに連れていくつもり』なのか?」
「いや、まあ後学のためくらいに、ですよ」
そう言って俺はノートPCをパタンと閉じた。
新宿歌舞伎町にある有名なロボットレストランの動画を屋敷の居間で再生して彼女に見せていた。
「外国人には人気があるんですよ。来場の9割がたが外国人の、一見さん向けの娯楽施設です。ショーとしては華やかかもしれませんが、こういったところに案内を期待されていると嫌なので、一応先に見せとこうかと」
「ふむ、しかし興味はあるぞ? 実際に見たら臨場感もあるじゃろう?」
「俺は嫌ですよ。ショーの出来自体をどうこうは言いませんけど、俺は『飯』が食いたいんですから」
この施設、飯はおまけだ。ショー自体が本体で樋口一葉が一枚軽く飛んでいく。そのうえでおまけのような飯を別料金で頼まなければならない。ショーだけなら物見遊山で金も払うが、腹ペコの俺は絶対に行きたくない。そのお金で俺は御苑のビストロを3回予約できると考えると尚更だ。
「それで、どこにするのじゃ?」
期待を込めた煌く水面の様な瞳で彼女は俺を見てくる。正直今回、自信がない。
「――もう少々お待ちください。まだ飯屋の開く時間じゃないので」
時刻はまだ11時前だ、今移動しても飯屋は開いてない。
「む、そうか。じゃあ我はちょっと作業でもしてようかの」
そう言うと彼女は履いているカーキ色のダボついたズボンから幾つかの銀色のドライバーのようなものを取り出し自身の脱いだ白騎士の鎧に張り付いた。
「ふむ、調子が悪い箇所がここか、それで、うむ……」
「どうしたんですか?」
「いや、機構が上手く動作しない箇所があってな、ずっと悩んでおる」
「どこが悪いんですか?」
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ちなみに俺の一番好きな装着系はテッカマンブレードだ。最後にヒロインに別れを告げて飛び立つシーンが好きすぎるので今でもたまに繰り返し見ている。
「ほう、では説明しようか」
彼女の話をかいつまんで言うと、つまりは機構同士の連結不具合、らしい。
「動作環境ごとにうまく繋がらぬのじゃ。腕と足、胴体と頭、お互いに微妙なラグがある。そのわずかな遅れがどうしても許せん」
「へえ、因みに素材は?」
「白銀鋼とミスリルを各所に使っておるな。あとは魔鋼と――」
うん、よくわからん。ここら辺から俺は聞き流した。
「素材同士の組み合わせなのか、ううむ、なんじゃろうなあ」
彼女はボヤキ手を止めて天を仰いだ。
「素材って沢山使うんですね。やっぱり」
「そりゃあそうじゃな。沢山の素材を扱えるようになって初めて一流じゃ。しかし、師匠に言わせれば、それでは『本物の一流』には成れぬ、らしい」
「――へぇ?」
「我はすべての素材を工作できる。『万の鋼』と呼ばれる二つ名はそこから戴いたものじゃ。それでも、今は亡きわが師は最後まで我を認めて下さらんかった。なぜじゃろうな」
寂しそうに彼女は、届かない相手に語りかける。なんとなく、その気持ちはわかる。俺だって、もう一度――。
「――行きましょうか」
「ん?」
「飯、食って元気出しに」
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